「うる星やつら」は、世にもまれな凶相の持ち主である高校生・諸星あたると、宇宙から舞い降りた“鬼っ娘”の美少女・ラムが出会うことから始まるラブコメディ。完全新作として約40年ぶりにTVアニメ化され、大きな話題を集めている。
コミックナタリーでは「うる星やつら」の放送を記念した特集を実施。アニメ好きとしても知られる俳優の塩野瑛久に「うる星やつら」を観てもらい、同作の魅力を語ってもらった。“令和版”で初めてしっかり「うる星やつら」に触れたという塩野にどう映ったのか? 作品の魅力についてはもちろん、自身のアニメとの付き合い方についても語ってもらった。
取材・文 / はるのおと撮影 / 斎藤大嗣
ラブコメ要素がある「ドラえもん」みたいなアニメ
──2022年秋クールのアニメは大豊作という声もありますが、塩野さんはどう感じています?
本当に豊作ですよね。いや、もうこのクールが来るのをずーっと楽しみにしたんですよ。「あのアニメも、このアニメも2022年秋なのか。ヤバいな」と思い続けていて、実際始まってみたらやっぱりヤバかった。まだ観られていないものもありますが、今回お話させてもらう「うる星やつら」をはじめ、「チェンソーマン」、「BLEACH 千年血戦篇」、「ブルーロック」、「僕のヒーローアカデミア」第6期、「SPY×FAMILY」第2クール、「モブサイコ100 III」……あと「機動戦士ガンダム 水星の魔女」や「ぼっち・ざ・ろっく!」も1話だけしか観られていませんが、全部楽しいです。
──堪能されていますね。ただ、今挙がった作品や過去のインタビューを拝見した印象では、塩野さんは「うる星やつら」のようなラブコメ作品を積極的に楽しんでいるイメージが湧かなかったのですが、実際はどうでしょう?
その通りで、実はあまり優先的に観るタイプの作品ではなく、女の子がたくさん出てくるようなアニメは基本的には後回しにしちゃいがちです。でも、もちろん嫌いというわけではなく、評判がいい作品があると後でチェックするし、そうやって観て「これよかったなー」というものもたくさんあります。
──具体的にはどんな作品がお好きですか?
アニメから少し離れちゃいますけど、僕はジャンプっ子だったのでマンガだと「ニセコイ」がすごく好きでした。特にヒロインの小野寺(小咲)はかわいくてすごい好きで。
──あー……でも「うる星やつら」は小野寺みたいなおしとやか系のヒロインがいませんよね。タイトル通り、みんなうるさい。
確かにそうですね(笑)。
──その「うる星やつら」の話に移ります。令和版のアニメを観られる前は、この作品にどんな印象がありましたか?
実は以前のアニメや原作マンガも触れたことがなくって。でも有名な作品なのでもちろん名前は知っていて、主人公のあたるとかわいいヒロインのラムちゃんのドタバタコメディというイメージはありました。
──そのイメージはどこから得たのでしょう?
言われてみれば、どこからなんでしょうね? あたるの浮気にラムが怒って電撃を出して……というイメージは、知らない間に刷り込まれていました。でもそんな漠然としたイメージしかない、生まれる前にアニメをやっていたような作品が、令和になって新たなアニメとして楽しめるとのことで放送を楽しみにしていました。
──今回のアニメ化にそういう好奇心も湧いたと。
はい。だって話の細かい流れとか全然知りませんでしたし。でも蓋を開けてみたら、別に話を深堀りするものではなかった(笑)。もちろんそれはいい意味で、ですけど。基本的には1話に2つのエピソードがあって気楽に観られる作品ですよね。それこそ「ドラえもん」とかに近くて、現実にはあり得ないような道具や宇宙船も存在するなんでもありな世界での日常コメディ。「うる星やつら」はそこにラブコメの要素も入っていて、不思議な感触です。ほかに近いアニメがあまり浮かばない。そして何より、気楽に観られる割には作画まわりが本当にちゃんとし過ぎていて、びっくりしました。
この絵のクオリティをずっと保ってくれるんですかね?
──アニメを観る際に作画に注目するという塩野さんは、「うる星やつら」の絵のどのあたりにすごさを感じましたか?
この作品ってただのコメディだから流し見とかも全然できるんですよ。でもそれは小気味いいテンポ感があるから快適に観られるわけだし、そのなかでアニメーションとして丁寧に動いてるし、謎な部分で描き込みもすごい。例えばキーアイテムとして出てきたボクシンググローブの汚れ方が絶妙にリアルだったりとか。
──細かいところまで観てますね。色合いも、昨今の昭和レトロブームを踏襲した雰囲気で印象的です。
それもありつつ令和の香りもあって、その塩梅がちょうどいいんですよね。それに原作の高橋留美子先生のよさも残してあって。例えばラムちゃんのほっぺの膨らみとか、キャラクターデザインで現代風にアレンジしてシュッとすることもやろうと思えばできたんでしょうけど、そこは原作をリスペクトしてそのまんまで。それでも髪の色で今風な雰囲気も出していて、とても考えて作られていると感じます。
──ラムの髪色の変化は観ていて面白いですよね。
以前のアニメは緑とハイライトだけだったけど、今はエメラルドグリーン基調になっていますよね。逆にラムのパパの髪色が以前のラムちゃんの髪色になってるなんてこともしていて、そういった小技も面白いです。
──本当に細かいところまで気付かれていますね……少し話が逸れますが、塩野さんは普段どんなスタイルでアニメを観られているのでしょうか?
僕はテレビではなくプロジェクターで配信サイトの画面を投影して観ています。カーテンを閉めたり、夜になったりしたらソファーに座って、白湯を飲みながら。
──大画面でゆったり観ているからそれだけ細かく観られているんですね。確かに作画を気にする人ならプロジェクターで観るのは楽しそうです。
楽しいです。僕は壁全面に投影しているので100インチ以上のサイズで観ていて。だからこそ、ほかの人よりアニメを観て強く感じることがあったり、細かい所に気付いたりするのかもしれません。
──もうひとつ余談ですが、先ほど高橋留美子先生らしさという話がありましたが、何か関連作を観たことありますか?
実は「らんま1/2」のアニメをちょっと観たくらいで。
──世代的には「犬夜叉」も観られていたと推測していたのですが。
「犬夜叉」はガッツリ観ていました。小学校のころはごっこ遊びとかしていましたし。「僕が犬夜叉だ」とか言って(笑)。でも高橋先生の作品はキャラクターがすごく魅力的ですよね。例えば「うる星やつら」で四角関係とかになっても「そういう話にしたかったんだな」とかそういう思いがよぎる間もなく、自然と受け取れるというか。それはキャラクターが立ち過ぎていて、自然に動いているからだと思います。
──ほかに絵の面で気付いたことはありますか?
絵というか、サブタイトルの入り方がお洒落で、しかも毎回変わっていて凝っていて好きです。僕が出演していた「探偵が早すぎる」というドラマでも手にサブタイトルを書いていて、ポーズを取ると見えるといったことをしていたんですけど。
──「うる星やつら」だと黒板に書いてあったりします。
そういう細かい遊びが僕はけっこう好きなんです。毎回考えるのは大変そうですけど。
──この作品は4クールやる予定だそうなので、なおさらバリエーションを考えるのが大変そうです。
「ノイタミナ」枠で1年やるなんてほんとすごいですし、そういった部分も楽しみにしてます。
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宮野真守さん、すっげー!