ガルマはシャアにいろいろな感情を教えてもらっている（柿原）

──ファーストガンダムではシャアがガルマに対して「いい友人だった」と口にするシーンもありますが、シャアにとってガルマはどんな存在だったか、演じられた柿原さんはどう感じていますか？

柿原　シャアの根底にはザビ家への恨みがありますけど、きっとシャアも鬼ではないので。士官学校で成長を遂げていく過程で、ガルマに対して仲間意識のような、なんらかの感情というのも生まれていたんじゃないかと思います。ただそういった思いもどこかで切り捨てないと、自分が目標としているところへは到達できない。そんな葛藤も生まれるくらい、ひとつの大切な存在だったんじゃないかなと感じています。

──ただ復讐の対象だったというだけでなく。

柿原　逆にシャアに聞きたいですよね。ガルマがどんな存在だったのかって。ガルマはシャアのことを尊敬しているし、敬愛している。彼がやりたいと言ってることに対して少しでも力になりたい、そして一番に寄り添っていられる親友でありたいと強く思っているんです。その思いをシャアがどういう気持ちで受け止めていたのかは、彼のみしか知らないですからね。

──ガルマは最初こそシャアに対して強いライバル意識を持っていたと思いますが、そこから友情へと変化していく部分を演じられて、どういった印象を受けましたか？

柿原　ガルマは士官学校に入るまで、同年代の子たちと付き合う機会がなかったと思うんですよ。入学したはいいけど自分の周りには言うことを聞いてくれる取り巻きばかりで、それはお家で召使いに囲まれているのと変わりがなかった。そんな中で出会ったシャアという男は、初めて自分に歯向かってくる人間で、自分のプライドを崩される存在だったんです。これは僕の勝手な想像ですけど、ガルマが生まれて初めて声を荒げた相手はシャアだと思っていて。「君が計算につまったから助言した」と言ってきたシャアに、「つまってなんかいないっ！」って大声で反論するあのシーンは、“声を荒げることに慣れていない男の子”として演じたんです。

──なるほど。

柿原　ガルマにとっては初めての感情ですよね。でもその感情からガルマというキャラクターが動き始めたと僕は思っているんです。だから彼の心の中に眠っていたものを引き出させてくれたのがシャアなんですよ。ガルマって作品の中でも一番人間味のあるキャラクターなんじゃないかなと思っていて。でも、それもすべてはシャアという存在があってこそなので。ガルマはシャアにいろいろな感情を教えてもらっているところがあるんだなと感じました。

リノの小物感に共感できます（前野）

──ちなみにですが、おふたりはご自身が演じるキャラクターに共感できる部分はありますか？

前野　影では強気なことを言えるけど、いざ表舞台に立ったらそんな発言もできなくなるっていう部分は自分と似ている気がします。そういう小物感は共感できるなって。

柿原　ふふふ（笑）。

──そうなんですか？（笑）それは共演される機会も多い柿原さんから見てどうですか？

柿原　いや、自分のことわかってるんだなって思いますよ。

前野　ほらほら（笑）。楽屋では「こんなの簡単だよ！」とか言いつつ、本番ではガチガチになるタイプなんです。

柿原　そうかもね（笑）。

──柿原さんはどうですか？ ご自身とガルマで似ているところとか。

柿原　どうだろう……。

前野　いつも言ってますよ。イベントの前とか楽屋で「フックがかからない！」って。

柿原　「誰か！ 助けてくれ！」って？ ガッチガチじゃん！（笑）

──（笑）。

柿原　僕はまったく緊張してないのに「緊張した」って言うタイプだからね。「ああ緊張した、緊張した」って。

前野　そうだね（笑）。真逆かもね。

柿原　ガルマと似てるところか……。なんだろう、育ちがいいところくらいかな？（笑）

前野　自分で言う（笑）。

柿原　うちは引くほどしつけが厳しかったので。そういう意味では士官学校でシャアに出会って自分の羽根を広げられたガルマの気持ちは、勝手に（ドイツから）日本に来て「役者やるぜ！」って世界を広げようとした自分にとってもわからなくはないですかね。