コミックナタリー Power Push - 「ギルドレ」

理科が楽しくなる「ギルドレ」と国語が楽しくなる「文スト」!? “2作品に通底するもの”を朝霧カフカと上村祐翔が語る

監督から「泣かないでくれ」と(上村)

──朝霧先生は小説もマンガ原作も執筆されていますが、共通する点や違う点はどこにあるでしょうか?

朝霧 どちらも、頭に浮かんでくる映像を文章にすることが多いというところは同じですね。一番大きく違うのは、1シーンあたりのストーリーの長さでしょうか。それが表れているのがセリフの長さです。マンガだと、「このとき彼らは何を考えているのか?」を圧縮して、すごく短いセリフや表現で描く。小説だと、極端なことを言えば2ページまるまる使ってキャラの感情を表現することもできます。あと、小説は時間を圧縮して、1行で数時間や数日をぎゅっと説明する、なんてことが簡単にできますね。

──アニメ化されたマンガの場合、圧縮されたセリフに、もともとの感情や背景を乗せて、本来あった形に「復元」するのが声優さんですね。

手前から朝霧カフカ、上村祐翔。

上村 アフレコ現場は、毎回すごく濃縮された時間が流れています。五十嵐監督や若林音響監督からもらうディレクションは、それぞれのキャラが考えていることをかなり奥深くまで探っていって、そのうえで発した言葉であることを教えてもらうものでした。「考えが足りなかった」「そこまでの意図があってこそのこのセリフだったのか!」ということが何度もあって……。

朝霧 すごく大変だろうな。ある意味、声優さんに負担をかけているところではありますよね。

上村 表現するのは大変だなと思いましたが、でも背景や思いを乗せた声が付いた映像を観たときに、「これで正しかったんだ」と思うことがたくさんありました。毎回勉強になるよい現場でしたね。

──特に印象に残っているシーンはどこでしょうか?

上村 たくさんあるんですが……1つ挙げると、第1クール10話「羅生門と虎」。芥川龍之介と戦う前に、泉鏡花ちゃんに助けてもらった敦が、もう自分は逃げられるのに、引き返すことを選択するシーンです。そこのセリフは「だって太宰さんは──探偵社は僕を見捨てなかった! 行ってきます!」。映像では、涙がぱっと飛び跳ねるような動きがついているんですが、監督からは「泣かないでくれ」というディレクションを受けました。「泣く」という絵に合わせないで、「信念・覚悟」という思いを込めて演じたら、実際映像になったときにものすごいシーンになっていたんですよね。「絵に合わせることだけがすべてじゃないんだ」と、キャラが抱えている思いの真髄が見えました。きっと、朝霧先生もそういう解釈で原作を書いていたんだろうなと思うんです。

朝霧 あそこはね、「鏡花ちゃんがかわいそうだから助けに行かなきゃ」じゃない。あのヘタレくんが逃げ道を引き返すほどの理由です。「ここで助けに行かなかったら自分が許せない」という、敦の都合で助けに行くんですよね。「彼女は僕なんだ。僕がやってほしかったことを彼女にするんだ。だからここで助けに行かなきゃ」とは言わずに、ぎゅっと二言に圧縮する。すごく悩んで、1日くらいコタツの中でじたばたしたセリフなので(笑)、ちゃんと深くまで探っていって、その情報を乗せて、かつセリフとしては短い量に圧縮する作業は本当に大変ですね。

──そうした本編の解釈の確認など、五十嵐監督から聞かれたりするのでしょうか?

朝霧 本読みではある程度しゃべってはいますが、全部説明しているわけではない。そこは信頼関係で、あまり不安はなかったですね。できあがったものをみて、「あー、そう! うんうん!」と思っています。オリジナル展開があったアニメ最終話は、一視聴者の気分で「あんなことされたら続きを観たくなるに決まってるじゃないか! 大丈夫か!?」と思いましたね(笑)。

上村祐翔

上村 最終話は、いろんな要素がたくさんちりばめられていましたよね。3曲をふんだんに使った演出が、タイミングもばっちりで、すごく印象的でした。

朝霧 もともと「普通の話にはしないぞ!」と考えて書いているんですが、監督からも「普通にはしないぞ、こういう最終回だ!」というのを出してもらった。「文スト」って、敦と芥川という、通じ合いつつも敵対している2人の話なんだなと思いました。あの2人はあの後も共に歩くのか、それとも戦うのか、緊張感があるハッピーエンドの塊でしたね。

上村 最終回のアフレコに、朝霧先生も来てくださって。「第1話と比べて、敦の叫び声が全然違いますね」とお話をしていただいたんです。僕にとって「文スト」は初めてテレビアニメで主人公を演じた作品で、敦が成長するように、僕も考えながら、もがきながらお芝居をしていました。成長した姿をちょっとでも先生に見ていただけたかなと思って、とてもうれししかったです。

ニィナとのシーンに「おっとっと、心の準備が……!」(上村)

──「ギルドレ」2巻はどういった展開になるのでしょうか?

神代カイル
皆川ニィナ

朝霧 2巻をゲラで読んだ人は「1巻より面白い!」と言ってくれますね。そもそも「ギルドレ」は、少年少女が4人組のワンユニットチームとして問題を解決していく話なんです。2巻のラストで、ようやく4人が出揃います。カイルとニィナと──あとの2人はぜひ読んで確かめていただければと(笑)。性格も能力も違う4人がどんなチームになっていくのかという物語が、ようやく始まります。

上村 一読者として、ちょっとしたサービスシーンにドキドキしながら読んでいたんですよ。緊迫したバトルの合間に、ニィナとのドギマギするようなシーンもあって、「おっとっと、心の準備が……!」と思ったりして。

朝霧 「ギルドレ」は男女どちらの読者にも楽しんでもらいたいと思って書いていますが、2巻は男性ファンへのサービスが1巻と比べて多いかもしれません(笑)。

上村 と思ったら、とんでもないラストに「どうなっちゃうんだ!?」と突き落とされる。あれは、1巻の時点でああなると決めてたんですか?

朝霧 最初から決めてました!

上村 本当にびっくりしました……。2巻にはすごく好きなシーンがあって。カイルはけっこうクールで淡々とした主人公なんですが、夜見原くんとのやり取りで感情が少なからず動くんです。そこにすごくぐっときましたし、胸に来ましたね。カイルくんが、いろいろなキャラとの関係で、どんなふうに変わっていくのかが楽しみです。あとは栗栖大佐がどうなってしまうのか気になりますね!

朝霧 大佐はこのまま終わらせるつもりはないです!(笑) 2巻はさまざまなものが動き出しました。今後はより濃密な4人の話、世界の話、謎解きを書いていきます。応援していただければ最後まで書いていけると思いますので、楽しみにしていただきたいです。

──楽しみです! 最後にお聞きしたいのですが……もし「ギルドレ」がアニメ化するとしたら、上村さんはどのキャラを演じたいですか?

上村 先生としてはどうなんでしょうか……?

朝霧 上村さんの声はニュートラルなキャラのイメージがあるので、ぱっと思いつくのはカイルですね。でも、違う声も聴きたいな……というところもあったりして。こういうキャラはあまりやったことがない、というのはありますか?

上村祐翔

上村 夜見原くんや、2巻に登場する黒江くんみたいなキャラクターはあまりないですね。僕もイメージが浮かぶのはカイルくんです。初期の「自分の居場所がわからなくて悩んでしまっている」敦というよりも、アニメ2クール目あたりの「肝が据わってきて、根底にあった強さが出てきた」敦なのかなと。いや、でも、もしアニメ化したら何役でもいいです! 『敵』もいいです!

朝霧 上村さんの「キシャー!」が……!(笑)

上村 アニメ化したら、すごく大変だけど、すごく映える作品だと思うんですよね。参加させていただけたらうれしいです(笑)。

上村祐翔フォトギャラリー
上村祐翔
上村祐翔
上村祐翔
上村祐翔
上村祐翔
小説:朝霧カフカ イラスト:烏羽雨 メカニックデザイン:貞松龍壱「ギルドレ(2)滅亡都市」 / 2017年2月21日発売 / 講談社
「ギルドレ(2)滅亡都市」
単行本(ソフトカバー)1080円
Kindle版 864円

記憶喪失の少年、神代カイル──かつて世界を救った《世界最弱の救世主》。彼の元に届いた依頼は、ある日突然滅びた研究都市SOLCに1人残された生存者の少女を救出せよ、というものだった。人類の最新兵器《リンケージ・ドローン》を操る仲間と共に訪れた廃墟で、カイルは都市滅亡の真相に直面する。そして都市にはもうひとつの謎が隠されていた。そこはかつて「救世主が死んだ場所」だったのだ──謎が加速するシリーズ第2弾。

小説:朝霧カフカ イラスト:烏羽雨 メカニックデザイン:貞松龍壱「ギルドレ(1)世界最弱の救世主」 / 発売中 / 講談社
「ギルドレ(1)世界最弱の救世主」
単行本(ソフトカバー)1296円
Kindle版 1080円
朝霧カフカ(アサギリカフカ)
朝霧カフカ

マンガ原作者、小説家。テーブルトークRPGのリプレイ風動画をWebで発表したことで人気を博し、ヤングエース2013年1月号(KADOKAWA)でスタートした「文豪ストレイドッグス」にて商業デビュー。「文豪ストレイドッグス」は、実在の文豪たちが擬人化して戦うという設定で話題となり、2016年にテレビアニメ化された。

上村祐翔(ウエムラユウト)

1993年10月23日生まれ。劇団ひまわり所属。アニメ「文豪ストレイドッグス」の中島敦役で初主演を飾る。アニメ「B-PROJECT~鼓動*アンビシャス~」増長和南役、アニメ「ナンバカ」ジューゴ役、アニメ「ACCA13区監察課」マギー役など。