コミックナタリー PowerPush - 福山リョウコ「覆面系ノイズ」
叫びだしたい恋心をバンドサウンドに乗せて
ニノのヘッドフォン、20人くらいの読者さんが手にしてくださった
──仕事場には楽器がずらりと並んでますね。ギターにベース、スネアスタンドにマイクスタンドもあります。
あ、私物ではなく、全部資料にと中古で買ったものです。いろんな角度から描くときに、現物がないとなかなか難しくて。
──グレコのレスポールギター、フェンダージャパンのストラトギター、グレコのジャズベース……これらは福山さんが好きなモデルをチョイスしたんですか?
そういうわけではなくて、同じレスポールでも、ギブソンのってめちゃくちゃ高いじゃないですか。そんなの高校生が持てないよなあって。高くても5万くらいで買えるもので、好みのデザインを探したんです。嘘くさくならないようしっかり描きたくて、つい現物を集めちゃいますね。ニノたちが使うヘッドフォンもすべて、現物を購入してます。クロとハルヨシのだけは暫定で、まだ探している状態なのですが。
──ずらりと並んでますね。色もカラフル。
ヘッドフォンはディテール描いてて楽しいですね。よく男性作家さんが言ってる、メカを描く楽しさが初めてわかった気がします。それぞれキャラのイメージに合わせて型を決めてまして、ニノ用にELECOMのEHP-OH200のブルーを最初に買いました。デザインが大好きで、高校生も買える値段だったので。読者さんにも好評なんですよ。Twitterで20人くらいの方が「ニノと同じの買いました!」って報告してくださって。
──すごい宣伝効果じゃないですか。早くヘッドフォンメーカーに営業して、広告キャラクターに起用してもらいましょう(笑)。
あはは(笑)。ディテールといえばもうひとつ、第1話でユズが砂に書いた譜面ですが、これは中山真斗さんに作っていただいたものなんです。
──このシーンのために、1曲書き下ろしてもらったんですか?
そうなんです。中山さんがずっと私のマンガを読んでくださってて、Twitterで交流するようになって。いつか一緒にお仕事したいねって話していたので、念願が叶った感じです。音源もいただきましたが、すごくかわいらしい曲なんですよ! まだどういう形で日の目を見るかはわからないけど、いつか皆さんにも聴いていただきたいですね。
ニノの異常に歌いたいところは自分に近い
──楽器はもちろんのこと、音楽マンガは演奏シーンをどう表現するかが肝になってくると思います。
やっぱり難しさはあって、スピード感をどう出すかとか試行錯誤してます。まだ1曲まるまる描くような長い演奏シーンは出てきてないので、そのときが来たら試練ですね……。1巻の中では、ニノが歌いながら暴走するライブシーンが一番好きです。
──このシーン、画面運びがスピーディーで、演奏している曲もテンポが速そうな印象を受けました。
そのつもりで描いたので、伝わってすごくうれしいです! 1話目が70ページあったので、単行本収録ページ数の関係でこの話は24ページしかなかったんです。いつもの30ページに体が慣れているので、すごく大変で……。実はプロットのときはごく普通の演奏シーンだったんですよ。限られたページに吟味して詰めた結果、ニノが暴走しだしてああいう展開になりました。
──ニノは福山さんの主人公としては珍しく、かなりマイペースな女の子ですね。
そうですね、飄々としていて。これまでの私のマンガだったら、間違いなく脇役タイプです。
──ご自身とは似ていますか。
近いところもあるけど、遠いところもあります。私はこんなにマイペースには生きられないので(笑)。でも異常に「歌いたい」って気持ちが強い部分は近いかな。私の場合は「歌いたい」じゃなくて「描きたい」ですけど。何か思い付くと早く伝えたくて、担当さんに夜中だろうが構わずメール送りつけて「どうですか!?」って電話しちゃったり。迷惑極まりないですね(笑)。
あらすじ
歌が大好きなニノは、幼い頃2つの別れを経験する。
1つは初恋の相手・モモ。もう1つは曲作りをする少年・ユズ。
いつの日かニノの歌声を見つけ出す……2人と交わした約束を信じてうたい続けてきたニノ。
時はすぎ、高校生になった3人は……!?
花とゆめで超大人気「音楽×片恋」ストーリー!!
福山リョウコ(ふくやまりょうこ)
和歌山県出身。2000年にザ花とゆめ(白泉社)に掲載された「カミナリ」でマンガ家デビュー。2003年に花とゆめ(白泉社)で10代のモデルを主人公とした「悩殺ジャンキー」の連載を開始、同作がヒットし代表作となる。その後、2008年より2012年まで「モノクロ少年少女」を発表。2013年、バンドと片恋をテーマとした「覆面系ノイズ」の連載を開始した。