コミックナタリー PowerPush - 福山リョウコ「覆面系ノイズ」

叫びだしたい恋心をバンドサウンドに乗せて

福山リョウコの新作「覆面系ノイズ」の1巻が、10月18日に発売される。「悩殺ジャンキー」「モノクロ少年少女」の連載を経て、いまや花とゆめ(白泉社)には欠かせない人気作家となった福山が「バンド」と「片想い」をテーマに放つ意欲作だ。

もともとファンの間では音楽好きとして知られる福山。なぜこのタイミングでバンドものを描こうと思ったのか、その真意を尋ねた。またMAN WITH A MISSIONとのコラボによるPVや、福山が推薦する「この秋聴きたいバンドの曲」リストも到着したので、併せてお楽しみあれ。

取材・文・撮影/岸野恵加

「覆面系ノイズ」のプレイヤーたち
有栖川仁乃(ニノ)
歌うことが好きな高校1年生。マイペース。感情が高まると叫びだしてしまうため、マスクを常用している。
杠花奏(ユズ)
幼い頃にニノが出会った、曲作りをする少年。イノハリの歌わない偽ボーカル「アリス」。
榊桃(モモ)
ニノの幼馴染みであり初恋の人。ニノは知らないが、実は同じ高校に通っている。

In NO hurry to shout ロゴ

In NO hurry to shout(通称イノハリ)
人気沸騰中の眼帯覆面バンド。その正体はユズ、ハルヨシ、深桜、クロ。
ハルヨシ
ハルヨシ
軽音部に所属するオネエキャラ。イノハリのベース担当「クイーン」。
深桜
深桜
軽音部所属。イノハリの影ボーカル「チェシャ」。
クロ
クロ
軽音部所属。イノハリのドラム「ハッター」。

福山リョウコインタビュー

バンドものに憧れはあったけど、楽器に苦手意識があった

──福山先生といえば、ブログやTwitterで好きな音楽のことを日常的に発信している音楽フリークなイメージがあります。「覆面系ノイズ」は、満を持しての音楽マンガですね。

福山リョウコ

それが……実は音楽は後付けなんです。まず「片想い」ってテーマのほうが先にありました。担当さんが「福山さんの描く片想いが見たいです!」と強くプッシュしてくれて。

──「片想いが見たい」のはなんでだったんですか?

「福山さんはモノローグの使い方が上手いから、誰もが経験している片想いをテーマに据えたら読者が入り込めると思う」と言っていただきました。がっつり片想いを描いたことはなかったので、私もやってみたいと思ったんです。でもそれだけだと話がすぐ終わってしまうから、もうひとつの軸をバンドに。音楽マンガにもとから憧れはあったんですけど、楽器を描くのが難しそうでずっと避けてました。細かくて面倒そうだし(笑)。

──あはは(笑)。ブログには「今だから(音楽ものが)描ける気がしている」って書かれてました。

まだまだですけど、デビューして10年が過ぎて、そこそこ画力がついてきたかなと。昔は演奏の臨場感を出すのも難しいだろうなという点でも避けてたんですが、いまならもしかしたらできるかもと自分に期待をこめて描くことに決めました。

──大学では軽音サークルに所属していたということで、その経験も表現に生きてきそうです。

いやいやいや! 2年で辞めてしまったし、「そういや私、バンドサークル入ってたなー……」って後から思い出したくらいですよ(笑)。

──パートは何を?

キーボードをやってました。ピアノを一応、4歳から24歳まで続けてたので。

──20年も! 私は家で練習するのが大嫌いでピアノ教室をすぐ辞めたクチなので、尊敬です(笑)。

私も練習大嫌いで全然してなかったですよ(笑)。でも弾けるようになるとすごく楽しくて、なぜか辞めたいと思わなかったんです。お陰で、譜面を見ればだいたいの曲は弾けるようになりました。

ヴァン・ヘイレンしか覚えてない

──サークルではどんな曲を演奏してたんですか。

資料としても使用している、VOXのアンプ。

なんだったかな、色々やってたんですけど。……ヴァン・ヘイレンしか覚えてない(笑)。何もわからないままに頼まれて弾いてばかりでした。

──キーボードってプレイヤーの絶対数が少ないから、「これやって」って引っ張りだこになりがちですよね。

そう! 私、洋楽って全然疎いんですけど、なぜかそういうサークルに入ってしまって……。ちょっとした黒歴史ですね……。

──いやいや、「Jump」(ヴァン・へイレンのヒット曲)のイントロとか、キーボなしには成り立たないですし。

あはは(笑)。そうですね、大事ですね。

──サークル時代の経験が、「覆面系ノイズ」を描いていて生きてることってありますか?

うーん……まだそんなにないんですが、強いていえばパートごとの特徴が染み付いたことですかね。ギターやってる男の子って大体我が強かったり、ベースとドラムは控えめな人が多かったり。あくまでうちのサークル内だけかもですが。そういう、サークルで周りの人を見ていて感じていたことは今後生きてくるかもしれないです。

福山リョウコ「覆面系ノイズ(1)」 / 2013年10月18日発売 / 450円 / 白泉社
福山リョウコ「覆面系ノイズ(1)」
あらすじ

歌が大好きなニノは、幼い頃2つの別れを経験する。
1つは初恋の相手・モモ。もう1つは曲作りをする少年・ユズ。
いつの日かニノの歌声を見つけ出す……2人と交わした約束を信じてうたい続けてきたニノ。
時はすぎ、高校生になった3人は……!?
花とゆめで超大人気「音楽×片恋」ストーリー!!

福山リョウコ(ふくやまりょうこ)
福山リョウコ

和歌山県出身。2000年にザ花とゆめ(白泉社)に掲載された「カミナリ」でマンガ家デビュー。2003年に花とゆめ(白泉社)で10代のモデルを主人公とした「悩殺ジャンキー」の連載を開始、同作がヒットし代表作となる。その後、2008年より2012年まで「モノクロ少年少女」を発表。2013年、バンドと片恋をテーマとした「覆面系ノイズ」の連載を開始した。