福山リョウコのマンガをもとにしたドラマ「恋に無駄口」がテレビ朝日、ABCテレビで放送中。顔はよいが中身が残念な男子高校生4人組の恋と友情が描かれるラブコメディで、限られた青春を無駄に過ごす“ムダ部”部員の仁科を奥野壮、マヤを水沢林太郎、シロを小西詠斗、葵を藤岡真威人が演じた。
映画ナタリーでは奥野、水沢、小西、藤岡による座談会をセッティング。奥野の“マンガ音読”による役作りや、印象的だった食パンシーンなど、撮影裏をそれぞれたっぷり語ってくれた。
取材・文 / 田尻和花撮影 / 梁瀬玉実
原作のテンポ感が上手に落とし込まれていた(奥野)
──先ほどの写真撮影でも和気あいあいといった感じでしたが、皆さん仲が良さそうですね。ドラマの撮影現場でもワイワイされているんでしょうか?
奥野壮 してます!
小西詠斗 共演の女子たちからは冷ややかな目で見られている感じです。
奥野 スタッフさんたちからも……。
水沢林太郎 うるさいなって思われていると思います。
──(笑)。では、まず簡単にご自身が演じている役と、脚本を読んだ感想について教えてください。
奥野 仁科は真面目で少女マンガが大好き。一見クールなんですが、自分の好きなことを話すときは早口になったり熱が入ったりする、本当に素敵な男子高校生です。恋にうぶなところもあってかわいらしいキャラクターだなと思います。脚本には原作のテンポ感と言いますか、ポンポン話が進んで掛け合いが面白いところが上手に落とし込まれているなという印象でした。僕たちが演じることによって、よりリアルな空気感を出せればと思います。
──ハイテンポな会話シーンがたくさんありそうですが、そのあたりはどうでしたか?
奥野 不安でしたね。早口でしゃべるところがけっこうあるのに、僕はあまり滑舌がよくないので(笑)。大丈夫かなと思っていたんですが、案の定噛みましたね。大変でした。
──水沢さんはいかがでしょう。
水沢 マヤはとにかく明るくて自由人。モテたい、彼女を作りたいっていう思いがあるんですが、考え方が若干曲がっていて。マヤはお金持ちで、マヤの執事・寺門といろいろ考えて“ムダ部”のためにお金を使います。メンバー1人ひとりを見て、愛を持って接していますが、純粋なのかそうじゃないのかわからない不思議な一面もある男の子だなと思っています。
──ドラマ化発表のときに、「このキャラを演じきれるか不安」ともコメントされていましたね。
水沢 いまだに探り探りな部分があるので、このキャラを1カ月安定してやれるかどうか……。現場で一番元気であり続けないといけない人物なので、それを維持できるようにがんばっています。脚本は楽しくキュンキュンできるようになっていましたので、その部分も一生懸命演じることができたらなと思います。
──小西さん、藤岡さんは。
小西 シロはとにかくすごくかわいくて、あざとくて、でも毒舌です。面倒くさがり屋で、思ったことをスパーンと言うような子。恋愛には興味がないんです。脚本を読んだら、ムダ部の活動が本当に無駄でクスッと笑えましたし、僕がこれを演じることができると考えたらすごくワクワクしました。キュンキュンするポイントもすごくあるので、その二面をどうやったらうまく見せられるかなと考えました。
藤岡真威人 葵は、マヤとは違った純粋な明るさを持っています。葵のキャッチコピーは「超絶鈍感」なので、天然っぽいところがあるんです。部室内でも常に駆け回っているし、場を回すような役割が多いですね。葵は誰の言葉にも絶対に反応するので、セリフが多いんですよ。誰かのセリフの次は葵、また誰かのセリフの次は葵といったふうに続いていて、そこにキャラクター性が出てるなと思いました。
──藤岡さんは、今回が連続ドラマ初レギュラー出演となります。それでセリフ量が多いのは挑戦ですね。
藤岡 そうですね。かつ現場でも明るく立ち回らないといけないので、最初は緊張して声が出ないこともあったんです。でも休み時間で……、休み時間?
奥野 学校みたいになってる(笑)。待機時間ね。
藤岡 (笑)。待機時間の合間にみんな一緒にふざけてくれましたし、それぞれ作り込んだ役を間近で見ていると面白くて、笑わないよう我慢してしまうくらい。緊張もありますけど、楽しいほうが強いので本当にいい現場だなと思います。
当たって砕けろ(水沢)
──皆さん役作りはどのようにされたんでしょうか? 演じていて意識した部分は?
小西 シロくんは毒っ気があるところがかわいいと思ったので、そういう部分がところどころ見えるようにしました。適当だったり、けっこう投げやりな雰囲気の言い回しも意識しています。自由にやらせてもらってはいますが、原作のキャラクターの範疇を超えないようにとも。彼は(鶴嶋乃愛演じる)詰出会長が登場したことでちょっとずつ変わっていくのですが、ムダ部にいるときとの差は出すようにしています。
──中学時代の友達と電話で話すときに、一人称が「俺」になるシーンも脚本にありましたね。シロはいろんな一面を持っていそうです。
小西 昔は本当の自分を隠すために「俺」と言っていたという設定です。その葛藤だったり、無理やりやっている感じが出ていたらいいですね。
奥野 僕は原作を大事にしたいと思っていたので、マンガをひたすら音読しました。
水沢 同じこと僕もやったかも。
奥野 ひたすらマンガと脚本を音読してすり合わせて、マンガと脚本の中間点を探していく作業をしました。原作ものは以前もやったことがありますが、そのときも同じように役作りしています。音読して声に出すことで、こういうことを言う子なんだと深く理解できる。脚本は原作とは違うセリフになっていたりしますし、そこも確認しています。音読だと頭への入っていき方が全然違いますね。セリフを覚えるときも、目で読むだけっていうのはあり得ないよね?
一同 あり得ないね。
水沢 声に出すか、書くかじゃない?
小西 書いたら意外と早く入るよね。
水沢 僕は今まであまりこういった役をやってこなかったので、よくわからなかったんです。ただ1つ言えるのは、「マヤはかっこつけちゃいけない」ということです。でも「わざとかっこつけている」ようには演じなくてはいけない。そこが難しいです。どれだけバカになって、恥を捨てられるかが重要なので、それ以外に役作りで考えてることはないですね。一番仲良い人といるときの自分をカメラ前でさらけ出そうとしていますが、とても怖いです。このやり方でウケるかどうかは放送されてからしかわからないので……。現場でオッケーが出ても常に不安ではありますし、何が面白くて、何がすべって空回ってしまうのか、思考錯誤……というか当たって砕けろ!ですね。人を笑わせないといけない存在ではあるので、ずっと考えています。
藤岡 葵はムダ部4人の中でも元気にずっとしゃべっているキャラクターなので、周りとの会話のテンポ感や、声のテンションが下がらないように意識しています。監督から「セリフの後半になるにつれて、声量やテンションが下がってきてるよ」と注意されたことがあったので、最後がむしろ上がり気味になるくらいを心掛けるようにしています。あとは、テンションが上がる曲を聴いてから現場に入ったり。バンド系が好きなので、ONE OK ROCKさん、RADWIMPSさん、BUMP OF CHICKENさんなどのキレのある楽曲をよく聴いています。
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適当なところはシロとちょっと似てるかな(小西)