「EVOL」|クソったれな世界を、一緒にぶっ壊そうぜ。僕らが心に秘める“中学生”が覚醒する、ど真ん中ダークヒーロー・ジュブナイル 冒頭150ページを無料公開!カネコアツシのインタビュー&著名人の応援コメントも必見

ライトニングより強いヒーローがうじゃうじゃいる

──「EVOL(イーヴォー)」の世界のヒーロー観について、2巻までではわからない部分も含めてお聞きしたいのですが、あの世界にはライトニングボルトみたいなヒーローがいっぱいいると考えて大丈夫でしょうか。

邪悪な者の存在を民衆に説くライトニングボルト。

そうですね。それぞれに能力を持っていて、それぞれに担当地区がある。ヒーローたちを総括する評議会みたいなものもあって、これから登場します。ライトニングは地方の小都市にいる、下っ端のしょぼい奴ってイメージです。

──能力も王道ですし、けっこう強いのかなとも思っていたんですが、もっと恐ろしいヒーローがたくさんいるんですね……! ライトニングボルトは、担当地区の市長にいいように使われて、ときには罪のない住人を葬り去るような場面もありましたが、基本的には正義感を持って活動しているヒーローなんでしょうか。

不敵な笑みを浮かべて、ノゾミの母親の前に姿を現すサンダーガール。

ライトニングは、“ヒーローでありたい”という願望が強いんです。この話の中のヒーローは、特殊な能力を持っている以外はただの人間っていう設定なので、厳密にはヒーローではないんですけど、本人はヒーローでありたいと思っていて。

──功績を上げないと評価されないんでしょうか。テレビでほかのヒーローの活躍を、うらやましそうに眺めるシーンもありましたよね。

評価というよりも、自分の中の理想のヒーロー像に近づきたいんだけど、いろんなしがらみからそうなれずにいる。テレビの向こうで活躍するヒーローを見て、本当はあんなふうになりたいと思いながらも、現実の自分は、市長に使われて、ヤクザを殺していたりしているわけですから。

──ライトニングボルトは、そんなコンプレックスが見え隠れすることで、より魅力的に見えるような気もします。一方で、彼の妹のサンダーガールは、そうした内面が描かれていないのが不気味さを際立たせています。

サンダーガールに関しては、わけがわからないって思われるキャラクターにしたかったんですよね。何を考えているかわからないから、気持ち悪くてしょうがない。たぶんライトニングみたいな葛藤とかはなくて、自分の力に酔ってるだけなんだろうなって思っています。

「自分の話だ」と思って読んでもらえたら

──ノゾミたちの話は日本を舞台に描かれていますが、第1話の冒頭部分を見るに、自殺した子供たちに能力が芽生える現象は世界中で起きていそうですよね。この先のストーリーに関わる部分かと思いますが、お話しできる範囲で少し教えていただけますか。

おっしゃる通り、最初に少し匂わせているんですけど、ノゾミたちみたいな存在は世界中で生まれていて、それが後々つながっていきます。世界中で子供たちが自殺しているという問題にも触れていきたい。描きたいことはたくさんあるんで、長い話にしたいなと思っていますけど、そのためには面白さを持続しないといけません(笑)。

──読者としては先が楽しみです。カネコさんは、物語の結末はある程度決めてから描かれるタイプですか?

いつもは先までしっかり考えてから描き始めるんですけど、今回は終わらせ方こそ決めているものの、途中のストーリーは割と緩やかに点と点だけを考えていて。その点と点の間は、描きながら決めていくやり方に挑戦しています。だから緊張感がハンパないんです。今のところはうまくいってるけど、この先どうなるかはわかりませんから。

EVOLの3人に目を付けるライトニングボルト。

──先ほど、ノゾミをミュータントの姿で描いたのがインプロヴィゼーションだったというお話がありましたが、2巻までに当初の想定と違う展開になったところはありましたか?

いえ、2巻までのストーリーは、始める前に「ここまでがシーズン1」と決めていた内容なので、イメージ通りでしたね。担当さんにもNetflixのドラマみたいな感じで作りたいと宣言していたので。ただ、分厚くなってしまったのは想定外。「1話でこのエピソードは終わらせる」みたいに計画していたので、終わらないとどんどんページ数が増えてしまって(笑)。第5話が一番長くて、64ページもあるんですよ。さすがに1カ月じゃ描き終わらず、2カ月かけて執筆しました。

──そのおかげもあってか、読後の満足感はすごかったです。1・2巻同時刊行で、一気に読めたというのもあるかもしれませんが。

2冊同時に出せたのはよかったですね。まとめて読んでもらえるなら、話の幅も出せますし。新しいことをやっているので、読者の反応が恥ずかしいような、怖いような気持ちもあるんですが。

──最後に、今後の見どころと読者へのメッセージをいただけますか。

「EVOL(イーヴォー)」は、どの人物に対してでもいいんですけど、「これは自分の話だ」と思って読んでくれたらうれしい。これから主人公たちがどんどん成長していって、いい意味か悪い意味かはわからないけれど、気が付いたら本当に予想もつかないところに辿り着いていた、みたいな展開が待っています。読んでいる人にも、彼らの驚きやワクワクを一緒に感じてもらえたら何よりです。

カネコアツシ
著作にオリジナル作である「BAMBi」「SOIL」「Wet Moon」「デスコ」、手塚治虫「どろろ」を大胆にアレンジしたSF作品「サーチアンドデストロイ」など。イラストレーターとしてもCDジャケットなど多くの作品を手がけている。オムニバス映画「乱歩地獄」の一編「蟲」では脚本、監督も務めた。2020年8月より、月刊コミックビーム(KADOKAWA)にて「EVOL(イーヴォー)」を連載中。