かっぴー・nifuni「左ききのエレン」 PR

「左ききのエレン」かっぴー×nifuni対談|“天才になれなかった全ての人へ”向けて描く 本気を出した末に諦めた人間のカッコよさ

目を離した隙にLINEの通知が40件

──リメイク版ではかっぴーさんが改めてネームを描き直しているんでしょうか。

リメイク版「左ききのエレン」のネームについて説明するかっぴー。

かっぴー もちろん。まず映画の脚本みたいにセリフだけを書いて、マンガのネームの形に起こしていくんです。「このコマは原作版がベストだな」っていう箇所だけは、原作版のカットを貼って使っていますね(該当ページのネームをPCで開く)。

──お見せいただいたページですと、さゆりのカットが原作のままですね。

かっぴー 僕はキャラクターを、「役者が演技をしている」と思って描いている部分があって。さゆりは帰国子女で大人びた考え方をしているという設定なんですけど、この「ノンノン」っていうリアクションってあんまり日本人的ではないですよね。帰国子女っぽさと大人びた反応を上手く混じり合わせたさゆりっぽい表情が描けたし、この演技は2度とできないだろうから、これはOKカットにしようと。

リテイクが重ねられたというさゆりのシーン。

nifuni このカットについては、私の絵についてかっぴーさんからも結構リテイクが入りましたね。ご自身の写真を撮って送ってきて。

かっぴー そうそう(笑)。「こういう顔で」ってね。僕は自分でマンガを描くときに、よく資料としてiPadをビデオ録画モードにして演技をしてみるんですよ。だからエレンとかさゆりとか女性キャラクターも、僕の表情を元に描いてます。そういうリテイクの数を考えると、原作者と作画担当の間のラリーは普通の作品より多いのかもしれないですね。

nifuni LINEで私たちと林さんのトークルームを作っているんですけど、林さんが打ち合わせで目を離している間に「40件くらい通知が溜まってる」みたいなこともよくありますね。

光一は営業部の流川から「広告代理店の主役はクリエイターではない」と宣言される。

かっぴー 修正に関してはいつも「俺、しつけー」と思いながらやっています(笑)。

nifuni でもそこを妥協せずにやってくださるのはすごくうれしいです。

かっぴー 絵に関しては「これからもっとクオリティを上げていこう」って部分も多いんですけど、表情の部分では、自分たちの出したかったものを1巻の時点で読者の方に伝えられているんじゃないかなと思っています。

雑誌で連載していたら打ち切られていたかもしれない

──nifuniさんは「左ききのエレン」で初めてマンガを描いて、それが週刊ペースというハードスケジュールでの連載ですが、1巻分描き終えていかがですか。

nifuni

nifuni うーん……社会人から脱サラしてマンガ家になったので、前の自分の仕事とも比較できないですし、周りにマンガ家を目指している友人やアシスタント経験者もいないので、大変だっていう基準がわからないんですよね(笑)。かっぴーさんや林さんには「休んでね」って心配されるんですが、今のところはつらいこともなく続けていられています。

かっぴー nifuniさんはいつも元気なので、そこは安心していますね。筆もすごく速いですし。

nifuni まだマンガを描き始めて半年も経っていないんですけど、自分の足りないところがようやく見えてきた気がしていて、楽しくなっちゃって。食べているときと寝ているとき以外はずっと作業しています。最近まで単行本1巻の修正作業をしていたんですけど、1話を描いていたときの粗が気になってしまって、1、2話はほぼ描き直しちゃいました。

重要なプレゼンの当日、デザインの修正をしていたはずの光一はいつの間にか眠りこけてしまい、プレゼンの約2時間前に目を覚ます。

かっぴー 1、2話を見て「変わってる!」ってなりましたもん。だからジャンプ+版だけじゃなく、単行本も見てもらって、「ここちょっと読みやすくなってる」とか比較してもらえると面白いですよね。

nifuni 原作と作画が分かれている場合って、原作がとても面白くて作画が超絶美麗な絵の方で組むのが一般的だっていう考え方があると思うんですよ。でも「エレン」の場合は「違うじゃん」っていう声が挙がってくるのも覚悟していましたし、そう思っている方にお見せできるものにするためには、妥協せずに「これが今の限界です、本気で描きました」っていうものを出し続けるしかないという気持ちです。

かっぴー 僕も同じように「自分が今描ける最高のネームを描こう」と思って作品に臨んでいるので、そうすると原作をそのままなぞるわけにはいかないっていう部分が出てくるんですよね。

──リメイク版の1巻は原作版とは構成が少し異なっていましたが、今後も変わっていく部分があると?

光一、エレン、さゆりの高校時代のワンシーン。

かっぴー 物語を年表にしたときに原作と齟齬がある形にはしないつもりですけど、エピソードを削ぎ落としたり追加したりはする予定です。リメイク版の1巻で言うと、光一、エレン、さゆりのキャラを早めに立たせられるようにしました。原作で人気が出てきたのって3、4巻のあたりだったんですけど、裏を返せば3巻までは溜めの時期だったんですよね。もし原作版の「エレン」が雑誌で連載されていたら、人気が出るまでに打ち切られたんじゃないかなとも思います。もちろんリメイクでも序盤が溜めの時期なのは変わらないですけど、なるべくキャラを早く立てようというのは課題にしていました。

──キャラを立てるために、具体的にはどのようなことをしたんですか?

かっぴー 光一が持っている思想に対して、新しく登場するキャラがどう対立しているのかっていうのをわかりやすくしているつもりです。光一は「実力はないけどでかいことをいう奴。10年後には現実を知ってそれに抗おうとしている」っていうことを最初に説明して、それに対してエレンはどういう思想を抱いているのか、そんな光一とエレンをさゆりはどう見ているのかみたいな感じで。

かっぴー、nifuni「左ききのエレン①」
2017年12月4日発売 / 集英社
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コミックス 432円

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Kindle版 410円

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作品紹介

広告代理店勤務の若手デザイナー・朝倉光一。

納得できない理由で自ら勝ち取った仕事を取り上げられた彼は、やりきれない気持ちを抱えて横浜の美術館へと向かう。そこは、彼が初めて「エレン」という才能と出会った場所で……。

大人の心も抉るクリエイター群像劇、開幕!

かっぴー
かっぴー
1985年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学でデザインを学んだ後、2009年に東急エージェンシーへ入社。アートディレクター、コピーライター、CMプランナーなどを務めた後、2014年に面白法人カヤックへと転職する。社内での自己紹介用に執筆したマンガを見た同僚に背中を押され、2015年9月に「フェイスブックポリス」をWebサイトに投稿し話題を集める。以降、「SNSポリス」「おしゃ家ソムリエ おしゃ子!」「バズマン」「いつか絶対おっさんになるキミへ」「みーはーちゃんねる」といった作品を発表。cakesにて発表した「左ききのエレン」のリメイク版は作画にnifuniを迎え少年ジャンプ+にて連載されている。「忙しく、遊ぶ」を社訓に掲げた株式会社なつやすみの代表取締役社長も務めている。
nifuni(ニフニ)
nifuni
1987年生まれ。国立高岡短期大学(現・富山大学芸術文化学部)にて金属工芸を学んだ後、株式会社ケイ・ウノへ入社。ジュエリーデザイナーとして8年間勤め、デザインだけでなくマネジメントや店舗の立ち上げにも携わる。
またその傍ら、ライフワークとして絵画やドローイング作品を自主制作し地元富山県で毎年美大出身のメンバーと共に展覧会を開くなど、絵描きとしての活動を続けてきた。現在漫画家デビュー作であるリメイク版「左ききのエレン」の作画を担当、少年ジャンプ+にて連載中。