愛を知らない少女と冷徹な鬼の溺愛ラブストーリー「鬼の花嫁」作者のクレハと富樫じゅんが対談、互いにリスペクトし合う制作現場を語る (2/2)

マンガオリジナル要素で増幅された“別れの悲しさ”

──これまでコミカライズ版は30話以上のエピソードが公開されましたが、先生方が印象的だったシーンが気になります。

クレハ 私は花梨と彼女のパートナーである妖狐のあやかし・瑶太の別れのシーンですね。2人のこれまでを一瞬で振り返ることができるページがあって、そこは原作にはなかったんですが富樫先生がオリジナルで加えてくださったおかげで、別れの悲しさが表現されていてありがたかった……。あのページがあることで、2人の歴史みたいなものがここで途切れたんだっていうことが強調された気がします。

「鬼の花嫁」第18話より。柚子への恨みを消せない花梨はあるトラブルを起こし、それによって瑶太と別れざるをえなくなってしまう。
「鬼の花嫁」第18話より。柚子への恨みを消せない花梨はあるトラブルを起こし、それによって瑶太と別れざるをえなくなってしまう。

「鬼の花嫁」第18話より。柚子への恨みを消せない花梨はあるトラブルを起こし、それによって瑶太と別れざるをえなくなってしまう。

──2人がすごく仲がいいカップルだというのはこれまでのエピソードで知っていましたが、付き合った期間もとても長かったんだと視覚的に感じて、胸が痛くなりました……。富樫先生はどのシーンがいち押しですか?

富樫 私はやっぱり、歩道橋での出会いのシーンですね。1話では柚子の視点で描いていて、3話では玲夜の視点になるんです。ここを対比させることによって、それぞれのシチュエーションの違いがうまく出てるなと原作を読んで感じたので、このシーンは意識的にドラマチックにしたいなと思ってたんですよ。だから「演出をどうしようかな」とけっこう考えましたね。結果的に自分のイメージ通りに描けたなと思っています。

クレハ そこはもう最初に原稿を見たときに、私がイメージしていた通りで。そう、こんな感じ!ってうれしかったです。

富樫 よかったです!

クレハ 劇的に描いてくださったので「ありがとうございます!」と思いましたね。あとすごく個人的なんですが、子鬼ちゃん登場シ-ンが大好きです。

富樫 お茶を運んでくるところですよね?

クレハ はい、ぜひともマスコット人形にして売ってほしいぐらい。

「鬼の花嫁」第3話より。柚子の護衛として玲夜が生み出した子鬼たち。

「鬼の花嫁」第3話より。柚子の護衛として玲夜が生み出した子鬼たち。

コミックシーモアでの配信で「認知度が一気に上がった感触」

──「鬼の花嫁」はコミックシーモアユーザーにとても注目され、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2023」の大賞を受賞しました。コミックシーモアでは「鬼の花嫁」単話版の先行配信が行われていますが、コミックシーモアで配信されるようになったことで、周囲からの反響など変わった部分はありましたか?

クレハ コミックシーモアさんで配信がスタートした日に、気になってサイトをちょこちょこ見てたんですよ。見るたびに口コミがどんどん増えて、だんだんランキングが上がっていって驚きました。バナーとかで広告も出していただけるようになってさらに驚いていたんですが、知人から広告を見たっていうLINEが届いたりして、反響が増えましたね。

富樫 それまで「鬼の花嫁」の反響って私のところには全然聞こえてこなかったんですよ。金曜に先行配信がスタートして喜んでいたら、月曜日に編集さんから「反響がすごいです」って言われました。クレハ先生がおっしゃっていたように広告を出してもらえてうれしい!って思ったら、動画の広告も出て!

クレハ そうそう!

富樫 うれしかったですね! 作品の認知度が一気に上がった感触がありました。

──作品の反響が、よりダイレクトに先生方に届くようになったんですね。私も、歩道橋でのシーンをピックアップした広告をよく見かけました。話は変わりますが、先ほどもお話した「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2023」の授賞式では先生方がとても緊張していらしたようでしたが……。

クレハ はい、めっちゃ緊張していました。目線をどこに向けていいやらで……。

富樫 私も……。すごく華やかでしたよね、授賞式。マンガ家ってすごく地味な生活なんですよ。ずっと家で1人でガリガリ描いているから。だからあんなにきらびやかな場所に呼んでいただいて、しかもPVまで流していただいて。

クレハ 大賞ということで最前列に座らせていただいたので、一番前でPVを観させていただいてなおさら緊張しました。

──授賞式から約1年経ちましたが、改めて当時のご感想をお願いします。

クレハ もう本当にただただ緊張したなって。何もしゃべれないぐらい緊張してました。

富樫 何を話したか覚えてないぐらいなんですけど、1年前にも感じた信じられないような気持ちは継続中ですね。未だに夢だったんじゃないかなって思うぐらい。リビングの一番よく見えるところにトロフィーと(コミックシーモア公式キャラクターの)ヨムビーちゃんのぬいぐるみを飾っていて、見るたびにうれしかった気持ちを思い出してるんですが、作家としてすごく励みになっています。読者の方が選んで下さった賞ですし、これからもがんばって描こうと思いました。

クレハ 私もトロフィーを飾っていて、ヨムビーちゃんのぬいぐるみは表面のフィルムを剥がせずにいますね……(笑)。ちょっとでも汚さないように。

──受賞が先生方の力になっているということで、投票した読者も喜ぶと思います。さて、ただいま本編では蛇塚の花嫁である梓と、柚子の幼なじみである浩介が登場し、新たな波乱の予感です。先生方から今後の展開で注目してほしいポイントをお願いします。

クレハ 今後梓と浩介が起こす問題によって「子鬼ちゃんが……!」と思うような事件が起きます。この場面は文字で読むより絵で見たほうが強烈な印象です。作者としても「こう描いてくださるんだ!」と衝撃でした。

富樫 私としては、柚子の成長を見てほしいなと思います。浩介は昔柚子と両片思いだったんですが、成長した彼が現れたことによって、柚子が玲夜への気持ちを見つめ直すきっかけにもなるんです。そしてそれを自分でどう消化して行動を起こすかを、今がんばって描いています。

「鬼の花嫁」第22話より。蛇塚の花嫁でありながら、彼を強く拒絶し続ける梓。

「鬼の花嫁」第22話より。蛇塚の花嫁でありながら、彼を強く拒絶し続ける梓。

「鬼の花嫁」第25話より。かくりよ学園大学部に進学した柚子の前に現れた、幼なじみの浩介。

「鬼の花嫁」第25話より。かくりよ学園大学部に進学した柚子の前に現れた、幼なじみの浩介。

マンガを買う手が止まらない!シンプルで使いやすいコミックシーモアに夢中

──コミックシーモアは今年でオープン20周年を迎えました。おふたりともコミックシーモアユーザーと伺ったのですが、コミックシーモアのどういう点がお気に入りですか?

富樫 「鬼の花嫁」がコミックシーモアさんで配信されたことをきっかけに使わせていただいているんですが、今どっぷりでございます。マンガを買う手が止まらない。電子書籍サービスはいろんなサービスをちょびちょび使ってみてはいたんですが、シンプルで使いやすいところが好きですね。

クレハ 口コミも見られますし、確かにホームページが見やすくてとっつきやすいですよね。

富樫 そう、初めて電子書籍を使ってみようという人でもシステムが分かりやすくて。会員登録したらガンガン買えるし。あと話題作にたどり着きやすいですね。無料立ち読みも充実してるので、「面白かったら買っちゃおう」って、自分も納得して面白いマンガに出会う機会が増えたなと思っています。

クレハ 「東郷家に嫁いだ話」のようなコミックシーモアさんだけの独占先行配信作品もあるのもいいですよね。マンガだけじゃなくてライトノベルとか他ジャンルの作品も、配信されている本数が違うように感じます。

──シンプルで使いやすいということで、富樫先生のおっしゃる通り電子書籍デビューというユーザーにもぴったりですね。それでは最後に、コミックシーモアへお祝いのコメントをいただけますでしょうか。

クレハ この度は20周年おめでとうございます。節目の年にこのような貴重なインタビューに呼んでいただいてありがとうございます。これからまだまだたくさんの作品が配信されていくかと思いますが、いち読者としてたくさんの作品に出会えたらなと思います。

富樫 コミックシーモア様、20周年おめでとうございます。「鬼の花嫁」はコミックシーモアさんに育てていただいた作品だなと思っています。本当に感謝していますし、これからも面白いマンガをよりたくさんの人に届けていただけるとうれしいなと思っております。これからの発展をお祈りしております。

総勢67人の豪華作家陣が参加、コミックシーモア20周年記念キャンペーンが始動

コミックシーモアが8月16日にオープン20周年を迎えることを記念し、さまざまなキャンペーンを実施。8月1日からは、「鬼の花嫁」の富樫じゅんを含めた豪華作家陣による67枚ものイラストが、特設サイト「20TH FESTIVAL」にて公開されている。
なお「20TH FESTIVAL」では、コミックシーモアでの20年間の人気作品を年代別にピックアップしたヒットリスト企画や、ほかにもさまざまなコンテンツを用意しているのでチェックしてみよう。

富樫じゅんによる「鬼の花嫁」色紙。

富樫じゅんによる「鬼の花嫁」色紙。

コミックシーモア20周年記念特設サイトはこちら

プロフィール

クレハ

2016年に「復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる」でアリアンローズ新人賞を受賞しでデビュー。主な著作に「鬼の花嫁」(スターツ出版)、「龍神と許嫁の赤い花印」(スターツ出版)、「結界師の一輪華」(KADOKAWA)、「新婚さんのつくりかた~朝から溺愛注意報」(アルファポリス)、「姫様のティータイムを邪魔してはいけません!~神獣に愛された王女は誰にも止められない~」(夢中文庫)などがある。

富樫じゅん(トガシジュン)

1981年に別冊マーガレット(集英社)に掲載された「あなた大物よ!」でデビュー。おもな著作に「好派!蘭丸応援団」(秋田書店)、「右手に拳銃 左手に愛」(秋田書店)、「冷酷御曹司は身籠り婚をご所望です!」(宙出版)がある。