「シネマこんぷれっくす!」特集 ビリー×とよ田みのる対談|──映画を観て「つまらなかった」って話をちゃんと人とする、それも本当は面白いことなんだよ

巨乳という武器を持たされてしまったゆえの不遇

──ちなみにビリーさん自身は3人の先輩女子の中では誰が一番好みですか?

ビリー 作中ではバランスがよくなるようにと思って、なるべく平等に描いてますが、個人的な好みでいうと黒澤ですね。

とよ田 あ、そうなんだ。

「シネマこんぷれっくす!」より。サングラスを奪われ、しおらしくなる黒澤。弱体化する原因は、クォーターのため虹彩が薄く日光にやられてしまうため。

ビリー ワンレンロングがこの世で一番好きなので、まず髪型ですよね。あと、身長高めで身体が薄いっていうのもツボ。自分の性癖が一番詰まってるのが黒澤です。あと、傍若無人なやつが弱っちゃう姿が好きなんです。ちょっとしおらしくなったり。その要素も黒澤には入れてます。

とよ田 僕も、宮さんがいなかったら黒澤派だと思います。

ビリー 3人でいうと、花村の影が薄くなっちゃってるんですよね。

とよ田 そうだね、黒澤と宮さんのほうがキャラ強い感じ。

ビリー 実はどうしてもその2人を優遇してしまうんです。というのは、花村は巨乳という武器を持たされてしまったから。それだけでキャラクターとしてアドバンテージがあるんです。

とよ田 メンタルじゃなくフィジカルが優れている感じなんだね(笑)。

「シネマこんぷれっくす!」より。新入部員獲得のため必死になる黒澤は、花村の巨乳でガクトを釣ろうとする。

ビリー そうなんです。「巨乳をもらってるから後回しで」みたいなバイアスがつい。3人娘がいて、全員貧乳というわけにいかないので、どうしても1人は巨乳にしなければという感じで巨乳になり、そのせいでかわいそうなことになっているので、今後もっと活躍させてあげたいと思っています。

とよ田 このマンガで人気投票を取ったら誰が一番になるんだろうね? やっぱり宮さん?

ビリー 属性として一番わかりやすいのが宮さんですからね。でも、黒澤は僕の中で鳥坂先輩のポジションとしているので、メインっぽく扱ってしまう部分はあります。

──別に鳥坂先輩はメインでもヒロインでもないですけどね。

ビリー (笑)。でも、話を回してるイメージがあるじゃないですか。

「シネマこんぷれっくす!」より。同級生・小津はあまり映画に詳しくない一般人だが、ガクトに密かに好意を寄せているため映研によく顔を出すようになる。ツンデレ系ヒロイン。

とよ田 サブのポジションなのに、一番の強キャラですよね。まあでも、このマンガが好きな人は宮さんを選ぶと思う。

──ラブコメ好きみたいな層が読むと、ガクトの同級生・小津ちゃんが強い気がします。好意がミエミエだし、読んでて応援したくなるキャラですよね。

とよ田 ああ、普通の人は小津ちゃんだよね。何かしら病んでる人は宮さん。

ビリー 小津に関しては、描きながら「こいつズルいな」と思ってます(笑)。

マンガを電子で買うのは「ドラクエV」でフローラ選ぶみたいなもんだよ

──「シネマこんぷれっくす!」は映画を知らなくとも面白いという話が出ましたが、その理由のひとつに「議論」をする楽しさがあると思います。そこで今日は、コミックナタリーユーザーの共通言語であるマンガをテーマに、作中の映研メンバーのようにお2人に議論をしてもらおうとお題を用意しました。まずは「どうしてもどちらかを選ぶなら紙の本? 電子書籍?」。

なお「FLIP-FLAP」紙書籍版は講談社より刊行されているが、2015年には、とよ田が自ら電子化を手がけたKindle版がリリース。単行本ではモノクロになっていた雑誌掲載時のカラー、POPやホームページ用に描かれたイラストなど、紙版にはなかった要素が入っている。

とよ田 これはやっぱり紙でしょ。

ビリー いや私……電子のほうが買うこと多いんです。最近は。

とよ田 お、そうなんだ?

ビリー 積極的に電子の方がいいというよりは、置き場所とかスペースの問題を解消するためには電子がいいという感じですが。

とよ田 言わんとしてることはわかる。でも、それは利便性の話でしょ? 「ドラゴンクエストV」でビアンカとフローラを選ぶときに、金持ちだからってフローラを選ぶみたいなもんだよ。そんなのは人間として許されない!(笑)

ビリー まったくおっしゃる通りです(笑)。その通りなんですけど、実際問題として部屋にもう置けないんですよね。

とよ田 そうなんだよね。僕も実際電子書籍で買うことが多くなってる。

ビリー 電子のいいところは収納もそうなんですが、ダブらないんですよ。

とよ田 わかる!! 僕も今日の取材のために「ダークマン」を探してて、家に2つあることに気付いたもん(笑)。

ビリー DVDのダブリは僕もよくやります。

「シネマこんぷれっくす!」でも字幕派、吹き替え派の対立など議論のシーンは多数登場。それぞれに主張に耳を貸すべきポイントがあるため、読みながら自分はどっち派か考えてみるのも一興だ。
「シネマこんぷれっくす!」でも字幕派、吹き替え派の対立など議論のシーンは多数登場。それぞれに主張に耳を貸すべきポイントがあるため、読みながら自分はどっち派か考えてみるのも一興だ。

とよ田 「ダークマン」は昔吹き替え版が出てなかったんですよ。それで、吹き替え版が出たときに喜んで買ったんですけど、それをすっかり忘れて2年後に「吹き替え版出たんだ!」って買ってしまったの(笑)。Twitterを見返したら2年前に「吹き替え版出たんだ!」ってツイートしてて、どんだけポンコツなんだって。

ビリー 電子はそういうことがないのがいいですね。あと、防水端末ならお風呂で読んだりもできますし。

とよ田 便利だよね。でも、僕は本当に好きな作品は紙で持っていたくなっちゃうから、電子で買った作品も気に入ったら紙で買い直します。人に薦めるときも便利だし。借りパクされたりすることもあるけどいいんです、そうやって経済を回せば!

ビリー ただ、本当どうしてもスペース上、紙は処分しなきゃいけなくなる。上京するときも泣く泣くかなり処分したんです。でも、結局上京してから同じくらい買っちゃったから意味がなかったなって。

とよ田 あるある。また読みたくなって結局買い直したり。でも、どっちかしか残せないってなったら、紙を残してくださいって神様にお願いしますよ。どんなにツラくたってビアンカと結婚しますよ、僕は!

ビリー 世界にどちらかしか残らないなら僕も紙を選びますね(笑)。

「ドラえもん」は自分の世代でやってた作品が一番!

──続いてのテーマは映画「ドラえもん」です。とよ田先生が藤子・F・不二雄先生の大ファンなのはご存知の方も多いと思いますが、意外にもビリー先生は「ドラえもん」の映画をあまり観ていないそうで。

とよ田 え、そうなの?

観に行った映画のムビチケカードはバインダーに入れて保存しているというとよ田。中にはもちろん「ドラえもん」映画の最新作「ドラえもん のび太の月面探索記」のカードも。

ビリー 小さい頃に一応観てはいるんですけど、あんまり覚えていないんです。で、大きくなってからはあまりに名作過ぎて後回しにしちゃって。「面白いのか面白くないのかわからない」って映画はすぐ観て確認しなきゃって思うんですけど、「ドラえもん」は絶対面白いじゃないですか。だから「とりあえずあとでもいいか」って思っちゃって。ただ、これからは改めて全部観ようとは思っています。

──そんな映画「ドラえもん」ビギナーのビリー先生にとよ田先生からオススメをしてもらえればと。とよ田先生自身は映画2作目の「のび太の宇宙開拓史」がお気に入りなんですよね?

とよ田 そうです。ただ僕は原作原理主義なので(笑)、原作の「宇宙開拓史」ですね。ただ、若い人に「『宇宙開拓史』が一番だよ!」っていうのが正しいかっていうと、それも違うなと思うんです。これはもう自分の世代の問題ですから。一番感受性が豊かなときに観たのが1作目(「のび太の恐竜」)から5作目(「のび太の魔界大冒険」)なんです。世代が違えばそれぞれのベストがあるし、思い入れがある。そこに自分の世代の思い入れを押しつけるのは老害ですよ(笑)。そういう世代の違いをわかってないでマウントしちゃいけないんです。君は自由であるべきなんです!

──大人だ。

とよ田 実際、最近の映画も面白かったですよ。この間、娘と観に行った「月面探査記」もよかったです。あと、2年前の「南極カチコチ大冒険」とか。

ビリー 「南極カチコチ大冒険」は話題になりましたよね。

とよ田 オチもすごくSF的なギミックが使われてて、F先生っぽいなって思いました。「わかってんじゃん」って、何様だって目線で(笑)。

──ただ、今回実際にビリー先生と話してみて、個人的にオススメするならどの作品でしょう?

とよ田 なんだろうなあ……「宇宙開拓史」かな!!(笑)

とよ田みのる

一同 (爆笑)

とよ田 結局「俺の世代の『ドラえもん』が一番よかった!!」って話にね(笑)。でも「宇宙開拓史」ってけっこう西部劇ベースの作品なんです。このあと話をする予定だけど、ビリーさん、岡本喜八監督の「斬る」とか好きなんですよね? あれと近い部分があると思います。ああいう空気が好きだったらノレるんじゃないかな?

──「シネマこんぷれっくす!」っぽくなってきました。長々と議論をしたけど、最終的にエゴで語る感じが(笑)。

ビリー「シネマこんぷれっくす!①」
発売中 / KADOKAWA
ビリー「ネマこんぷれっくす!①」

コミックス 670円

Amazon.co.jp

Kindle版 603円

Amazon.co.jp

ビリー「シネマこんぷれっくす!②」
発売中 / KADOKAWA
ビリー「ネマこんぷれっくす!②」

コミックス 670円

Amazon.co.jp

Kindle版 603円

Amazon.co.jp

ビリー「シネマこんぷれっくす!③」
発売中 / KADOKAWA
ビリー「ネマこんぷれっくす!③」

コミックス 713円

Amazon.co.jp

Kindle版 642円

Amazon.co.jp

映画大好きな少年・熱川鰐人は、高校デビューで映画に出てくるような熱い青春を送ることを決意する。……のだが、学園一の変人が集まる映研(通称:死ね部)のトラップに引っ掛かり、映研に入部させられてしまう。

残念美人な映研の先輩たちにより繰り広げられる字幕派吹替派論争やB級映画議論など、映画議論に巻き込まれてドタバタな学園生活を送る羽目になるのであった……。

とよ田みのる「金剛寺さんは面倒臭い①」
発売中 / 小学館
とよ田みのる「金剛寺さんは面倒臭い①」

コミックス 596円

Amazon.co.jp

Kindle版 594円

Amazon.co.jp

このヒロインには、付け入る隙などない!

口を開けば正論!正論!正論!
金剛寺さんはいつも正しい!
おまけに学業優秀&柔道の名手!
隙などまったくない彼女に、
樺山くんは…よりによって恋をした!
彼の運命やいかに!?

ちなみに本編とは大きく関わりのないことだがッ!!
この世界は地獄と繋がっているッ!!

「ラブロマ」「友達100人できるかな」「タケヲちゃん物怪録」のとよ田みのるが贈るロジカルピュアラブストーリー!!

ビリー
ビリー
北海道出身。2015年に読み切り「桜とつぼみは放課後ひらく!」で商業デビュー。2017年より「シネマこんぷれっくす!」を月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)で連載中。
とよ田みのる(トヨダミノル)
とよ田みのる
1971年10月7日東京都大島生まれ。本名は豊田実(読み同じ)。2000年「レオニズ」で月刊アフタヌーン(講談社)の四季賞(夏)にて佳作を受賞。2002年に高校生同士の恋愛を描いた「ラブロマ」を同賞に投稿、四季大賞を受賞しデビューする。翌年、同作は連載化。そのほかの代表作に「FLIP-FLAP」「友達100人できるかな」「タケヲちゃん物怪録」、子育てエッセイ「最近の赤さん」など。ゲッサン(小学館)にて「金剛寺さんは面倒臭い」を連載中。