のえるはすべてを受け入れているキャラなんだよね
──少し話がそれてしまいましたが(笑)、オーディション時に細かく役を詰めていったことでアフレコでは新たなディレクションなどもなく進んだんでしょうか?
田野 何か新しく言われたっけ?
山田 私は「もうちょっと冷静にしゃべっていいですよ」っていう話をされましたね。「ちょっとのえるにしては叫びすぎているんじゃないか」って。
田野 のえるの感情が出すぎちゃったっていうのは、ニニーがガンガン気持ちをぶつけるキャラクターなので、掛け合いの中でテンションが上がっちゃったっていうのはあると思うんですよね。いい意味で、みんなで同じ方向に向かってるからこそのことであって、私は「もうちょっと冷静に」っていうディレクションを聞いたときに、唯菜ちゃんは私のセリフをすごくちゃんと聞いてくれて、それに応えてくれているんだなって思いました。
山田 スタッフの方からも「すごい難しい役だから」と言われていたんですが、アフレコの休憩中、久保先生とたまたま廊下ですれ違ったときに「のえるはすべてを受け入れているキャラなんだよね」っておっしゃっていたんです。その言葉がすごく腑に落ちて、そこからすごく演じやすくなった気がしています。
──久保先生もアフレコに立ち会われていたんですね。
山田 オーディションからずっと参加してくださっていました。
──土屋さんもオーディションやアフレコで久保先生から何かアドバイスを受けたりしたんでしょうか?
田野 「バルゴまんまだね」って言われてたよね。
土屋 確かにバルゴの立ち位置と、僕のもともとの立ち位置って似ているのかもしれないです。僕は女系家族というか、女性が多い家庭で育って、女性が活発だと男性ってちょっとヘラヘラした感じでいたほうがいいんだなと思っていたので(笑)。バルゴはオスシちゃんを飼っていますが、僕もワンちゃんを飼っていて、バルゴのオスシちゃんに対するかわいがり方って、僕のワンちゃんに対するかわいがり方と同じですし、そういうところでもシンパシーを感じていました。
──演じやすかったキャラクターだと。
土屋 そうですね。バルゴは皆さんがシリアスなお芝居をやっているときに、ホワッとした感じを出してバランスをとるというキャラクターなんです。役割が明確なので、そういう意味では演じやすかったですね。ただ、ホワッとしているというだけではなく、ラストののえるとのシーンは包容力のある男性でもあるっていうところを匂わせたいなと思って演じていました。
──田野さんにも久保先生からアドバイスはありましたか?
田野 呪文の言い方とか「このシーンではもうちょっと感情を出してほしいです」みたいなキャッチボールはあったんですけど、根本的なキャラクターの心の部分とかに対しては、「ニニーを任せました」と言っていただいていましたね。
キャストがみんな一致して好きなシーン
──ではアニメの内容についてもお伺いしていければと思います。それぞれお気に入りのシーンを挙げてもらうとしたらどこでしょうか?
山田 いっぱいあるな。
田野 私は「カッコいい!」って思ったところだと、のえるがブルーノに対して「ダセぇメッシュですね」って言ったところですね。
──ブルーノがバルゴを拘束しようと、ニニーとのえるの前に現れるシーンですね。
田野 あのやり取りはアフレコでもテンションが上がりましたし、映像で観てもやっぱりゾクゾクっとしました。ジャンプで原作を読んだときも脳内で唯菜ちゃんの声が再生されて、私の中で魂レベルで好きなシーンなんだなって思っています。
山田 その流れで言うと、ニニー、のえると共闘することになったブルーノが「魔陣隊に取ってやってもいい」と持ちかけてきたときに、「別にそういうの 頼んだ覚えないです」って2人で言うところなんかも、コンビ感がすごいなって思いました。あとは「スパーナル・ジェイル」っていう魔法を2人で詠唱するところ。
田野 キモだね。アフレコで揃ったとき、めちゃくちゃ気持ちよかった。
土屋 僕は好きなシーンって言われて3つ思い浮かびました。1つ目はウイング・バインドの最高意思決定機関であるトップ・オブ・ホーンズが出てくるシーン。絶対みんな強いだろうし、本当にワクワクが止まらない場面でしたね。2つ目はエリーが月明かりを浴びて覚醒するシーンです。神々しくてアニメーションならではの雰囲気が出ているので。最後は自分が演じたキャラクターで、バルゴが終盤で自分も認知していなかった力を見せるところ。ただのおバカな男子じゃないんだぞって感じが出ているなって。
田野 あとアフレコ中にみんなで話していて一致したのは、オスシの登場シーン。オスシが出くるとみんな惹きつけられちゃいますね。あのベロが揺れている感じとかも笑っちゃいます。
──アニメで初めて声を聞いて、「こんな声なんだ」っていう驚きもありました。
田野 あれ、ずるいですよね。オスシのシーンはキャストがみんな一致して好きなところだと思います。
ネーミングはどこから生まれてきているんだろう
──「BURN THE WITCH」は読み切り版発表時に「BLEACH」と関わりがあるということが示唆されて話題になったりもしましたが、皆さん「BLEACH」はご存知でしたか?
山田 私はもともとすごくファンで、読み切りも読んでいました。ただ最初はラストシーンに「BLEACH」の文字が隠れているっていうことに気付かなくて。後々それを知ったときは鳥肌が立ちましたね。
──「BURN THE WITCH」「BLEACH」2作品を通して感じる、久保先生の世界の魅力はどういうところだと思いますか?
田野 唯菜ちゃんは語りたいこといっぱいあるんじゃない?(笑)
山田 逆に下手なことを言えない(笑)。共通している部分では、戦闘シーンの中でギャグっぽい会話が挟まったりしますけど、それがテンポを損なうんじゃなくて小気味良く感じられるっていうのはすごく好きな部分です。「BLEACH」で言うと、本編には出てこないクラスメイトのキャラ設定まで全部考えられていて、そういう緻密な計算の上でストーリーが展開されるのがすごいなって思うのと、これは「BURN THE WITCH」も共通ですが、いろんなところに伏線があって何度でも読み返せる楽しさがありますね。
土屋 「BLEACH」と「BURN THE WITCH」で世界観を共有している部分はありますけど、「ちょっとここだけ違うぞ」っていうちょっとした差を見つけて、いろいろと想像を巡らせられるのも楽しいですよね。
田野 あとやっぱり、「辞典ができちゃうんじゃないか?」っていうぐらい、独特な呪文だったり地名だったりが出てくるので、そういうネーミングはどこから生まれてきているんだろうって思います。「なんでそんな被らないように新しいものが出てくるの?」って。
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「きっさき」を「鋒」と書く言葉選び
2020年11月13日更新