久保帯人原作による劇場中編アニメーション「BURN THE WITCH」は、ロンドンの裏側に広がる“リバース・ロンドン”を舞台に、魔女と竜を描くファンタジーアクション。10月2日より新宿ピカデリーほか全国35館の劇場にて2週間限定でイベント上映されているほか、同日に世界同時配信がスタートした。
コミックナタリーでは上映と配信を記念し、「BURN THE WITCH」の特集を展開。第1弾としてニニー・スパンコール役の田野アサミ、新橋のえる役の山田唯菜、バルゴ・パークス役の土屋神葉による座談会をお届けする。「これはアフレコなのでは?」と思わせられるほどの時間をかけて行われたというオーディションや、かなりの人数のスタッフがリモートで参加したというアフレコのエピソードなど、演者・スタッフの熱量が込められた制作の裏側を語ってもらった。
取材・文 / 宮津友徳
オーディションの段階で「アフレコ始まってる?」って思わせられた
──皆さんオーディションを経て出演が決定したと伺っています。オーディションは、現在演じているキャラで受けたんでしょうか。
田野アサミ この3人はそうですね。作品によっては複数の役を受けることもあったりしますけど、私は「BURN THE WITCH」ではほかのキャラをやってみてくださいという選択肢は一切なく、「田野さんはニニーです」という感じでした。
山田唯菜 すごくやりやすいオーディションだったよね。オーディションってキャラのセリフをしゃべってみて「じゃあ今日はこれで終わりです」って淡々と進むものも多いんですが、今回は1つひとつのセリフに「次はこうやって演じてみて。じゃあ次はこうで」とディレクションをくださったので。
田野 オーディションの段階で「アフレコ始まってる?」って思わせられるくらい、時間をかけてスタッフさんとキャッチボールをしたんです。そこでニニーというキャラクターが作り上げられたっていうのは自分の中でありました。
土屋神葉 オーディション時に絵コンテを見せていただけたのも大きかったなと思います。僕はオーディション用の台本をいただいた段階では、バルゴというキャラクターのイメージを掴みきれていなくて。「どうしようかな……」と思っていたんですが、オーディション会場で絵コンテを見せていただいて「なるほど、こういうキャラクターなのか」と理解できました。
──ちなみに土屋さんは絵コンテを読んでバルゴというキャラクターをどのように咀嚼したんでしょう。
土屋 オーディションはバルゴがオスシちゃんという、子犬の姿をしたドラゴンに吊られて空を飛ぶシーンだったんです。そいつに……あ、いやその子に。
田野 そいつ(笑)。そのまま書いてもらうよ! 「これがバルゴの本心です」って。
土屋 その子です(笑)。そのオスシちゃんにバルゴがどういう表情で吊られているのか、台本だけだとあまりイメージがつかなくて。ただ絵コンテを読んだら、コメディっぽい感じで吊られていて、全体を通して「バルゴはいろんなことに翻弄される素直な温かい男の子なんだろうな」って自分の中で繋がったんです。その後スタッフの方から「もうちょっとコメディ要素をなくしてみようか」「大人っぽい感じで」とのディレクションが入り、オーディション中にいろんなことを試していきました。
それは……しちゃダメな質問です
──田野さん、山田さんはオーディションの段階ではそれぞれが演じるキャラをどのように捉えられていましたか?
田野 オーディションにあたって原作の読み切り版も読んだんですが、ニニーは芯が強い子だなと感じました。
山田 私ものえるに対して芯の強さは感じていました。クールビューティな感じで理路整然と物事を捉えている。そんな中でニニーに対しては信頼を置いていますし、普段邪険に扱っているバルゴをなんだかんだで助けたりもするという人間らしさも表現していきたいなとも思っていました。
田野 ニニーで言うと、久保先生が「ニニーとはこういうキャラクターです」というのを、読み切りの中ですでに提示してくれていましたし。先生がちょっとした眉毛の動きや目線でニニーのキャラクター性を表現されていたので、私はそれについていくだけというか。私は絵がまったく描けないですし、お前が絵の話をするなって感じですけど(笑)。
──ニニーはティザーPVで「この世界が本だったならページは私がめくりたい」と語っていたり、本編でも「バカしか魔法にかかんないなら あたしは魔法をかける側がいい」と言っていたりと、かなり勝ち気なキャラという印象も受けました。
田野 もちろん勝ち気で活発なんですけど、ここまで自分の気持ちをはっきり言葉にするって、ただ勝ち気なだけだとできないんじゃないかと思うんです。根本には冷静な部分もある、頭のいい子なんだろうなと。あとやっぱり「他力じゃなくて自分でやる」っていう気持ちはすごいなと思っていて、女性が憧れる女性という感じですね。
──一方でのえるは読み切り版のモノローグで「制服が好きだ 私が何者であるかを 誰にも証明しないで済むからだ」と語っているなど、高校生にして達観しているというか大人びているなと感じました。
山田 まだ17歳なのにすごいですよね。ウイング・バインドでの仕事に対しても、ニニーが「(ドラゴンの討伐対応に)ウイング・バインドがあたると(他人に)勝手に言われるのがムカつく」と言うシーンがあるんですが、それに対して「ムカつきませんよ それが仕事です」って返すのが割り切っていてカッコいいなと思います。
田野 そこでのえるも「確かにムカつきますね」って返しちゃうと、どんどん不満が膨れ上がるような感じになっちゃうんですよね。でもストレートに「それが仕事です」と言ってくれると、ニニーも腑に落ちる部分があるんじゃないかというか。この2人のやり取りはすごく魅力的だなって思います。
──ちなみにバルゴは劇中でのえるに好意を寄せていますが、土屋さんはニニーとのえるだったらどちらがお好きですか?
土屋 それは……しちゃダメな質問ですね(笑)。
田野・山田 (笑)。
土屋 演じているおふたりが目の前にいてすごく言いづらい。どうしようかなー。
田野 「どうしようかな」って発言が、もうやばいよ(笑)。
土屋 僕の判断基準がおかしいかもしれないですけど、原作の「BURN THE WITCH」第2話に、部屋着姿ののえるちゃんがけっこう出てくるんですよ。それを読んだらやっぱり「おお!」って惚れちゃうんです。ただニニーの部屋着姿はちょっとしか見られなかったので、これで決めてしまうのはフェアじゃないと。まだ時期尚早ということで、保留でお願いします!(笑)
山田 なんなの(笑)。
次のページ »
のえるはすべてを受け入れているキャラなんだよね
2020年11月13日更新