アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」特集 第1回 原作者 matobaインタビュー|恋する女の子はかわいい! 原作者が語るアニメの見どころと“おやつマンガ”に隠されたこだわり

悲しい思いをしたことがある子も、最後はみんなハッピーに

──ストーリーの軸にはベルとミュリンの不器用な恋模様がありますが、ミュリンが奔放なベルに振り回されるお話なのかと思いきや、2巻から徐々にベルがミュリンの行動や言葉に一喜一憂する場面の方が多くなってきましたよね。

第40話より、やきもちを焼いているベル。©matoba/SQUARE ENIX

そうですね。ここまでベル側の恋愛感情の表現が強く出るとは、自分でも思ってなかったです。ベルがミュリンと出会ったことによって新しい気持ちを獲得していく、という様子を表現したかったのと、やっぱり“恋する乙女はかわいい”っていうのがこの作品で見せたい部分だったので、その思いが出た結果なのかなと思います。

──読者さんからも「早くくっついてほしい!」という声は多いのでは?

たくさん言われますね。でも、くっついたらマンガが終わってしまうということも、読者さんはわかっていらっしゃるようで(笑)。

──悩ましいところですね(笑)。ちなみに先生はキャラクターたちをどのような目線で見ていらっしゃいますか?

おばあちゃんぐらいの感じです(笑)。みんなができるだけ悲しい思いをしない、今まで悲しい思いをしたことがある子も、作品の最後にはみんなハッピーになってほしいですね。

編集担当 恋敵すら出すのを渋るんですよ。誰かが悲しい思いをするからって。

──「ベルまま。」のコンセプトは「気軽に楽しめて癒されるおやつ的存在のマンガ」なんですよね。でも「魔女の心臓」はシリアスでしたし、先ほども人が死ぬような内容のプロットが多かったとおっしゃっていました。「ベルまま。」でそういう考えに至ったのはなぜなんでしょうか?

単純に、作品ごとに訴求する読者さんであったり、作品の目的が変わってくると思うので、自分が描きたいかどうかよりそっちを優先する傾向があるんです。私は筆が乗ってくると暗い話を描きがちなので、悲しい感じや重い感じになっていないか、担当さんにチェックしていただいて、調整していったりもしますね。もちろんシリアスな作品もこれからたくさん描けたらうれしいですし、あくまで「ベルまま。」ではやらない、ということですね。

──サービス精神が旺盛というか、すごく客観的な視点を持ってマンガを描かれているんですね。

そうかもしれないですね。それがいいのかどうかは、自分では悩ましいところですが(笑)。

──ほかに「おやつ的」であるために心がけていることはありますか?

まず、1話完結が基本であること。初めて読んだ人でも1編の話として楽しめるくらいのゆるさが必要だと思っています。前後の話を知ってたらもっと面白いけど、1話だけでも、どこからでも読めるということですね。あとはやっぱり、キャラクターと読者さんが悲しくならないということが一番重要です。

第25話より。料理人ニスロクが、遅くまで仕事をがんばるベルに作ってあげたレモンパイ。©matoba/SQUARE ENIX

──徹底しているんですね。気になっていたんですが、マンガの中にプチ情報みたいなものが結構出てきますよね。例えばレモンパイが出てくるシーンで、レモンにはこんな効能がある、ということが説明されていたり。

ああ、それは意識して入れていますね。あんまりくどくなってはいけないんですけど、マメ知識とかトリビア的なものって、読んだときになんとなく充足感が得られるというか。ゆるいマンガでも、「マンガ読んだな」って気持ちになれるおもしろポイントかな、と思って入れるようにしています。

もう4コマパートはいらないんじゃないか

──構成についても伺いたいのですが、「ベルまま。」はワイド4コマパートとストーリーパートが入り混じっていますよね。どんなふうに使い分けているんでしょうか?

ゆるい日常の部分は4コマで、しっかり感情表現を描きたいシーンは大きいコマで、という感じです。割合は脳直で決めてますね(笑)。

──4コマと通常のコマ割りとでは描き方も変わってきますよね。それぞれ気を付けている点などはありますか?

とにかく“ストレスなく読める”っていうのを一番に考えているので、4コマでは角度がついた構図や難しい表現は使わないように、ぱっと見て状況がわかるというのを大事にしています。ストーリーパートも、通常のストーリーマンガよりもわかりやすく、ライトな画面になるように、構図や描き込みを調整しています。ただ、慣れるまでは「これはサボってるんじゃないか」ってすごく悩んだんですよ。

──描き込む量も少ないし、手を抜いていると思われるんじゃないかと。

第10話より。同じ構図を2コマ続けることで、起きた変化がわかりやすくなる。©matoba/SQUARE ENIX

はい。必要だからやってることなんですけど、ちょっと罪悪感を覚えてしまうというか。2巻くらいで開き直れたんですけどね。最初は1ページに4コマしか描かなくていいから楽チンかなと思ったんですが(笑)、意外と大変でした。

──そのほかに、連載を続ける中で変わってきたことはありますか?

最近、4コマ部分がいらないんじゃないかと思っていて……。

──あはは(笑)。確かに、徐々にストーリーパートの分量が増えてきてますよね。

最近は帯にも「4コマ」って書いてないんですよ。もともと編集部のリクエストで、「ワイド4コマ形式の連載にしてほしい」と言われてスタートしていたので、そこにこだわっていたんですけど、作品としてはもうこだわる必要はないのかも、というところに到達してきました(笑)。

──とはいえ、4コマには4コマにしか描けないものもありますよね。

そうですね。ワイド4コマは、通常の1ページに2列あるタイプの4コマでは出せないテンポが出せるんですよ。ノリが結構違うんです。ワイド4コマのほうが通常の4コマより少しゆったりしたテンポになると感じていて、読者さんを疲れさせない、読みやすく感じてもらえる形式なのかな、と思います。

アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」
2018年10月放送開始
アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」
ストーリー

数十万の悪魔を統べる万魔殿(パンデモニウム)の主・大悪魔ベルゼブブ。その近侍として仕えることになった新人職員・ミュリンは知的でクールな彼女に憧れていたが、ベルゼブブの実態は、モフモフ大好きゆるふわ少女だった!?
不器用ながら徐々に距離を縮めていくベルとミュリン、そして2人を取り巻くこれまた不器用でユニークな悪魔たち。このお話は、悪魔たちが“ある気持ち”に名前をつけるまでのお話……かもしれない。

スタッフ

原作:matoba(スクウェア・エニックス 月刊「少年ガンガン」連載)

監督:和ト湊

シリーズ構成・脚本:冨田頼子

キャラクターデザイン:住本悦子

音楽:分島花音、千葉"naotyu-"直樹

音響監督:本山哲

アニメーション制作:ライデンフィルム

製作:「ベルまま。」製作委員会

キャスト

ベルゼブブ:大西沙織

ミュリン:安田陸矢

ほか

matoba
「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。⑦」
発売中 / スクウェア・エニックス
matoba「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。⑦」

コミックス 540円

Amazon.co.jp

Kindle版 540円

Amazon.co.jp

試し読みはこちらから!

matoba(マトバ)
matoba
月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)の月例マンガ賞・佳作受賞「からおけのひ」でデビュー。連載作品は「魔女の心臓」ほか。

2018年11月6日更新