武井宏之が語る「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」|キャラクターとはどうあるべきかを学べる、最高のエンタテインメント

「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」特集

スタン・リーが出てくるとドキッとします(笑)

──ほかにお気に入りのシーンなどはありますか。

お気に入りというか……これはマーベル映画全般に言えることですけど、「ULTIMO」を一緒に作ってからは、スタン・リーが出てくるとドキッとします(笑)。

──スタン・リーさんがマーベル映画にカメオ出演するのは有名な話ですね。

スタン・リー

映画を観るときってだいたい仕事を忘れて観ているんですけど、本当にいきなり出てくるので、仕事を思い出してドキッと。気持ちが現実に戻ってくるというか「仕事しなきゃ」って(笑)。

──スタン・リーさんとの印象的なエピソードはありますか。

スタン・リーとは「ゲラウェイ事件」っていうのがありまして。

──「ゲラウェイ事件」?

「ULTIMO」を一緒にやることになって、アメリカに行くことになって。スタン・リーに挨拶に行ったら「日本のトップアーティストと一緒に仕事ができるなんて、最高だ!」みたいなことを言ってくれたんです。でも僕、全然トップじゃないので「トップじゃないですよ」と返したら「出て行け!」と言われたっていう(笑)。

──えー!

もちろん冗談ですよ(笑)。でもカッコいいなあと思って。トップじゃなくてもトップだって言うことも大事だよな、と勉強になったんですよ。場面によっては自分もそうあるべきだなって。

キャラクターとはどうあるべきか、というのを学べる

──武井さんから見て、マーベル映画の人気の理由はなんだと思いますか?

「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」より。

まずはキャラクターのわかりやすさですよね。見た目と名前でだいたいどんなキャラクターかわかる。まあ、そのまんまですからね(笑)。でもそれ故に必要以上にリアリティを重視してるなと感じます。トニー・スタークだったらナルシストで、わがまま。すごいキャラほど、ダメで人間味のある要素を入れておかないと嘘くさくなるというか、共感しづらくなると思うんです。それに基本、アメコミのヒーローってマイノリティなんですよ。世間からちょっと外れちゃっている人とか、いじめられっ子的なキャラが多い。ただ強い、かっこいいだけじゃなく、弱いところもしっかり見せることで、人間としてのリアリティが増しますよね。

──マーベル映画は現代情勢や人種差別など、社会問題を取り入れるのも上手ですよね。マイノリティの葛藤とか精神的な悩み、コンプレックスみたいなものも描きたいのかなと思うのですが。

でも僕からするとそのへんは後付けかなと思います。戦う動機とか葛藤みたいな内面を描きたいというよりは、キャラクターを見せるために用意された要素でしかないんじゃないかな。もし精神面を本気で描きたければ、それに集中したほうがいいと思うし。でもマーベルに限らずヒーローを表現する上で、葛藤とか悩みを持たせるのは必要なことかなと思いますけどね。

──なるほど。その辺りは少年マンガと共通する部分かもしれないですね。ではマンガ家を目指している方は、どこをポイントにマーベル映画を観ると参考になると思いますか?

うーん……キャラクターの発想かな。ビジュアルや内面、全部含めてキャラクターとはどうあるべきか、というのを学べるんじゃないかなと思います。

──キャラクターってこういうことなのか、と気付くきっかけになるかもしれないですね。

武井宏之

気付きにはなると思います。やっぱり新人の方が一番躓くのってキャラクターなんですよ。ネームがなかなか完成しない、何回もやり直すって場合は、100%キャラクターができてないときです。キャラクターができてないからネームが進まない。それはなぜかと言うと、物語ってキャラクターを見せるために存在しているからです。「こいついいキャラでしょ」って言うためにストーリーを作るんですよ。ということはキャラクターができてないのにストーリーなんてあり得るわけない。もちろんストーリー主体で作りたい人もいると思うんですけど、ストーリーって突き詰めると数種類しか存在しないので。ウルトラCみたいなアイデアが出てこない限り、ストーリー自体の発想ってそうそうありえない。だから基本はキャラクターなんですよ。マンガって特に。

──確かに「アベンジャーズ」は、どのキャラクターも個性があって魅力的です。映画を観るとみんな好きになっちゃうんですよね。

そうそう。好きになってもらえるってことはキャラクターができているってことですよ。そういう意味では、僕も「アベンジャーズ」を勉強で観ている部分もあって。あれだけいろいろなキャラクターが出てくるのをどうやってまとめるのかとか、いろんな設定、いろんなビジュアルのキャラ1人ひとりに、いかにして説得力持たせるのかなと。だからある意味「アベンジャーズ」には運命的なものを感じますよ。「シャーマンキング」の新章を描くことが決まって、ちょうど映画の公開と同時期にマガジンエッジでの連載も始まったのですが、とにかくキャラクターが多い(笑)。僕はあのたくさんのキャラクターを描くってだけでも気が滅入るので(笑)。

「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」
2018年4月27日(金)全国公開
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」
ストーリー

6つすべて手に入れると、全宇宙を滅ぼす無限大の力を得るインフィニティ・ストーン。それを狙う最凶にして最強の敵・サノスを倒すため、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、スパイダーマンらがヒーローチーム“アベンジャーズ”として集結。人類の命運をかけた壮絶なバトルが幕を開けるとき、アベンジャーズ全滅へのカウントダウンが始まる……。

スタッフ / キャスト

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

脚本:クリストファー・マルクス、スティーヴン・マクフィーリー

出演:ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ドン・チードル、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、ポール・ベタニー、エリザベス・オルセン、アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、トム・ヒドルストン、イドリス・エルバ、ピーター・ディンクレイジ、ベネディクト・ウォン、ポム・クレメンティフ、カレン・ギレン、デイヴ・バウティスタ、ゾーイ・サルダナ、ヴィン・ディーゼル(声)、ブラッドリー・クーパー(声)、グウィネス・パルトロウ、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、クリス・プラット

電子書籍「SHAMAN KING」
KC完全版①~⑩巻
2018年5月1日より刊行開始
以降、毎月1日に5巻ずつ刊行予定
「SHAMAN KING」
武井宏之「猫ヶ原④」
2018年5月17日発売 / 講談社
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武井宏之「猫ヶ原⑤」
2018年5月17日発売 / 講談社
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武井宏之(タケイヒロユキ)
武井宏之
1972年5月15日青森生まれ。1996年、週刊少年ジャンプWinter Special(集英社)にて「デスゼロ」が掲載されデビュー。1997年に週刊少年ジャンプにて「仏ゾーン」で連載デビューを果たす。1998年より同誌にて連載された「シャーマンキング」は、テレビアニメ化、ゲーム化もされた。そのほか代表作品に「ユンボル-JUMBOR-」「機巧童子ULTIMO」(original story:スタン・リー)「猫ヶ原」など多数。現在、少年マガジンエッジ(講談社)にて、「シャーマンキング」新章を連載中。

2018年5月2日更新