ナタリー PowerPush - 土岐麻子
きらめくイマジネーション! 今を輝くために解き放て「乱反射ガール」
森山直太朗+グッドラックヘイワ+土岐麻子=?
──アルバム制作には、今回初参加のアーティストが多いですよね。森山直太朗さんの名前を見たときは「意外な組み合わせだな」と思ったんですが、グッドラックヘイワの演奏が加わることですごく腑に落ちる感覚があったというか。
直太朗くんとは「情熱大陸フェス」で一緒になることが多くて仲良くなったんですけど、あるとき「何年か前に作ってストックしてる曲があるんだけど、すごく気に入ってるのに男ボーカルで歌うイメージじゃない。土岐さんみたいな声で歌ったらいいと思うんだよなぁ」みたいなことを言ってたので聴かせてもらったんです。その弾き語りのデモがもともと「鎌倉」というタイトルで、歌詞の原型もほぼ今のものに近い状態としてあって。
──森山さんから持ちかけられたのが先だったんですね。
はい。そのデモはまさに“直太朗節”みたいな感じだったんですけど、なぜか「初期のユーミン(荒井由実)とか、はっぴいえんどみたいなアレンジにしたら面白そうだな」って思ったんですね。そしたら直太朗くんもそう思ってたみたい。
──シティポップス前夜というか、1970年代の音。
そうそう。それでいざ話が進んだとき、最初にアレンジャーとして思い浮かべたのは細野晴臣さんだったんです。でも当事者だった人よりも、私や直太朗くんみたいに、その時代の音楽に憧れを持っている世代の人とやりたいなと思って、アレンジを高田漣さんにお願いして。ミュージシャンも漣さんに人選してもらいました。
──ただの再現にはならないという。「現代のキャラメルママ」を探そうと思ったら、グッドラックヘイワの2人はものすごく適任かもしれないですね。
そうなんですよ。彼らはまだ20代なのに、なんでこんなに音が枯れてるんだろう(笑)。
──年齢詐称じゃないかと思いますよね(笑)。
おかしい! 肌とか若くてピチピチなんだけど、中に入ってる人は絶対5~60代(笑)。
──あの時代から冷凍保存しといて、最近になってフタ開けたみたいな印象があります。
そうそうそう。渋い、抑えの効いた演奏っていうんですか。すごくいいアレンジになったと思います。
「土岐麻子の椅子」に座ってたのは……
──伊澤一葉(東京事変)さんも一緒にレコーディングしたのは初めてですよね。
伊澤さんは、私が今年の1月と2月に徳澤青弦さんのセッションでバレンタインライブをやったとき、ピアノで参加してくれたんですよ。メンバーを青弦さんにお任せしたら、連れてきてくれたのが伊澤さんだったんですね。一緒にやったらすごく面白くて「またなんかできたらいいですね」ってツアーを終えたら、その2日後に曲が送られてきたんですよ(笑)。「QUIZ」は、ライブで演奏して聴いた私の声からイメージして提出してくれた曲なんです。
──渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET/THE ZOOT16)さんはどのように?
去年の夏に企画アルバム「VOICE ~WORKS BEST~」を出したとき、俊美さんがVJを務めているスペースシャワーTVの番組にゲスト出演したんですよ。そこで「今、ニューアルバムを制作しようとしてるんですよ」って話で盛り上がって。それで「ぜひ今度お願いします」みたいな。高校生、大学生のとき本当に憧れてた人だから、全く違う世界の人だと思っていたんです。一緒に音楽を作るなんて想像できなかったけど、ぜひやってみたいと思って。
──確かにこれまでは同世代の方が多かったですよね。今回の俊美さんや桜井秀俊(真心ブラザーズ)さんはリスナーの立場というか。
そうですよ。思いっきり憧れて見てたほうです。
──桜井さんも90年代半ば、土岐さんと同じように、突然覚醒したかのようにシティポップ/ソウル路線の楽曲を連発してましたよね。「サマーヌード」はもちろん、桜井秀俊&パイオニア・コンボの作品はさらに顕著に。
YO-KING(真心ブラザーズ)さんもすごい“達郎ファン”なんですよねー。
──あの頃の真心と今の土岐さんは共通するものがあるような気がします。パイオニア・コンボが寺尾聰さんの「シャドー・シティ」をカバーするセンスとか。もしかしたら、あの2人が土岐さんの座るべき椅子に長年座ってるのかもしれない(笑)。
あはは(笑)。ちょっとどいてもらわないと。膝の上でもいいから座らせてください(笑)。
作詞家・いしわたり淳治の視点
──いしわたり淳治さんは土岐さんと同世代だけど、全然違う道を通ってたような印象があるんですよね。Cymbals、SUPERCAR時代も含めて。
そうなんですよね。でもずっと気になる存在で。ソロになってからは何度か歌詞を書いてもらったんですけど、言葉のセンスに「何々風」っていうのがない、ルーツとかを匂わせない感じが毎回新鮮ですね。今回はテーマがハッキリしてたから全部自分で書こうと思ってたんですけど、「淳治くんだったら同じテーマで何を書くんだろう」と思って、1曲だけお願いしました。
──あえて第三者の視点を取り込んだのが「薄紅のCITY」。
自分ひとりの考えだけじゃなく、他の人からの影響も受けたいなという気持ちもあって、アルバム制作の一番初めの頃に淳治くんと会ってミーティングをしたんです。同世代だから「わかるわかる!」って言ってくれると思ったら、彼は「青森の、テレビも4局しか映らないところで育って、しかもずっと野球やってたから、あんまりテレビ観てないんだよね」って(笑)。なんか全然ピンと来てなかったんですよ(笑)。
──青森は「笑っていいとも!」もお昼ではなく、夕方放送なんですよね。
……ってことは「オレたちひょうきん族」も土曜日の夜じゃなかった?
──そうみたいですよ。毎週土曜の夜にEPOさんの「DOWN TOWN」を聴いてなかったとしたら、確かに土岐さんとのイメージにズレがあってもおかしくない。
でも、広告の本を見て説明したら、淳治くんも思うところがあったみたい。やっぱり今の時代の歌詞のあり方に対する違和感みたいなのもすごく感じてたみたいで、「いっそ何も言ってない感じの歌詞を書いてみるよ」って言って書いてくれたのが「薄紅のCITY」なんです。
CD収録曲
- Intro ~prism boy~
- 乱反射ガール
- 熱砂の女
- 薄紅のCITY
- 鎌倉
- feelin' you
- ALL YOU NEED IS LOVE
- QUIZ
- Sentimental
- HUMAN NATURE / sings with 和田 唱 from TRICERATOPS
- Light My Fire
- Perfect You
- City Lights Serenade
DVD収録内容
- VALENTINE LIVE TOUR @ Billboard Live TOKYO 2010.02.07
smilin' / Flamingo / ファンタジア - LIVE『LOVE SONGS』 @ 赤坂BLITZ 2009.07.07
SUPERSTAR / How Beautiful - 「乱反射ガール」MUSIC VIDEO
- RECORDING & MUSIC VIDEO OFF SHOT
ワンマンライブ
【2010・7・17 六本木 土岐麻子、熱する。土岐麻子ライブ2010 ミッドサマー・熱砂の女!!】
日時:7月17日(土) 開場 17:15 / 開演 18:00
会場:ラフォーレミュージアム六本木
土岐麻子(ときあさこ)
1976年東京生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」を発表する。2007年11月にはrhythmzone移籍第1弾アルバム「TALKIN'」を発表。2008年にミニアルバム「Summerin'」、2009年にはオリジナルアルバム「TOUCH」と、コラボレーション楽曲やカバーなどをまとめたベストアルバム「VOICE ~WORKS BEST~」をリリースした。