ナタリー PowerPush - 土岐麻子
きらめくイマジネーション! 今を輝くために解き放て「乱反射ガール」
「気持ちはまだガール」な音楽を同世代へ
──今作はこれまでと比べても一際、土岐さんのやりたいことが整然とパッケージされたアルバムに仕上がっているのではないかと感じました。ご自身の手応えとしてはいかがですか?
冒頭の話に戻るんですけど、これをどのぐらいポップな感じで受け止めてもらえるか、どのぐらい“今”のものとして自然に受け止めてくれる人がいるのか……って考えると、やっぱりリリースしてみないとわかんないところもあったりして。私と同じような感覚を持っている同世代の音楽好きには、きっとすごくわかりやすい内容だと思うんですけど、一般的にはどうなのかわからないですね。
──土岐さんという人をある程度知ってる人にとっては非常にわかりやすいし、きっと高く評価されるアルバムだと思うんですよね。でも確かに、CM音楽やナレーションがきっかけで土岐さんに興味を持って、最初に手にするのがこのアルバムだという人からは、意外な感想が届くかもしれません。
できるだけ広く届けたいので、アルバムを買ってくれた皆さんのリアクションがやっぱり気になります。
──このキャッチコピーに惹かれて買った人は、どういう感想を持つでしょうね。
気になりますねー。「キャッチコピー」って広く受け入れられるからキャッチコピーなんだと思うので、もっともっと言葉を洗練させないと。
──今の音楽シーンの中で戦っているような意識がありますか? 主流とされているガールポップの中に自分の世界観を持って向かっていくような。
「こういう音楽があったらいいのにな」って探してる人は絶対にいると思うんですね。例えば私と同年代かちょっと年上ぐらいの女性で、まだお母さんとかになってなくて働いていて、CDもひんぱんにチェックしたりするような人にとっては、今の日本の音楽で聴きたいものってすごく少ないんじゃないかなと。結婚して子供を産んだりすれば急に世界が変わったりするんでしょうけど、気持ちはまだガールなわけですよ。そのガールな気持ちを満たす、ちょうどいい女性シンガーが今はいない気がちょっとしていて。私自身もそう感じてるし。だから戦うっていうほどでもないけど、何か変えたいなっていう気持ちはありますね。「こういうのもあるよ」っていう。
──先ほど話していた「説明的すぎる言葉」についても、大きな戦いがあると思うんですよね。
歌詞がしつこくリアルになっているのは、もしかしたらお笑いブームでツッコミの感覚が広まったことが影響してるんじゃないかなと思っていて。喋りながらツッコまれないように喋るっていうか。ツッコむって、冷めてることですからね(笑)。
──一億総ツッコミの時代ですよ。
だからどんどんキザなことが言えなくなって、ぼんやり匂わす80年代の広告みたいな言葉を使えなくなってる気がして。だから「乱反射ガール」も突っ込みどころ満載で「ダサい!」って言う若いコもいっぱいいると思うんです。でもそこで斜に構えるんじゃなく「ツッコまれてもいいじゃん」と強くいきたい気分ですね。
光が乱反射するように、今の一瞬を輝いて
──このインタビューの入口となるバナーは、アルバムリリースにあわせて1カ月掲載されますので、読者のみなさんに「乱反射ガール」というフレーズを1カ月間にわたり無意識に植え付けることになります(笑)。
素晴らしいですね!
──今まで土岐さんのことを知らなかった人が「乱反射ガール」という言葉に吸い寄せられてくるかもしれないので……僕、この質問はあまり好きじゃないんですが、あえて「このアルバムの聴きどころを一言で」お願いします。
はい(笑)。「今を生きる」って、シンプルなようでいてすごく難しいですよね。大人になると特に。社会人になればなるほど、将来への不安とか後悔とか、未来や過去に意識がいっちゃうんですね。だから「光を乱反射するように、今の一瞬を輝いて生きる」という思いを込めて「乱反射ガール」というアルバムを作りました。……えーと、一言ですよね(笑)。夏に向けて素敵な一瞬を過ごすためにこのアルバムを聴いてください! アハハハ(笑)。いや、本当にそういう面もあるんですよ?
CD収録曲
- Intro ~prism boy~
- 乱反射ガール
- 熱砂の女
- 薄紅のCITY
- 鎌倉
- feelin' you
- ALL YOU NEED IS LOVE
- QUIZ
- Sentimental
- HUMAN NATURE / sings with 和田 唱 from TRICERATOPS
- Light My Fire
- Perfect You
- City Lights Serenade
DVD収録内容
- VALENTINE LIVE TOUR @ Billboard Live TOKYO 2010.02.07
smilin' / Flamingo / ファンタジア - LIVE『LOVE SONGS』 @ 赤坂BLITZ 2009.07.07
SUPERSTAR / How Beautiful - 「乱反射ガール」MUSIC VIDEO
- RECORDING & MUSIC VIDEO OFF SHOT
ワンマンライブ
【2010・7・17 六本木 土岐麻子、熱する。土岐麻子ライブ2010 ミッドサマー・熱砂の女!!】
日時:7月17日(土) 開場 17:15 / 開演 18:00
会場:ラフォーレミュージアム六本木
土岐麻子(ときあさこ)
1976年東京生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」を発表する。2007年11月にはrhythmzone移籍第1弾アルバム「TALKIN'」を発表。2008年にミニアルバム「Summerin'」、2009年にはオリジナルアルバム「TOUCH」と、コラボレーション楽曲やカバーなどをまとめたベストアルバム「VOICE ~WORKS BEST~」をリリースした。