音楽ナタリー Power Push - THE BACK HORN

核を見直し、新境地を開いた「運命開花」

THE BACK HORNが通算11枚目となるオリジナルアルバム「運命開花」を完成させた。

「暁のファンファーレ」から約1年8カ月ぶりのアルバムとなる本作は、今年9月に発表され、強烈な歌詞や曲展開が話題を呼んだ「悪人」を中心に全12曲で構成。THE BACK HORNの特長とも言える激しいバンドサウンドを打ち出した楽曲がある一方で、「君を守る」「コンクリートに咲いた花」といった優しい雰囲気を持つ新曲も収められている。

THE BACK HORNらしい濃厚さも保ちつつ、これまで以上に間口の広がった音楽性が味わえる「運命開花」。メンバー4人に完成に至るまでの過程を聞いた。

取材・文 / 小野島大 撮影 / 西槇太一

もう一度核を見直そう

──ついに新作「運命開花」が完成しました。どういう形で制作を進めていったんでしょうか。

THE BACK HORN

松田晋二(Dr) 前回のアルバム「暁のファンファーレ」のツアーが終わり、ある程度時間が経った頃、次のアルバムに向けてどういうふうに曲を作っていくか話し合ったんです。前作はそれぞれの中でシングルにできる最高のレベルの曲を持ってきて、それを軸にアルバム作りを始めようという形だった。今回は、自分たちにしかできない音楽をもう一度見つめ直して制作に入るのはどうか、と僕が提案したんです。三茶の飲み屋に集まってああだこうだと話し合ったところからアルバム作りがスタートしました。結果として、今回はど真ん中のロックで、THE BACK HORNにしかできないものが詰まったアルバムができたという手応えと同時に、いろんな人から今までになく幅の広いアルバムだという評価をいただいて。核に向かっていったつもりが幅の広さにつながったというのが面白くて。自分の中の手応えと、聴いてもらった感想の違いが興味深かったですね。

──いつもアルバム制作に入る前にメンバー同士で話し合うわけですか?

松田 今までは、なんとなくだったね。今回はもっと……。

──言葉で確認して。

松田 そう。僕個人としてはそういう話し合いを前からしたかったんです。今までは(菅波)栄純が「そうは言っても、実際に曲で持ってこないとわからないんじゃない?」みたいなことを言って、みんなそれで納得してたんだけど、今回はその前の段階で意識を共有したかった。

──その提案を受けてどう思ったんですか?

山田将司(Vo) うーん……なんかうしろ向きになるんじゃないかなって最初は思った。「リヴスコール」があって「暁のファンファーレ」があって、メッセージの打ち出し方も、歌詞の書き方も、前を向いて、今をサバイブして生きていくという方向で進んできたにも関わらず、「もう一度THE BACK HORNっぽいところを見直そう」という話になったのは、うしろに戻されるような気がしたのが正直なところで。どうなのかなと思ったけど、「オレらにしか使えない武器をもう1回ちゃんと見直そう」という話なんだなと思い直して。内面的なものも追求したいけど、メンバー各々が今まで自然と身に付けてきたスキルを出したいという表現欲求はあるわけじゃないですか。それを見直して出すことができたから、こういう幅のあるアルバムができたんじゃないかと思うんですよね。

岡峰光舟(B) 自分たちが思う新しいTHE BACK HORNというより、THE BACK HORNの核の部分を意識して今の感覚でやればいいのかなと。そうすれば今のTHE BACK HORNの音が自ずと出てくるだろうし、濃いものになるんじゃないかって思ったんです。

──今のTHE BACK HORNの核ってなんだと思いますか?

岡峰 ドロドロした部分は確実にあるんですけど、それだけってわけでもない。闇から抜け出して前を向こうとしている部分は昔から絶対にあった。そのことをわかっているから、そこに戻るというか、意識を向ければ希望も表現することができるだろうし。歌詞だけじゃなくて曲調にしても同様ですね。

THE BACK HORNらしさ=人間臭さ

──菅波さんはそのミーティングでどんなことを考えたんですか?

菅波栄純(G)

菅波栄純(G) どんなTHE BACK HORNがTHE BACK HORNらしいのか、それぞれイメージを出し合って。これだけ長いことやっていれば、メンバーそれぞれ考えがありますよね。なのでオレの考えるTHE BACK HORNらしさみたいなものをまずは軸にして、そこにみんなの持つイメージを足していくような感じで完成させていけばいいんじゃないかって話になったんですよ。そこで、オレの考えるTHE BACK HORNらしさっていうのはイコール人間臭さだったんですね。人間のいろんな思いが入り混じっていて、その分生々しく、それぞれの曲の主人公の生き様に何かを感じるような……それがTHE BACK HORNだと思った。そこからそれぞれで曲作りに入ったんですけど、自分の作った曲でそれがわかりやすく出ているのが「悪人」ですね。テーマを決めてそれに合わせていくというより、曲の世界に飛び込む感じで、腹の底のダークな、ドロドロしたところも思いきり描いてやろうと書いた曲で。それをみんなに聴かせたら、「こういうのがTHE BACK HORNらしいな」という空気になった。そこから具体的な曲を出しつつ、自分たちの考えるTHE BACK HORNらしさの焦点を絞っていった感じですね。

松田 「悪人」はアルバムの重しというか、へそというか、アルバムをまとめあげる際の軸になる曲になりましたね。

──シングルの「悪人」「その先へ」を聴いた時点では、アルバムは相当に濃厚でヘビーなものになると予想していたんですが、実際に聴いてみたらそこまで剛直でヘビーではなくて、意外に柔らかくて透明感があってすっきりして聴きやすい、という印象でした。THE BACK HORNの優しい面が出ているというか。

菅波 うんうん。それもわかります。自分としてはロックな面が出た作品という印象もありますね。ここ最近の作品と比べると、スピード感のある曲も多いし。“ロックなTHE BACK HORN”を期待してる声にも応えられてると思う。

ニューアルバム「運命開花」/ 2015年11月25日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤 [CD+DVD] / 3564円 / VIZL-903
通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64440
CD収録曲
  1. 暗闇でダンスを
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  2. ダストデビル
    [作詞・作曲:山田将司 / 編曲:THE BACK HORN]
  3. その先へ
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  4. tonight
    [作詞・作曲:山田将司 / 編曲:THE BACK HORN]
  5. コンクリートに咲いた花
    [作詞:松田晋二 / 作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  6. 記憶列車
    [作詞:松田晋二 / 作曲:岡峰光舟 / 編曲:THE BACK HORN]
  7. 胡散
    [作詞・作曲:岡峰光舟 / 編曲:THE BACK HORN]
  8. 魂のアリバイ
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  9. 悪人
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  10. シュプレヒコールの片隅で
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  11. 君を守る
    [作詞・作曲:菅波栄純 / 編曲:THE BACK HORN]
  12. カナリア
    [作詞:山田将司 / 作曲:岡峰光舟 / 編曲:THE BACK HORN]
初回限定盤DVD収録内容
  • 「運命開花」レコーディングドキュメンタリー
  • 「悪人」「その先へ」ミュージックビデオ
THE BACK HORN(バックホーン)

1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の東京・日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」、2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリース。11月には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 ?THE BACK HORN Film-」が全国公開される。2015年9月にシングル「悪人 / その先へ」を、11月に11作目となるアルバム「運命開花」を発表した。