堂本剛のクリエイティブプロジェクト.ENDRECHERI.が、2025年第1弾作品となるミニアルバム「END RE」を発表した。
プロジェクト名にも含まれている「終わり」を意味する「END」と、「再び」を意味する「RE」を冠したタイトルには、堂本が自身の人生観としても掲げている「人生は一度きりでも、何度だって生まれ変われる」という思いが反映されている。セルフタイトル的な意味合いを持つ本作には、堂本が敬愛するPファンクの創始者ジョージ・クリントンとのコラボレーションによって生まれた「雑味 feat. George Clinton」、23年前にリリースしたシンガーソングライターとしてのデビュー曲「街」の再録バージョン「Machi....」といった2024年発表の既発曲のほか、ライブでのセッションから生まれたご機嫌なファンクチューン「ENDRECHERI. Brother」、ストレートな愛の言葉が並ぶミディアムナンバー「super special love」、自身の生き様を表現したバラード「愛を叶えたい -RAION-」など、“最旬の堂本剛”が詰め込まれている。
2024年に自身の環境を大きく変え、新たな一歩を踏み出した堂本。彼は今、どんな思いを抱きながらで音楽と向き合っているのか。温かな太陽の光が差し込むハウススタジオの一室で話を聞いた。
取材・文 / 中野明子撮影 / 笹原清明ヘアメイク / 木内真奈美スタイリスト / 渡邊奈央、今村葉月
「街」は自分の想像を超えたものをもたらしてくれる
──2025年初のリリースとなるミニアルバム「END RE」についてお聞きする前に、年末に発表された「街」の再録バージョン「Machi....」の反響からお伺いしていいでしょうか?
「成熟している」「希望やポジティブな言葉がフィットする世界観に彩られている」といったコメントが多かったですね。23年前に発表したオリジナルバージョンは10代、20代の葛藤が惜しみなく込められているアレンジだったし、歌声だったので。自分も40を過ぎて、今年46になるので、そりゃ変わりますよという感じではありますけど(笑)。40代になった自分が10代、20代のときの自分のメッセージを代弁するみたいな、年齢を重ねたからこそのアウトプットができたと改めて思ってます。
──ご自身としても手応えを感じられた?
はい。僕としてはこれまで発表したどの作品にも手応えは感じていますが、聴いた方にどう受け取っていただくかというところまでは決められないじゃないですか。「こんな思いで作りました」と伝えるところまでが僕ができる最大限で、発表したあとは聴いてくださった方々の人生へそれぞれ溶け込んでいくわけですから、いろんな旅を楽しんでおいでねと楽曲たちを見送る感じですよね。
──そこはアーティストとしてデビューして25年以上が経っても変わらない?
はい。音楽の面白いところですよね。例えば「街」のアレンジを新たにして、今の僕が歌うことで曲が持つメッセージも変わって聞こえたり、今までとは違う層の方に届く。本当に人生と同じなんですよね。同じことを伝えているのに、自分の“背景”が違うだけで説得力が増したり、その逆もあったりして。聴いた方の反応を見て、それに改めて気付かされます。
──「Machi....」は先日行われたライブイベント「END RICH MILK CHOCOLATE」で、新鋭のシンガーソングライターの『ユイカ』さんとコラボレーションの形で披露されていました。
『ユイカ』さんのシンガーソングライターデビュー曲と、僕のシンガーソングライターデビュー曲をセッションする形で披露したんです。もともと『ユイカ』さんは僕と同じ奈良県出身だったので、ご一緒したら面白そうと思い声をかけさせていただいたんですが、初対面当日に話しが大盛り上がりしてしまって。なぜなら小学校の担任の先生が一緒だったんですよ。
──すごい偶然ですね!
めっちゃびっくりしました(笑)。思えばこれも音楽、そして「街」がつないでくれたご縁だなと。若き日に書いた「街」という曲は藤井フミヤさん、MISIAさんともコラボさせていただいた曲で、自分の想像を超える時間へと今もつないでくれています。そんな出来事があるたびに、書いてよかったし、あきらめずに生きてきてよかったと思えます。リリースしてから今まで、いろんな場面で自分を勇気付けてくれる曲でもありますね。
「END RE」というタイトルに込めた願い
──そんな「Machi....」も収録されている「END RE」ですが、.ENDRECHERI.の二面性が濃く表れているなと感じました。1曲1曲が独立しているわけではなく、ひとつなぎで聴くことで美しいグラデーションも感じられる。ごった煮感のある濃厚なファンクチューン「雑味 feat. George Clinton」に始まり、曲が進むにつれて「Machi....」などのバラード的な要素も入ってきて、ラストは堂本さんの歌心が全開になった「愛を叶えたい -RAION-」で締めくくられます。もともと剛さんは、このタイミングでどんな作品を作ろうと考えていましたか?
ここ数年、何かに偏った思考で議論している社会の構図が目立つようになったと感じていて。物事を解決へ導くその発想が極端になりがちだなと。僕は本来、何かを考えるときには偏ることなく両極の考えや方法を理解したうえで答えを出すべきだと思っているので、そのメッセージを「終わりと始まり」という両極にある言葉「END RE」をアルバムのタイトルへと選び、これらの思いを集約しました。そして「人生は一度きりでも、何度だって生まれ変われる」と僕は生きているんです。人はいつだって、思い立ったそのときから生まれ変われるんです。それができることをあきらめないでほしい。そんな願いがタイトルと作品に込められています。
──.ENDRECHERI.の音楽は周りの意見も交えて作られたりするのでしょうか?
そうですね。僕の場合、ファンクの曲は頭を柔軟に、仲間と一緒にノリで作ってるところが多いんです。自分の中から湧き上がってきたメロディやフレーズ、リリック、グルーヴを仲間と笑って平和に過ごしながら、音の1つひとつをブロック遊びの感覚で積み上げて、気付けば曲ができあがってた、みたいなことが多いですね。
──.ENDRECHERI.の曲は以前からそのスタイルで制作を進められているんですか?
いや、変わったところはたくさんありますかね。以前もお話しした通り、今までは自分が関わっていない作業や項目がいろいろとあって、見えていなかった領域にも関わる時間が今は増えました。自分の環境が新しくなってから制作費なども自分持ちですし、当然のことだけど、パッケージの内容、ライブの制作、物販に対する意識も変わりました。自分の想いを叶えてくれる人がいるからこそ、形にすることができる、ということをよりダイレクトに感じることができています。毎日が感謝の思いでいっぱいです。
──「END RE」は新しい環境に身を置かれてから初めてのパッケージ作品ですから、配信曲のリリース時に比べて目を配ることも増えたのでは?
そうですね。このデジタル社会の中で最初にリリースするのは手に取っていただける作品ですし、ファンの方に喜んでもらえるようにブックレットを用意しようとか、ジャケットが僕のビジュアルだと手に取りづらい人もいるかもしれないので通常盤と配信のジャケットはイラストにしようとか。いろいろとスタッフさんたちとミーティングを重ねました。
──写真のジャケットだと手に取りづらいですか?
「(.ENDRECHERI.のことは)気にはなってるけど……」くらいの方にとってハードルが高いというのは、僕が45年生きてきた貴重なデータです(笑)。
──最近だと男性のファンが増えていらっしゃるのでその配慮も?
同性の方のファンが増えているのは、データとしても実感してますね。10代、20代のオーディエンスがいることがSNSやサブスク利用者のデータで増えていると確認できますし、支持してくださる方の“景色”も変わったと思います。
次のページ »
いずれは心の声を最大限に聞いた音楽作品を