音楽ナタリー Power Push - THE BACK HORN
核を見直し、新境地を開いた「運命開花」
言葉って絶対、力があるんですね
──今回いろんなタイプの楽曲が収められているので、ボーカルも表現力が問われたと思うんですが。
山田 そうですね。1曲1曲の世界観にまっすぐ向き合って、そこで自然に出てくる今のモードで声を出していった感じで。だから、こうしたい！みたいなビジョンはなかったかもしれないですね。
──楽曲が指し示したものに自分がどれだけ入り込んでいけるか。
山田 うん。それでしかできない……ですよね。昔あったような「よくわかんないけどイライラしてるぜ」みたいな感じはもう出せないし、出しようがないっていうか。そこをやりにいくともう、芝居がかってくさくなっちゃうから。今感じてる状態を素直に出していきたい、というのは近年ずっとありますね。
──一方で、当然表現の幅とかスキルみたいなものは上がってるわけですよね。
山田 はい。それは単に歌唱技術的なことだけじゃなく、その曲のまっすぐな部分にどれだけ心を許せるか、みたいなことも年とともにできてくる。今回の「君を守る」も、すべて脱いだような気持ちで歌ったし。昔じゃここまで剥き出しの……弱さも情けなさも恥ずかしさも全部入り混じったような気持ちで歌うことは、自然な形ではなかなかできなかった。
──情けないかもしれないけど、とても優しい曲ですね。
山田 うん。その優しさを今の自分ならもっとまっすぐ受け止めることができる。自分の身近な人に置き換えて受け止めることができる。
──「悪人」など、テクニカルな面でも難しい曲だろうし、歌詞の世界に入り込むのも……。
山田 そうですね。覚悟が必要ですね、ほんとに。
──この曲をオレは歌っていくのか、と。
山田 ほんとその通り。「あの悪人はきっと僕だ」で始まる曲をこれから歌っていくんだな……という気持ちにはなりましたよ、正直（笑）。ずーっとこれを歌っていくのか、毎回毎回気持ちをそこに引き戻さなきゃいけないのかと。言葉って絶対、力があるんですね。発するとその力が自分に乗り移るから。実際に言霊ってあるんですよ。だから歌うって行為はなかなかタフな作業で……覚悟は決めてますけど。自分のすべてをそこに捧げているんで。4人で選んでこういう曲を作ってやっていこうって決めたら、それはTHE BACK HORNとしての運命じゃないですか。
必ず100％消化してから歌う
──山田さんみたいに曲に感情移入して歌うタイプだと、昔の曲だとそのときの気持ちに戻らなきゃいけないんですね。
山田 そうですね。歌ってる自分が納得いかない状況になることもあるんですよ。演じ始めちゃって。THE BACK HORNではこっちから曲に入りに行くんじゃなくて、勝手に同調してる感覚に近いというか。
菅波 波長を合わす？
山田 というより、自分の感覚と曲が勝手に同期してできるのが自分の歌っていうか。
──合わせるんじゃなくて、合わさっちゃう。
山田 そう。もちろん寄り添いにいくんだけど。
──合わさるまで待つんですか？
山田 待つこともありますね。自分がよしと思える感覚を持てるまで。
──過酷な作業ですね。この曲を背負っていかなきゃいけないと覚悟を決めて。
山田 うん。まあそれはみんな各々背負ってるとは思うんですけど、でもTHE BACK HORNってそういうバンドだし。そこで歌ってるのがオレだから。
──ライブだと作った時期も状況もバラバラの曲をいっぺんに歌うわけだから、1曲ごとにがらりと気持ちを変えるのも難しい？
山田 ボーカルってそういうのがすごく出やすいから、そこはすごく気を付けてるんですよね。昔は自分という人間を曲に近付けようと努力してたし、憑依してるってよく言われた。でもある時期それが「嘘くさっ」と思っちゃったんですね。自分を出してちゃんと歌ってるほうがカッコいいなと思って。自分っていう人間のフィルターを通して、人に問いかけていくような。今もそれを意識して、必ず歌詞を100％消化してから歌うようにはしてます。
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- ニューアルバム「運命開花」/ 2015年11月25日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3564円 / VIZL-903
- 通常盤 [CD] / 2916円 / VICL-64440
CD収録曲
- 暗闇でダンスを
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - ダストデビル
[作詞・作曲：山田将司 / 編曲：THE BACK HORN] - その先へ
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - tonight
[作詞・作曲：山田将司 / 編曲：THE BACK HORN] - コンクリートに咲いた花
[作詞：松田晋二 / 作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - 記憶列車
[作詞：松田晋二 / 作曲：岡峰光舟 / 編曲：THE BACK HORN] - 胡散
[作詞・作曲：岡峰光舟 / 編曲：THE BACK HORN] - 魂のアリバイ
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - 悪人
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - シュプレヒコールの片隅で
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - 君を守る
[作詞・作曲：菅波栄純 / 編曲：THE BACK HORN] - カナリア
[作詞：山田将司 / 作曲：岡峰光舟 / 編曲：THE BACK HORN]
初回限定盤DVD収録内容
- 「運命開花」レコーディングドキュメンタリー
- 「悪人」「その先へ」ミュージックビデオ
THE BACK HORN（バックホーン）
1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の東京・日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』～リヴスコール～」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」、2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリース。11月には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 ?THE BACK HORN Film-」が全国公開される。2015年9月にシングル「悪人 / その先へ」を、11月に11作目となるアルバム「運命開花」を発表した。
