ハルカミライに学ぶcoldrain

──今回の対バンはcoldrainサイドからの打診だったそうですね。

橋本学（ハルカミライ）　えっ、そうなんですか!? うれしい。

Masato（coldrain）　そう。ずっとハルカミライとはライブハウスで一緒にやりたいと思ってて。ただ、出会った頃にはお互い勢いがあったから、なんか「タイミングを見ないと呼べないな」みたいな状態だったんですよね。別にそういうことを考えずに声をかければよかったんですけど。だからKDDIさんからツーマンライブのお話をいただいたとき、ライブハウスでの開催だし、タイミング的にもちょうどいいなと思って対バン相手としてハルカミライの名前を挙げさせてもらいました。

橋本　めっちゃうれしいです。俺らも「coldrainとライブハウスでやったことないから」という理由でイベントへの出演を決めたので。お互いに噛み合っている感じがします。

──出会ったときのことは覚えていますか？

Masato　どこだったっけな……。同じフェスにバーッと出ていた時期があったんです。そのときにハルカミライのライブを観て衝撃を受けて。というか、それがどのフェスだったかが思い出せないくらい、毎回衝撃を受けているんですよ。俺、ハルカミライのメンバー全員にいろんなところで「なんでそんなすごいライブができるの？」って聞いていて。

橋本　（笑）。

Masato　ハルカミライは“奇跡の1回”みたいなライブを毎回やるから。それがどうしてなのか聞いたら、ライブが終わったあとにメンバー同士で「今日、お前は事件を起こしたのか？」と話す反省会をしているらしくて。スタジオでは真面目に練習しているけど、ライブではその成果を発揮するんじゃなくて、“事件”を起こすことを考えているという。あと、ハルカミライはフェスとかイベントのカメラに抜かれるのがめちゃくちゃうまいよね。

橋本　えっ、そうですか？

Masato　俺、「なんで、お前らそんなにカメラに抜かれるのがうまいの？」ってハルカミライのメンバーに聞いたことあるよ。そしたら「カメラがどうこうということではなく、演奏しながらみんなが学に近付いていくんだ」と言っていて。結果全員が1つのフレームに入って、いい絵になってカメラに抜かれると。あと「DEAD POP FESTiVAL」（SiM主催のロックフェス）のときに思ったんだけど、照明がほぼ1色だけのときあるよね？

橋本　はい。

Masato　俺、ほかにそんなバンドは見たことないんだよ。だってたくさん照明を仕込んであるのに、使うのが1色だけなんてもったいないじゃん。でもそれがすごく斬新で。いろんなところに学びがあるバンドだなと思っています。

橋本　ありがとうございます。

──Masatoさんは普段から気になることがあったらすぐに聞きに行くタイプなんですか？ それともハルカミライだから聞きたくなってしまう？

Masato　ハルカミライだから、というのはありますね。俺はTHE BLUE HEARTSとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを聴いていたけど、自分たちの音楽的にそういうバンドと一緒にライブをすることは叶わなくて。だけど、ハルカミライはそのシーンのアーティストに絡めている感じがして、自分のことのように誇らしいんですよね。全然タイプが違うバンドなのに、いつも近くにいてくれるし。ライブを観て2回目くらいで「BLARE FEST」（coldrain主催フェス）に誘いましたもん。

橋本　うれしいです。俺らの世代を引っ張ってくれているのって、TRIPLE AXEの3組（SiM、HEY-SMITH、coldrain）だと思っているんですが、その中で俺らが最初に絡んだのはHEY-SMITH。HEY-SMITH主催のフェス「HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」に呼んでもらって、その次にSiMに「DEAD POP FESTiVAL」に呼んでもらったんですが、coldrainとだけはなかなか絡めなかったんですよ。それをHEY-SMITHの猪狩（秀平）さんとSiMのMAHさんに話したら「あいつらはTRIPLE AXEの中で一番人見知りだから」と言っていて。しばらく経って「BLARE FEST.」に声をかけてもらえたときはうれしかったです。

Masato　（笑）。

共通するライブに対する本気度

橋本　そうだ。俺、18、19歳の頃にカラオケでよくcoldrainの「Final Destination」を歌ってたんですよ。

Masato　マジで!?

橋本　あはは。俺としては、coldrainの音楽をカルチャーとして見ているところをすごくリスペクトしています。若い頃のハルカミライは、よくも悪くも「見てくれなんて関係ねえ、必要なのはハートだけだ」と思っていて、自分もメンバーもおしゃれなものを着るなんて許せなかった。だけど今になって、音楽にはファッションやスケートボード、アートが絡んでいて、カルチャーとしてカッコいいものなんだと気付いた。それを表現しているcoldrainは本当にカッコいいし、一方で自分たちはイモっぽさ、いなたさがまだまだ抜けないなと。

Masato　そこがハルカミライのいいところなんだけどね。そもそもライブでは上裸でしょ（笑）。

橋本　確かに。

──ではお互いの共通点を挙げるとしたら？

Masato　ライブに対する本気度。あと、ハルカミライが何も考えずにライブをしているように見えるのって、全部計算されているからだと思うんですよ。

橋本　どうだろう？（笑）

Masato　「計算されている」というのは僕の印象ですけど、本気だからこそできる適当加減というか。

──以前別のインタビューで、Masatoさんはハルカミライなどの次世代のバンドが“むちゃくちゃ考えて、むちゃくちゃ考えていないみたいなライブ”をすることに影響を受けて、最近は自分たちも考えすぎないようにしている、とおっしゃっていましたよね。

Masato　そうなんです。ハルカミライのライブって、あくまでカッコいいことが前提でファニーな部分もあって、それが理想的なんです。しっかり準備をしていくからこそ、その場を楽しんでいる感じがある。俺らもハルカミライと出会ってから、そういうライブが少しずつできるようになってきていると思う。ライブでの遊び方は、ハルカミライに教えてもらっていますね。

橋本　こんなに褒めてもらえるなんて気持ちいいっすね！（笑） 去年、coldrainとは一緒に韓国のフェスに出たんですけど、そのときMasatoさんが胃腸炎になって、裏では死にそうになっていたのに、ライブではそんなこと感じさせずにいて。あれはすごいなと思いました。

Masato　それも学に影響を受けたところだよ。あのフェス、お客さんはほぼ韓国の人しかいなかったのに、学は日本でもやらないくらい日本語でMCをしていて。それを見て俺は「絶対負けねぇ！ マジでがんばらないと！」と思ったんだよ。

橋本　でもcoldrainは海外でのライブの経験が多いから、ステージでは“海外の顔”になっていて。一緒に出演していたCrossfaithも日本でやっている感じと全然違いましたね。それもカッコよかった。自分たちのスタイルが固まったキャリアのあるバンドの中には、誰かのイベントに呼んでもらっても、そこでのお客さんをかっさらえなくなるバンドもいるじゃないですか。俺らはそうなりたくないなとずっと思っていて。韓国でのライブのときも思いましたけど、coldrainは自分たちのことをまったく知らない人たちも巻き込んでいける。とにかくパワープレイがすごいんですよ。

Masato　俺らがパワープレイでやっていることが、最近下の世代にもバレ始めている（笑）。