音楽ナタリー Power Push - cero
オリジナルメンバーを交えて辿った「Obscure Ride」までの道のり
ceroが3rdアルバム「Obscure Ride」をリリースした。
彼らは先行シングル「Yellow Magus」「Orphans / 夜去」の音作りで垣間見せたブラックミュージックへのアプローチを本作で全面的に展開。エキゾチックなサウンドを、少ない音数と強固なボトムで構成したアーバンソウルへと大胆にシフトチェンジさせた。
今回はメンバーに加え、現在はイラストレーターとして活躍する元メンバー・柳智之の4人にインタビューを実施。柳はバンド結成から1stアルバム「WORLD RECORD」まではドラマーとして、脱退後はジャケットのイラスト提供などでceroを支えている。3人にもっとも近いところにいる柳の“証言”を踏まえながら、アルバムを経るごとに確実な成長を遂げるceroの原動力を解き明かした。
取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 佐藤類
“4人のcero”の成り立ち
──皆さんがceroを結成したきっかけを教えてください。
髙城晶平(Vo, Flute, G) はしもっちゃん(橋本)と僕、あらぴー(荒内)とヤナ(柳)が2人ずつ同じ高校で、在学中に同じライブハウスでそれぞれライブをやることもあったんです。それであらぴーと僕が高校の卒業ライブで一緒にNUMBER GIRLのコピーをやってみたら面白かったので「卒業してからもやろう。ヤナっていう面白いやつがいるから彼も」って話になって。
柳智之 そのライブの2年前に僕は髙城くんの初ライブを観てて。すごくいいライブだった。
髙城 そうだったね。面識はあったけどヤナと初めて話したのは卒業ライブのときで、当時からすでに絵を描きたいって言ってたけど、「まあまあ、とりあえずドラム叩こうや」って言ってバンドに誘って(笑)。まず3人のceroができたんです。はしもっちゃんはまだジオラマシーンの活動が中心で、ceroとは吉祥寺のSTAR PINE'S CAFEとか江ノ島のOPPA-LAでよく対バンしてました。活動は別々なんだけど近いところにはいたよね。
橋本翼(G, Clarinet, Cho) うん。
──cero結成が2004年。2006年に橋本さんが加入したきっかけは?
荒内佑(Key, Cho) 当時は僕のパートがキーボードとベースだったんですけど移動が大変で、いつも演奏する前に移動で参っちゃってて。それでベースに専念しようと決めて、キーボード的な役割ができる人をって考えた結果、はしもっちゃんに声をかけたんです。
橋本 そう。僕がエフェクティブなギターが好きだったんで、あらぴーの代わりにその役割を担うっていう。
髙城 「荷物が重いから」って理由(笑)。
荒内 まあでも当初3人で始めたときの実験的な方向性から徐々にエバーグリーンなものも指向し出した時期だったので。それではしもっちゃんに入ってもらってオーソドックスなバンド編成になったんです。
柳 うん、そんな感じだった。
荒内 ヤナは当時から自主制作CD-Rのジャケとかフライヤーとか、何かと描いてくれてたね。
髙城 そうそう。今考えるとぜいたくだなあ。
この3人はすごいな
──柳さんが印象に残っているceroのエピソードを教えてもらえますか?
柳 僕のバイト中に髙城くんとあらぴーが「『FUJI ROCK FESTIVAL』出演決定したよー!」って電話をかけてきて、つい「うわー!」って声を上げたんだけど、その日は4月1日だったっていう。まんまと引っかかった。
髙城 エイプリルフール毎年やってたな(笑)。
柳 あとceroが鈴木慶一さんにプロデュースしてもらってレコーディングするとき、僕は「あの鈴木慶一さんと!」ってスタジオですごく緊張してて。でもほかの3人はまったくそんな感じじゃなくて、いつも以上に生き生きしてたんです。「この3人は本当にすごいな!」って思いましたね。
髙城・荒内・橋本 ははは(笑)。
髙城 そのときは、ミキサーの前に立って録音ブースに向かって指をパチンと鳴らす、みたいなレコーディングスタジオっていうのに憧れてたから「やっべえ! 本物のブースだ!」みたいな感じで。あとは貸楽器もいっぱいあったので、当時まだ触ったことがなかったスティールパンを叩いてみたりして。
荒内 大学生ぐらいのやつらが「ジャンベも! スルドも!」とかはしゃいで全部楽曲に入れようとする。自分がプロデューサーだったらあんなの本当にイヤだったと思います(笑)。
柳 あと、cero以前の話になりますけど、僕とあらぴーがやってたバンドでは彼が全部曲を作ってたんです。髙城くんも自分で曲を作ったし、はしもっちゃんもジオラマシーンをやってて。それを見て「この3人はそれぞれリーダーを張れるんだな」って感じていて。ニューアルバム「Obscure Ride」での、3人それぞれ曲を作ってプロデュースするっていう現在の流れが当時からすでにできていたよなあって思いますね。
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- ニューアルバム「Obscure Ride」 / 2015年5月27日発売 / カクバリズム
- ニューアルバム「Obscure Ride」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3400円 / DDCK-9005
- 通常盤 [CD] / 2900円 / DDCK-1043
CD収録曲
- C.E.R.O
- Yellow Magus(Obscure)
- Elephant Ghost
- Summer Soul
- Rewind Interlude
- ticktack
- Orphans
- Roji
- DRIFTIN'
- 夜去
- Wayang Park Banquet
- Narcolepsy Driver
- FALLIN'
初回限定盤DVD収録内容
「Wayang Paradise」
- ワールドレコード
- わたしのすがた
- exotic penguin night
- マイ・ロスト・シティー
- Contemporary Tokyo Cruise
- roof
- Bird Call
- outdoors
- cloudnine
- マクベス
- (I Found it)Back Beard
- あとがきにかえて
cero "Obscure Ride" Release TOUR
- 2015年7月4日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2015年7月5日(日)大阪府 BIG CAT
- 2015年7月12日(日)東京都 Zepp Tokyo
- ※終了分は割愛
cero(セロ)
2004年に髙城晶平(Vo, Flute, G)、荒内佑(Key, Cho)、柳智之(Dr)の3人により結成された。グループ名のceroは「Contemporary Exotica Rock Orchestra」の略称。2006年には橋本翼(G, Clarinet, Cho)が加入し4人編成となった。2007年にはその音楽性に興味を持った鈴木慶一(ムーンライダーズ)がプロデュースを手がけ、翌2008年には坂本龍一のレーベル・commmonsより発売されたコンピレーションアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2-」への参加を果たす。2011年にはカクバリズムより1stアルバム「WORLD RECORD」を発表。アルバム発売後、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退し3人編成に。2012年10月には2ndアルバム「My Lost City」をリリースする。2013年12月に「Yellow Magus」、2014年12月に「Orphans / 夜去」というブラックミュージックにアプローチした2枚のシングルを発表。2015年5月に3枚目のアルバム「Obscure Ride」をリリースした。