ナタリー PowerPush - Alice Nine

ロックバンドを組む楽しさと ポップミュージックの奥深さ

ポップミュージックのことをナメてたと気付かされた

──沙我さんが以前Twitterで「最近はPOPな音楽を作る方が相当難しく感じる。POPな音楽を作ろうとしている時、途中でオルタナティブロックな方向に逃げようとするなというある人の言葉が、相当俺に効いている。ロックに逃げるなと。その言葉自体がロックだ」と書いていたのを読んで、なるほどなと思ったんです。Alice Nineの音楽からは意識的にポップであろうという意志を感じるので。

沙我(B)

沙我 「GEMINI」を作ってるときにプロデューサーの岡野ハジメさんに出会って、音楽を作る上での心構えを教えられたんです。この曲はロックだからオラオラでやればいいとか、ポップスだから耳当たりよく作ればいいとか、そんな単純なことじゃなくてもっと奥が深いんだって。ポップミュージックのことをちょっとナメてた部分があったんだなと気付かされましたね。例えばポストロックだったり、感性で勝負するような音楽もカッコいいかもしれないけど、僕らはそういうんじゃなくて、先人たちが努力して作りあげたポップミュージックを学んで、それに負けないような音楽を追求してみたいと思ってます。

──そのほかに、岡野さんから言われて心に響いた言葉って何かありますか?

沙我 「もっと音楽を聴いてください」って言われました(笑)。聴いてるつもりだったんですけど、全然足りないって。

ヒロト 最近はギターが歪んだ音楽も好きになったんですけど、完全に岡野さんの影響ですね。今さらですけどLED ZEPPELINとか。

沙我 あとは「バンドを楽しんでる?」とか、「もっと目立てばいいじゃん! もっとガツガツしたらいいじゃない!」みたいな、当たり前すぎて忘れてたことを改めて指摘されました。「BLUE FLAME」でわかりやすく個々の見せ場があるのはその影響ですね。

イメージを橋渡しするのが僕の仕事

──歌詞のテーマは「失恋」ですよね。

 そうですね。終わった恋愛への未練や後悔があるんですけど、それがすごく熱く燃えてくすぶってるっていう内容です。冷たいように見えて実は温度が高い、っていう意味で「BLUE FLAME(青い炎)」っていうタイトルにしました。

──ああ、炎は赤より青のほうが温度が高いんですよね。将さんはどうやって歌詞を考えるんですか?

 曲を聴いたときに自分が感じたイメージや風景、情景に対して、じゃあなんでこういう景色が見えるんだろうっていうところから紐解いていって歌詞にします。聴く人が楽曲のイメージをその人なりに描きやすいように橋渡しするのが、僕の仕事だと思ってます。

よりライブをリアルにするために必要なことだった

──通常盤の3曲目「G3」は初期曲「極彩極色極道歌<G3>」のリメイクですね。最近のバンドの方向性を考えるとダークでヘビーなこの曲は異色に感じたんですが、今になってもう一度レコーディングしたのはなぜですか?

沙我 この曲は2004年にリリースして以来、ほぼ毎回ライブでやってるけどほとんどハズしたことがない曲なんです。でも、バンドって成長するとともに音も変わってくるじゃないですか。時間が経つにつれてAlice Nineとこの曲の間にギャップが開いてしまって、日本武道館のライブでもアンコールにしかもう置き場がなかったんです。それももったいないなと思って。とはいえ、過去の作品に手を付けるのって、思い入れがある人にとっては全然うれしくないこともありますよね……。

──そこのハードルは高いですよね。オリジナルと聴き比べるとバンドの進化がより明確になるので、僕は楽しめましたけど。

 ちょっと笑いが起きるぐらいの違いがありますよね(笑)。

ヒロト(G)

沙我 「なるべく変え過ぎちゃいけない」って気をつけてたんですけど、結局すべてが変わっちゃった。

──こうやって一度リメイクがうまくいくと、あの曲もこの曲も作り直したい、ってことにはなりませんか?

ヒロト でも基本的にライブありきなんで、リメイクしたいのはライブで演奏してる曲だけですね。リメイクすることで僕らがより気持ちを込められる曲になれば、今までより強いライブができると思って。

 これはファンとアーティスト側の意思を疎通しやすくする作業なんだと思います。よりライブをリアルにするために必要なことなので、自分たちが盛り上がるからってだけで作り直すようなことは絶対にしたくないですね。ちなみに今年は過去曲のリメイクをシリーズとしてやっていきたいなと思ってるので、また次も期待してください。

ニューシングル「BLUE FLAME」 / 2011年6月8日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ

  • 初回限定盤A[CD+DVD] / 1890円 / TKCA-73648 / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤B[CD+DVD] / 1890円 / TKCA-73649 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1260円 / TKCA-73653 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. BLUE FLAME
  2. 残響ホワイトアウト
  3. G3(※通常盤のみ)
DVD収録曲(初回限定盤A)
  1. BLUE FLAME (MUSIC CLIP)
  2. MUSIC CLIP MAKING
DVD収録曲(初回限定盤B)
  1. BLUE FLAME (MUSIC CLIP) (another edition)
Alice Nine Live 2011 "7th THEATER"

2011年9月9日(金)
東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
チケット一般発売:2011年8月6日(土)
前売 5250円 / 当日 5775円

Alice Nine(ありすないん)

2004年結成のヴィジュアル系バンド。将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)の5人からなる。所属事務所はthe GazettE等が所属するPS COMPANY。ポップで華やかなパフォーマンスは国内に留まらず世界的に高い人気を誇る。サウンド面ではデビュー当初の和情緒にこだわった作風からロック的な壮大さをもつものへと進化を遂げ、表現の幅を広げている。バンド名表記は2009年より「アリス九號.」から「Alice Nine」に統一。2011年には初の日本武道館ワンマンライブを成功させ、最高傑作との呼び声が高いアルバム「GEMINI」、そしてシングル「BLUE FLAME」を発表した。