ナタリー PowerPush - a flood of circle
フロントマン佐々木亮介が明かす 激動の5年とバンドの現在地
お互いに「バンドになるな」って感じた
──しかし、「ZOOMANITY」が会心の出来だっただけに歯がゆいですよね。バンドのサウンドがどんどんアグレッシブにソリッドに研ぎ澄まされているにもかかわらず、こういう事態になってしまうのが。バンドって難しいなというか。
そうですねぇ。毎年固め直さないといけない悩みは正直ありますよね。
──で、石井さんの脱退と同時に新メンバーであるHISAYOさんの加入が発表されました。これは素早い決断でしたね。
石井の脱退は避けられないものだったから、割とすぐに「じゃあ、ツアーどうしようか?」とか、そういう前向きな話になりました。変な言い方ですけど、失踪のときとは全然違いますよね。腰を据えて話し合えたので、彼の気持ちもよくわかった。状況的にはバタバタしてるように見えたかもしれないんですが、バンドとしてはけっこう肝が座ってきたというか。石井が辞めるとわかったところで、逆にツアーを全力でやろうと思ったし、メンバーを探すのも早かったですね。
──ツアーをやりながらメンバーを探していたんですか?
はい。HISAYOさんに話をしたのが10月のうちですからね。当然バンドを止めたくなかったから、ベースを入れなきゃダメだっていう話はすぐにしてました。ツアーが始まってすぐの頃に、「女性のベーシストがかっこいいんじゃないか」って話してて。どうせメンバーが変わるんだったら、バンドとしての持ち味をもっと広げるチャンスがあるんじゃないかって頭を切り替えたんです。そうでもしないと、不安だったのもあって。HISAYOさんは昔GHEEEと対バンしたから知ってたし、すぐに名前が挙がって連絡しました。
──急展開ですね。
びっくりしたのが、その翌日か翌々日かくらいにHISAYOさんにたまたまばったり駅で会ったんですよ(笑)。俺そういうの無駄に大事にするタイプで、不思議なシンパシーを感じるというか。ギターとかもそんなふうに出会ってないと買わないし。HISAYOさんも同じようなことを言ってて。そのときに、お互いに「バンドになるな」って思いました。
──ギタリストと同じく、ベーシストもサポートで、という考え方はなかったですか?
バンドの最低限の形として、ギター、ベース、ドラムがあると思ってて。ここで俺たちが2人になって、THE WHITE STRIPESになるのはちょっと違うなって。HISAYOさんがすぐにバンドになじめたのも大きいですね。アーティスト写真を撮ったときに、3人のバランスも良かったし。
僕らのアイデンティティは失踪や脱退じゃない
──HISAYOさんがメンバーになった一番の決め手は?
何よりの決め手は人間性ですね。気持ちが熱い人なのも大きい。ミュージシャンとしても先輩だし、俺がこうしたいああしたいっていうサウンドのアイデアを後押ししてくれるタイプなんです。最初にスタジオに入ったときに、まず「フェルディナン・グリフォン・サーカス」っていう曲を合わせたんですけど、1回でもう「いけるね」ってみんなで言い合ってて(笑)。一発OKでしたね。2010年の12月24日に新しい編成での最初のライブを新宿LOFTでやったときも、お客さんの反応を含めて手応えがありました。
──HISAYOさんって、ほかのバンドも掛け持ちされていてとても忙しいと思うんですが、そんな中でも正式メンバーでやるということは、a flood of circleのバンド感覚をこれから共有していけるという確信がメンバー全員にあったんだろうなって。
今の時点ですでにかなり共有できてると思います。新曲もすごく自信のあるものができてますし。スケジュールの調整はもちろん大変ですけど、それがバンドにとってマイナスになることはないですね。
──今回こういう決断ができたのは、これまでのドタバタを乗り越えて精神的に強くなっているからこそなんですかね。
そうかもしれないですね。でも、悔しいポイントが本当に多いんですよ。失踪や脱退をバンドのアイデンティティみたいに言われるのもね。「じゃあ、俺のやってきた音楽はなんだったんだ?」って思っちゃう。だから、今年は絶対に自分の表現でバンドのアイデンティティを証明したいです。
CD収録曲
- ブラックバード
- 博士の異常な愛情
- 泥水のメロディー
- シーガル
- Miss X DAY
- Ghost
- ロシナンテ
- エレクトリック ストーン
- Buffalo Dance
- Quiz Show
- Human License
- Sweet Home Battle Field
- Chameleon Baby
- Blood Red Shoes
- Hide & Seek Blues
- 水の泡
- ノック
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)
2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリース。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。