a flood of circle佐々木亮介×LiSA|ロックに魅せられ、我が道を突き進む2人の相思相愛対談

a flood of circleのニューアルバム「花降る空に不滅の歌を」が2月15日にリリースされた。

a flood of circleにとって通算12枚目のフルアルバムとなる本作には、佐々木亮介(Vo, G)が自身の名前を歌詞に刻んだ「月夜の道を俺が行く」を筆頭に、フラッド流のロックナンバー10曲を収録。ジャケットイラストを佐々木とかねてから交流のある画家・奈良美智が描き下ろしたことでも話題を呼んでいる。

a flood of circleのみならずTHE KEBABSのフロントマンとして活躍するとともに、ソロライブも行い、さらに昨年は旧知の仲であるLiSAのアルバム「LANDER」に「シャンプーソング」を提供するなど精力的に音楽活動を展開している佐々木。音楽ナタリーではその根源を探るべく、佐々木とLiSAによる対談を企画した。ライブでの共演経験を持ち、10年来の付き合いでありながら、本格的な対談は初めてという2人。その口から飛び出したのは、ロックミュージシャンとしての矜持と金言の数々だった。

取材・文 / 中野明子撮影 / 大川晋児

LiSA、a flood of circleを聴いて衝撃を受ける

佐々木亮介(a flood of circle) こうやって対談するのは初めてだよね?

LiSA 初めてですね。

佐々木 出会ったのはいつだっけ……これがフワッとしていて、記憶がそれぞれ違うんだよな。

LiSA 私はゴールデン街で初めて会ったと記憶してて。「I'M FREE」(2013年7月発売のアルバム)を完成したばかりのタイミングで聴かせてもらったんです。

左から佐々木亮介(a flood of circle)、LiSA。

左から佐々木亮介(a flood of circle)、LiSA。

佐々木 2013年かな? 10年くらい前だから記憶が曖昧だな。

LiSA 私がデビューしたくらいの時期でしたよ。

佐々木 え、そうなの? そのときにはすでにLiSAちゃんは人気者なイメージだったけど。

LiSA そんなことないですよ。初めてゴールデン街で会ったときの私を忘れてません?(笑)

佐々木 いやいや! 田淵さん(UNISON SQUARE GARDENの田淵智也)も一緒にいて。そこにLiSAちゃんが来たはずと話すと、田淵さんは「絶対にそれは違う」って否定するんだけど。

LiSA 一緒にいたはずの3人の記憶がそれぞれ違う(笑)。

佐々木 俺にLiSAちゃんのことを教えてくれたのが田淵さんなのは間違いないですけどね。田淵さんはLiSAちゃんにa flood of circleのことも勧めてくれて、それがきっかけで野音のライブに来てくれたんだよね。

LiSA そうです。田淵先輩が連れて行ってくれないから自力で行きましたもん(笑)。a flood of circleを初めて聴いた瞬間、子供の頃にBLANKEY JET CITYを聴いたときのことを思い出して。ロックを声やサウンド以外でも表現している人に出会った衝撃。ロックを象徴するアーティストに出会った感覚でした。

佐々木 俺、LiSAちゃんがもともとバンドをやっていたのを知らなくて、田淵さんが曲を書いてるアーティストとして出会ったけど、この人はバンドサウンドやロックが好きなんだろうなというのは感じてた。なんとなく自分と似てそうだなと思ったし。

LiSA そんなふうに思ってもらえてたんだ。今初めて知りました。

佐々木亮介(a flood of circle)

佐々木亮介(a flood of circle)

LiSA

LiSA

LiSAという“生き物”になっていた「LANDER」

佐々木 田淵さんとTHE KEBABSを始めたタイミングで、LiSAちゃんにも声をかけてスタジオに入る機会があったんだけど、その頃は俺からしたら遠いところで歌ってる人で。でも一緒にスタジオに入ったとき、「マジで声がすごいな」と感動したし、あれでミュージシャンとしてグッと近付けた気がしたんだよね。当時はオリジナル曲もなかったから、EGO-WRAPPIN'の曲をカバーして。狭いスタジオでベースやドラムが爆音で鳴ってるのに、LiSAちゃんの声はスコーンって抜けててびっくりした。埋もれないというか。声そのものがすごい存在感を放ってて、一緒に歌いたくない!と思ったな(笑)。

LiSA 私はどちらかと言うとものすごく準備をしてから歌うモードに入っていくんですけど、THE KEBABSのメンバーはフラっとスタジオにやってきて、いきなり音をバーンと出していて。それだけでカッコいいんですよ。だから私の入る隙がないよ!みたいに思ってました。

LiSA

LiSA

佐々木 そうなんだ。2019年にはTHE KEBABSの初ライブに出てくれて(参照:THE KEBABS、新曲だらけの初ライブは予測不可能な展開に)。俺ら的には伝説になったけど、LiSAちゃんの黒歴史になってなければいいな……。

LiSA めちゃめちゃ楽しかったですよ! 普段、LiSAとして1人で歌うときはちょっと緊張するから。THE KEBABSだと緊張してないわけじゃないですよ?(笑)

佐々木 いやしてないでしょ! でも、1人のときは背負ってるものがいっぱいあるというのはわかるな。

LiSA 私の名前が付いているものだから、自分で全部ケアしなきゃという感覚になるのに対し、THE KEBABSは後輩でいられる場所だった。先輩たちが作ってくれた場所に自分が乱入して、歌わせてもらえる。それに音を鳴らしているだけでカッコいい先輩たちだから、自分が何をやったって壊れるものはないと思ったんです。バンドを始めたときの感覚というか、純粋に音楽って楽しいと思うことができたし、ただただ幸せな時間でした。それと「女の私が入っても大丈夫かな? ちょっとよそ者だしな」と思ってしまうところ、THE KEBABSのメンバーも、佐々木さんも性別関係なく「一緒にやろうよ」って仲間に入れてくれたんですよね。

佐々木 確かに男だからとか、女だからみたいなことは考えてないかもしれない。

LiSA 私、地元でバンドをやっているときに周りが男性ばかりで。その頃の岐阜ってハードコアとかヴィジュアル系が強くて、あんまり私が入っていけるムードではなかった。「女がロックなんて」みたいな。「スカート履いてても足あげますけど!?」と思ってたけど、そのシーンには混ぜてもらえないし、女性ボーカルだと同じような女性ボーカルのバンドとしか対バンできない。

佐々木 ガールズバンドって言葉があるくらいだしね。じゃあ俺はボーイズバンドか?って話だし、そもそもガールズを付ける必要ないよね。

佐々木亮介(a flood of circle)

佐々木亮介(a flood of circle)

LiSA ハードロックとかパンクをやってるのに、違うジャンルのバンドと対バンせざるを得ないからお客さんに「何この人たち」みたいに見られちゃって。女性であることに対するコンプレックスもあったから、佐々木さんたちが受け入れてくれたのがうれしかった。

佐々木 そうかあ……でもLiSAちゃん、「LANDER」のアートワークで宇宙人っぽいすごくカッコいいビジュアルになってたじゃない? あれが性別とかすべてを超越している感じだった。LiSAという“生き物”になっているというか。戦い続けて、自分の居場所を勝ち取ってきたのが表現されていて感動しましたね。