ナタリー PowerPush - a flood of circle

フロントマン佐々木亮介が明かす 激動の5年とバンドの現在地

2011年で結成5周年を迎えたロックバンド、a flood of circle。その道のりは出だしこそ順風満帆に見えたものの、この2年間はメンバーの失踪や脱退という事件もあり、まさに試練の連続だった。しかしながら、彼らはそれでも活動を止めるどころか、攻めの姿勢を崩さず、逆境を糧に苦難を鮮やかに乗り越えてきた。

そんな彼らが、初の試みとなるミックスCD「AFOC THE MIX」をリリース。ミックスを手がけるのは、人気イベント「Getting Better」を主催するDJの片平実だ。バンドメンバーの変遷、そして5周年記念のミックスCDについて、フロントマンである佐々木亮介(Vo, G)に話を訊いた。

取材・文/田山雄士

今も友達として連絡してきてほしいと思ってる

──前回のナタリーでのインタビューは2ndアルバム「PARADOX PARADE」のリリース前のタイミングで、かなり赤裸々に語っていただいてましたよね。

そうそう、わりとインパクトがあったみたいで(笑)。思い出深いインタビューですね。

──ちなみにこのタイミングでお伺いするのも恐縮なんですけど、失踪してしまった元メンバーの岡庭さんとはまだ直接連絡が取れていないんですか?

取れてないですね……。俺の連絡先は変わってないから、彼が連絡してくれるのを待つしかないんですよね。失踪したときに彼の連絡先がわからなくなっちゃった状態なので。

ライブ写真

──状況的には当時のままですが、気持ちは振っ切ることができましたか?

バンドにおいての彼との関係は正直振っ切れてます。逆に言うと、友達レベルのところで連絡してきてほしいなという気持ちはあるんですけどね。

──その後、サポートギタリストとしてwash?の奥村大さん、現在はtalk to meの曽根巧さんが参加していますよね。ギタリストに関して、今後のプランはあるんですか?

今の形が気に入ってるから、すぐに何かということはないです。曽根さんに対しての信頼感もすごくありますしね。

お涙頂戴にしたくなくて事後報告にした

──そして、2010年10月にはベースの石井さんの脱退がありました。

はい。あいつ、全国ツアーが始まる前日(10月14日)に言いやがったんですよ(笑)。

──あ、初日の直前だったんですか!

ライブ写真

そう。3rdアルバム「ZOOMANITY」のツアー初日が10月15日の千葉LOOKで、その前日の昼にポンと電話で言われたんです。さすがに「電話でそんなこと言うんじゃない!」って呼び出して。

──佐々木さんと渡邊さんにとっては突然の出来事だったんですか?

そうです。ちょっと前までは「何十万円のベースを買う」とかそういう話を普通にしてたので、ビックリはしましたね。俺はその日の夜にDJをやる予定があって、楽しく飲むはずだったんですけど、そのイベントが始まる前に言われて。非常に不穏な気持ちでDJをしに行きました……(苦笑)。

──それはキツいですね。

イベントが終わったあとに「翌日のライブやるのか」とか「ツアーやれるのか」とか、そういう話し合いを朝方までみんなでしました。でも、石井と話した内容は相談されたというよりは事後報告というか。辞める気持ちが固まっていて、とても引き止めようがなかったんですよね。

──話を聞くかぎり、もうその日のうちに受け止めざるを得なかったと。具体的には石井さんの手首の腱鞘炎が原因だったんですよね?

そうなんですけど、あくまで1つのきっかけですよね。腱鞘炎をきっかけに、彼にとってバンドってなんなのかということを考えたらしくて。だから、腱鞘炎を治してどうこうしようっていう感じでもなかったというか。気持ちが切り替わっちゃったみたいなんです。一番大きかったのは音楽そのものを続ける意志がないということ。それは動かしがたいことでしたね。

──石井さんの最後のステージは12月14日の新代田FEVERでのライブだったわけですが、その場では脱退に関しての発表は特になかったんですよね?

しませんでしたね。お涙頂戴みたいなことだけはやりたくないっていうのが、俺らにも石井にもお互いにあったんです。お客さんには完全な事後報告で申し訳なかったんですけど、「最後」って言うとそのライブが音楽じゃないものになっちゃう気がしたんです。それは自分たちがやってきたことや作ってきたものに対して失礼だろうと。その意味では石井がいる最後のライブもビシっとやれたし、ツアーも充実したものになりました。

ニューアルバム「AFOC THE MIX」 / 2011年6月22日発売 / 1555円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63749

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CD収録曲
  1. ブラックバード
  2. 博士の異常な愛情
  3. 泥水のメロディー
  4. シーガル
  5. Miss X DAY
  6. Ghost
  7. ロシナンテ
  8. エレクトリック ストーン
  9. Buffalo Dance
  10. Quiz Show
  11. Human License
  12. Sweet Home Battle Field
  13. Chameleon Baby
  14. Blood Red Shoes
  15. Hide & Seek Blues
  16. 水の泡
  17. ノック
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)

2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリース。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。