ナタリー PowerPush - a flood of circle
フロントマン佐々木亮介が明かす 激動の5年とバンドの現在地
ノンストップだから味わえる心地良さ
──リスナーとしては、最近はどんなものを聴かれているんですか?
イギリスの若いバンドでTHE VACCINESとか。2000年代以降のバンドって正直大学のときはまったく興味なくて、THE STROKESの魅力とか全然わからなかったんですよね。その頃はジャズやブルースばかりを聴いてました。ちゃんといろいろ聴くようになったのは自分がメジャーデビューして以降かな。あとは古いのばかりですかね。マジック・サムのライブ盤はいまだにめちゃくちゃ聴いてます。今度、バディ・ガイが来日するのも楽しみです。
──へぇぇ、面白いですね! そんな佐々木さんが思うこのミックスCDの聴きどころは?
曲がつながっているからこその心地良さですかね。片平さんもそこはこだわってたし、全然違うテンポの曲同士でもパズルみたいにがっちりハマる瞬間があるっておっしゃってました。それはミックスCDならではの楽しさですよね。あとはa flood of circleを知らない人が聴いても、5年間を一望できるところとか。逆に俺らをよく知ってる人ほど、新鮮に聴こえる部分もあると思います。
──本当に聴きやすい1枚になっていますよね。
オリジナルアルバムだと当然曲間があるから、その都度気持ちが整理されますよね。だけど、今回は全部がノンストップでつながってて本当にツルッと聴ける。それがすごく楽しいと思うし、ドキドキしてもらえたらいいですね。その感覚でツアーにも遊びに来てほしい。ミックスCDのノリをライブにつなげたいです。
震災後歌いたくなった「I LOVE YOU」の思い
──「AFOC THE MIX」の発売後のツアーがまた独特ですよね。同日に発売される「Getting Better」の15周年記念ミックスCD「Getting Roll」のリリースも記念した合同レコ発ツアーですが、特に楽しみにしてることはありますか?
まずは対バン。すごくいいメンツだし、今年一番ロックなモードでできるんじゃないかな。しっかりと主張があるバンドばかりですから。あとは片平さんのDJも場つなぎ的じゃなくて、ニュアンスとしてはほとんど対バンなんです。片平さんとも勝負だから、そのへんも楽しみですね。
──この半年、新たなメンバーでやってきて、今のコンディションはいかがですか?
良くなってきた感じです。ライブに関してはまだ詰めてるところもあるんですけど、今年4月にワンマンを1発やってからだいぶ変わりました。やっぱり経験上ツアーを一度回るのが大事だと思ってるので、次のツアーをこなすことでもっと精度が上がるんじゃないですかね。
──次のビジョンは見えてきているんですか?
このミックスCDを楽しんでもらったあとに、言いたい言葉はもう見つかってて。今レコーディングをしてるところなんですけど、「I LOVE YOU」っていう新曲を作ったんです。俺が今ロックンロールバンドに一番言ってほしい言葉は「I LOVE YOU」なんですよね。3月11日に地震が起きたじゃないですか。それを境に、元々言ってたことが変わっちゃったらロックンロールバンドとしてもちろんダメですけど、起きたことを無視するのもやっぱり不自然だと思うんです。
──震災が自分に与えた影響はやはり大きかったですか?
そのときの感情が新曲のきっかけにはなってますよね。震災が起きて、みんながそれぞれの立場で何もできないって痛感したはずなんですよ。俺もそうだったから、自分が言えることを探してた。それが「I LOVE YOU」という言葉を導いたんだと思います。パーソナルな意味でも言いたいし、ライブでお客さんにも言いたい。何かを感じてもらえたらいいなっていう言葉なんですよね。
──何もできないっていうのは確かにありましたね。
震災後しばらくはそう考えてしまったけど、自分たちにとって自然な形でできることがあるならそれをすればいいんじゃないかっていう話をメンバーとしたんですよ。その1つの答えとして、今回のミックスCDの売り上げもメンバーに入る印税はすべて寄付することにして。
──それは素晴らしいことですね。次なる新曲も早く聴いてみたいです。
秋頃には発表したいです。ミックスCDに入ってる「Blood Red Shoes」もそうなんですけど、サウンドとしてはすごくストレートで。ブルースを更新していく気持ちがありつつ、今年は特にストレートな表現をしたい。「Hide & Seek Blues」も思いっきりブルースだし。そのモードの最たるものが見せられるんじゃないかと思います。
CD収録曲
- ブラックバード
- 博士の異常な愛情
- 泥水のメロディー
- シーガル
- Miss X DAY
- Ghost
- ロシナンテ
- エレクトリック ストーン
- Buffalo Dance
- Quiz Show
- Human License
- Sweet Home Battle Field
- Chameleon Baby
- Blood Red Shoes
- Hide & Seek Blues
- 水の泡
- ノック
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)
2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリース。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。