ナタリー PowerPush - a flood of circle

フロントマン佐々木亮介が明かす 激動の5年とバンドの現在地

バンド結成5周年を新しい形で出したかった

──では、新作のミックスCD「AFOC THE MIX」についてお伺いしたいんですが、このリリースはそもそもどういう経緯で?

ライブ写真

まず、バンドの5周年に何かやりたいなという気持ちがありました。あとは失踪や脱退があった俺たちなりに、今が一番落ち着いてやれてるので、ここで一発けじめを付けたいなと。だけど、単純にベストアルバムを作るのはなんか違うと思ったんですよね。ここまでバンドは転がり続けてきたし、ブルースを更新してきたことに関しては自信があったから、5周年で何かをまとめて出すんだったら新しくなってる形がいいなって。

──そこで、片平実さんが手がけるミックスCDというアイデアが。

そうなんです。ミックスCDって、ロックバンドはほとんどやってないですから。片平さんもこれまで悔しい思いとかを味わいながらも15年間イベントやDJをやり続けてきた人だから、僕らに近いところがあって、ミックスCDをやるなら片平さんというのは直結してましたね。片平さんも俺と一緒ですごく暗くて、どうしようもない人なんです(笑)。でも、そのどうしようもなさをロックで踊ったり暴れたりしてるうちにポジティブに変換できる。「だから、ロックはすごいんだ」っていうのが、彼のメッセージの1つだと俺は思ってます。

──共感する部分が多いんですね。ということは、バンドの側から片平さんに依頼をして。

そうです。俺はすべての事情を説明しちゃいたくなる性格なので、今こういう気持ちでこうしたいから片平さんがいいんですよって言ったら、「みなまで言うな」とおっしゃってくれて(笑)。

──選曲は片平さんですか?

はい。ミックスCDに入る曲はなんとなく自分たちでイメージしてたんですが、そんなときに片平さんから送られてきたリストがもうバッチリでした。その流れのままで、そこに新曲を入れた感じですね。オープニングが「ブラックバード」であることも意味があると思いました。

──「ブラックバード」はバンドの原点で、最初にできた曲ですもんね。

「みなまで言うな」ってこういうことかって。彼は飲みに誘ってくれる数少ない人だし、いろいろ話してますしね。岡庭が失踪してしまったときのライブでもDJしてくれてますし。自分たちをそばで見てる人だけに、わかってくれてる選曲でした。

面白い曲がいっぱいあるなって

──通して聴くと、片平さんのメッセージが伝わってきますよね。次の世界を開こうとする思いが表れた「ノック」で終わるのもグッときました。バンドの生き急いでいる感じも出てますし。

よく言われるんですけど、何を生き急いでるんでしょうね。中学生くらいの頃から言われてる(笑)。やれるときに全部やってしまいたい性格なのかも。

──こういう形で自分たちの楽曲をまとめて聴いてみて、いかがですか?

ライブ写真

バンドの歴史を振り返ってどうこうというのはないですけど、曲に関しては面白い曲がいっぱいできてるんだなって思いました。それと同時に、自分が歌ってきたブルースをまだ更新できるなという気持ちにもなったし。新曲が後半に出てくるストーリーも好きです。

──新曲やCD未発表曲を入れちゃうのも大胆ですよね。配信リリースしていた「Sweet Home Battle Field」はTHE WHITE STRIPES色全開で、振り切れていて好きです。

全開ですね(笑)。メンバーが変わって最初にできた曲で、「自分に甘えてるんじゃない」という意味で書いた、戦うための曲なんです。バトルフィールドこそ、今は自分のスイートホームだっていう。

──例えば、「Human License」のギターにはTHE STROKESっぽさがありますし、a flood of circleの音楽はブルースがキーワードにありつつも、サウンドとしてはとても自由ですよね。

ブルースって元々とても自由なものだったし、当時は当時でパクリ合いみたいなものだったんじゃないかと。パクるって言うと言葉が悪いかもしれないですけど、結局そういうことだと思うんですよね。影響を受けて、それが自分の形になるのが一番いい。そんなのは俺らの曲にもたくさんありますよ。だからそういう部分を知って、笑ってほしいですね。

──影響源がわかると、うれしくなりますしね。

新曲の「Hide & Seek Blues」ももろにマディ・ウォーターズなので、本当はそういうところを笑ってほしいんです。

ニューアルバム「AFOC THE MIX」 / 2011年6月22日発売 / 1555円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63749

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CD収録曲
  1. ブラックバード
  2. 博士の異常な愛情
  3. 泥水のメロディー
  4. シーガル
  5. Miss X DAY
  6. Ghost
  7. ロシナンテ
  8. エレクトリック ストーン
  9. Buffalo Dance
  10. Quiz Show
  11. Human License
  12. Sweet Home Battle Field
  13. Chameleon Baby
  14. Blood Red Shoes
  15. Hide & Seek Blues
  16. 水の泡
  17. ノック
a flood of circle(あふらっどおぶさーくる)

2006年に結成。メンバーは佐々木亮介(Vo, G)、HISAYO(B)、渡邊一丘(Dr)の3名。ブルースや70年代ロックをベースにしたフリーキーなサウンド、ボーカル佐々木の強烈な歌声と、観る者を圧倒するライブパフォーマンスで話題を集める。結成当初は下北沢・渋谷界隈を中心にライブを行い、次第に活動地域を拡大。2007年7月に初音源となるミニアルバム「a flood of circle」をリリース。同時期に新人バンドの登竜門「FUJI ROCK FESTIVAL '07」のROOKIE A GO-GOステージに出演し反響を呼ぶ。2009年4月、1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューを果たすが、全国ツアー中の7月に当時在籍していたギタリストが失踪。しかしバンドは活動を止めることなくライブを継続し、同年11月にアルバム「PARADOX PARADE」を発表。2010年12月より現在の体制で活動している。