auの動画配信サービス・ビデオパスではバラエティ豊かな映画やアニメ、ドラマなどを配信している。今回、「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~」と「この世界の片隅に」の配信開始を記念して映画ナタリーで特集を展開。「この秋観たいアニメ!」と題して2作品のほかに「河童のクゥと夏休み」、テレビアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「四畳半神話大系」の魅力を紹介する。
特集ではアニメ好きとして知られる女優・武田玲奈、新聞や情報番組でアニメを紹介しているお笑い芸人・サンキュータツオ(米粒写経)の対談をセッティング。レクチャー形式で、タツオから武田に5作品の見どころやアニメの新しい楽しみ方を伝授してもらった。
取材・文 / 伊東弘剛 撮影 / 佐藤友昭
ヘアメイク(武田玲奈) / 円谷歩美 スタイリスト(武田玲奈) / 徳永貴士
小学生の頃から普及活動していた(武田)
──武田さんがアニメを好きになったきっかけから教えてください。
武田玲奈 従姉が「涼宮ハルヒの憂鬱」が好きで、その影響でアニメに関心を持ちました。そのあと自分でも調べていくうちに「けいおん!」に出会って、一気にハマりました。
サンキュータツオ 1期は2009年放送だから小学生のときかな? 萌え萌えした絵柄だと思うんだけど、そこに抵抗はなかった?
武田 抵抗は感じなかったです。キャラクターを中心にすごい好きになりました。
タツオ なるほど……誰が好きか聞いておこうか。大事な問題なんでね(笑)。
武田 大事なんですね(笑)。私、王道が好きなんです。だから主人公の(平沢)唯ちゃん。あとあずにゃん(中野梓)も。ゆいあずが大好き。
タツオ いいね、専門用語出てきちゃった(笑)。当時アニメのことを話せる友達はいたの?
武田 「けいおん!」はわりと学校の中で流行ってました。私がハマってから私の周りの友達もハマって、たくさんの友達にオススメしていましたね。小学生の頃から普及活動してました。
タツオ いい時代だ。僕が小学生の頃は、親以前に友達にアニメ好きだと言うこともはばかられましたね。受難の時代でした。隠れキリシタンみたいな気分でしたね。
武田 そうなんですか!? 私、今も普及活動してるんですけど、昔はそんなに大変だったんですね。
タツオ 「けいおん!」はオリコンのCDランキングにもガンガン入っていたし、「ラブライブ!」は紅白にも出たし、アニメが市民権を得て、武田さんみたいな若い女の子がそれに反応してくれているのがうれしいです。
武田 「ラブライブ!」も大好きです。
タツオ 今、講師として大学でいろんな国の生徒に日本語を教えているんですけど、8割はオタクなんですよ。アニメが好きで日本に留学してきた人も多くて、話を聞くとアニメで日本語を覚えたと答えるんです。だから「けいおん!」や「ラブライブ!」が好きってことは世界に通用するってことなんですよ!
武田 (笑)。世界中に普及していきたいです!
最終回が見えている日常系(タツオ)
──では「この世界の片隅に」から魅力をお教えいただけますか?
タツオ 「けいおん!」が好きってことは、日常系アニメに魅力を感じてるってこと?
武田 はい。かわいい女の子が出てくるほのぼのした作品が好きです。「けいおん!」とか、「たまこまーけっと」といった京都アニメーションの作品が特に。
タツオ なるほど。「この世界の片隅に」は戦中戦後が舞台の作品で、観ていない人には堅めのイメージがあるかなと思うんですが、アニメファンから見れば大いなる日常系アニメなんですよ。
武田 そうなんですか!? まだ観れてないんですけど、堅い映画なんだと思っていました。
タツオ 戦争中の広島を描いていて、第2次大戦中に広島で起こったことは全国民が知っていて、みんな結果はわかってる。でもこの作品は原爆の脅威であったり、投下後の悲惨な状況を描くことよりも、投下前に広島で生きていた人がいて、その人たちにも日常があったことを描いてるんです。
武田 戦中戦後の日常が描かれてるんですね。
タツオ 記録映画や過去の劇映画でも、原爆投下のあとばかりにフォーカスが当てられてきた中で、どういう生活をしていて、どういうことで一喜一憂していたかという日常が徹底的に調べられ丁寧に描かれている。主人公のすずさんが料理を作るだけのシーンもけっこうあって、僕はもう料理アニメとすら思っています。堅苦しくなく観れて、アニメファンとしては「ああこのまま原爆落ちずに日常系アニメとして終わってくれねえかな」と願っちゃう。それを狙って作られている。
武田 「けいおん!」にも進級や卒業といったタイムリミットが設定されていますよね。
タツオ そう。「この世界の片隅に」でも、観客は1945年8月6日に何が起きたか知っている。最終回が見えている日常系。面白いと言ったら不謹慎にとられることもあるかもしれないけど、僕は面白いと言ってもいいと思う。アニメファンはもっと「すずさん萌えたわ」って言って大丈夫。あと恋愛模様もいいんですよ。この当時は好きな人と結婚する人が別というのも普通で、少女マンガのようにも楽しめます。
武田 観てみたくなりました!
タツオ 100年残る名作なのでぜひ。戦争を経験した人が少なくなってきて、その悲惨さというのをイメージできない人も多い中で、とっつきやすいこの作品の意義は大きいと思う。
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劇場アニメは声の情報を抑えたほうが感情が乗る(タツオ)
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- 「この世界の片隅に」
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- 解説
- こうの史代の同名マンガを原作にした劇場アニメーション。第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、絵を描くことと空想が好きな少女・すずが、大切なものを失いながらも前を向いて生きていく姿を描き出す。「アリーテ姫」「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直が監督を務め、女優・のんがすずの声を演じた。第40回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞している。
- スタッフ / キャスト
- 監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
キャスト:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、岩井七世、潘めぐみ
©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
- 武田玲奈(タケダレナ)
- 1997年7月27日、福島県生まれ。2013年「Ameba Candy Collection 第2のくみっきー!発掘オーディション」でグランプリを獲得し、ファッション雑誌・Popteenのレギュラーモデルとして芸能活動を開始。2015年「映画 暗殺教室」で女優デビューを飾る。2015年に公開された「ハロウィンナイトメア2」で初主演を務め、2016年公開の「ONE PIECE FILM GOLD」で声優に挑戦。2017年は「TOKYO CITY GIRL」「咲-Saki-」「ラストコップ THE MOVIE」などに出演し、「ポエトリーエンジェル」「パパのお弁当は世界一」、ドラマ「マジで航海してます。」で主演を務めた。現在、出演するドラマ「植木等とのぼせもん」が放送中。
- サンキュータツオ
- 1976年6月21日生まれ、東京都出身。居島一平とのコンビ・米粒写経でツッコミを担当。米粒写経として多数のステージに立つほか、ラジオ番組「イマドキ用語の基礎知識」でMCを務める。読売新聞で連載中のコラム「サンキュータツオのただアニ!」、情報番組「ZIP!」のコーナーなどでアニメ作品を紹介。一橋大学、 成城大学、早稲田大学で非常勤講師を務め、日本語や笑いを教えている。5月に珍論文を解説した「もっとヘンな論文」が発売。ユーロライブを会場にした「渋谷らくご」を毎月主催している。
2017年10月16日更新