コミックナタリー PowerPush - はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA」

プロデューサー東村アキコ、激賞! ヅカオタマンガの誕生と魅力語る師弟対談

私自身のことをネタ帳に書いたことは1回もないです(はるな)

──「ZUCCA×ZUCA」に出てくるヅカオタははるなさん自身の姿なんですか?

はるな いや私、自分がどうなってるかってわからないんですよ。だから自分の経験を描いたことってほとんどなくて。周りの人を見て共感して、その気持ちになってみて描けるって感じですね。

「ZUCCA×ZUCA」5巻より。

東村 周りに自分よりも濃い人が100人くらいいるから、それで十分事足りるんだよね。この絵を見てもわかるとおり、はるなちゃんは作家として、自分が自分がっていうタイプじゃないんですよ。それが私とかとすごい違うところなんですけど、客観的に周りを描いてくタイプ。マンガの中のヅカオタも淡々と狂ってるんですよね。それがすごくいいと思ってて。

はるな 友達とかに聞いたことを全部、ネタ帳みたいのにメモするんですけど、私自身のことをメモに書いたことは1回もないですから。

東村 それが読んでてうざくない理由だと思う。

はるな 自分で描いてる気がしないんですよね。先生と担当さんにプロデュースしていただいて、友達からネタをもらって。私はなんですかね、ただ手を動かす人みたいな。

東村 イタコみたいなね。だから「私のことが描いてある」って反応がいちばん多いんじゃないかな。

はるな それはすごいびっくりしたんですよ。共感してくれる人がひとりでもいるなんて夢にも思ってなくて。

──宝塚ファンだけじゃなく、いろんな分野のマニアが共感できるはず、という狙いはなかったんですね。

はるな あるがままに描いただけなので。いただいたネタをそのまま描けば、勝手にあるあるになるのかもしれないですね。読者のみなさんからもネタいただいてますし、もう本当に感謝してもしきれません。

このマンガで気分を害されたりしないように、気を遣ってますので(はるな)

──では最後に、そんな読者の方々にメッセージをいただけますか。

はるな  「ZUCCA×ZUCA」を読んでくださってるみなさま、いつも本当にありがとうございます。できるだけ退屈されたり気分を害されたりしないようにと思って描いておりますので、暇つぶしにでも手にしていただければ嬉しいです。

──「楽しんでほしい」とか「自信作です」とかおっしゃる方はいても、「気分を害したりしないでほしい」っていうマンガ家さんはなかなかいないですよ。目標低すぎませんか(笑)。

東村 低い低い。「俺が手塚の後を継ぐ!」とか言ってる奴らに聞かせてやりたいですね。

はるな でも本当にそれだけです。例えばこのマンガの中で、誰かスターさんをちょっとだけ軽んじたりとかして、そのスターさんのファンが傷ついたりしたら嫌だな、とかはすごい思うので。

東村 気はすごい遣って描いてるからね。あと宝塚に興味がない人も1回読んでみてほしいですね。何かにハマったことがあろうがなかろうが、読み物としてすごい面白いし完成度が高いので。絵もかわいいし。

──宝塚のみなさんの反応はあるんですか?

東村 知り合いのジェンヌさんとか結構読んでますね。今のところ肯定的。本人はビビリながら描いてるけど、ジェンヌさんたちはうれしいみたいよ、やっぱり。

「ZUCCA×ZUCA」1巻より。

はるな (ひらめいたように)あ、これを読んで、みなさんに宝塚を好きになってほしいです……!

──それがいちばんの目標ですか(笑)。

はるな それはすごいあります。それですね。それに尽きます。できればもっと男性とかにも観てほしいですし、劇場に足を運んでほしいです。

東村 本当にこのマンガの意義はそこかもね。不景気で厳しいからね、どこも。

はるな このマンガを読んで宝塚を好きになってもらえたりしたら。

東村 本望だよね。

はるな 本望ですね。

はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA」5巻 / 2013年4月23日発売 / 990円 / 講談社
「ZUCCA×ZUCA」5巻

業界初!? ヅカオタ(宝塚オタク)漫画!!
何かにハマったことのある方にはおススメです。
あーーある、アル、aruのオンパレード!
レッツ・エンジョイ・ヅッカヅカ!

はるな檸檬(はるなれもん)
はるな檸檬

1983年3月23日宮崎県生まれ。2005年より東村アキコのアシスタントを務め、東村のすすめで鑑賞したことから宝塚歌劇団にのめり込む。その後東村の助言を受け、宝塚歌劇団マニアを題材にしたコメディ「ZUCCA×ZUCA」で2010年にデビュー。モーニング(講談社)の公式サイトで連載中。

東村アキコ(ひがしむらあきこ)
東村アキコ

1975年10月15日宮崎県生まれ。1999年、ぶ~けDX NEW YEAR増刊(集英社)にて「フルーツこうもり」でデビュー。2001年、Cookie(集英社)で「きせかえユカちゃん」の連載を開始。ファッショナブルな登場キャラクターとライブ感のある話作りで人気を集める。2006年、モーニング(講談社)にて自身がデビューするまでの様子を家族のエピソードとともに描いた「ひまわりっ~健一レジェンド~」の連載を開始。その他代表作に「ママはテンパリスト」「主に泣いてます」など。Kiss(講談社)にて連載中の「海月姫」は、第34回講談社漫画賞を受賞した。また、ナタリーのマスコットキャラクター「ナタリー信子」と「マシュー」は同氏による描き下ろしである。