コミックナタリー Power Push - 福井あしび「マコトの王者」

真逆の2人、人格が入れ替わってしまったら? 両視点で描く同時進行ボクシングストーリー!

藤田一門の流れを引き継いでいきたい

──ストーリー制作はどういう風に進めるんですか?

まず編集さん2人と僕の3人で打ち合わせをします。基本的に要点さえ押さえていたら、あとは自由にやらせてくれるので、僕の打ち合わせは短いですよ。15分くらい。

──短いですね!

原稿はコマ単位、さらにはキャラと背景で分担して描き、切り貼りして完成させる。

残りの時間は好きな武将の話とかしてます(笑)。で、その打ち合わせをした後に担当さんと2人でスケジュールを管理して。ストーリーとかで迷ってるときは電話したり。

──例えば、どういうことを迷うんですか?

いっぱいありますよ! 編集さんが写真を撮ってきてくれたとはいえ、高級マンションとか最初はまったく想像できなかったですし、高級料亭やスイートルームなんか行ったこともないですもん。ほかにも造花を作ってるシーンの作画直前に高橋留美子先生の「境界のRINNE」で造花を作ってるシーンを見つけてしまって。慌てて担当さんに「どうしよう、かぶってしまった! 別の内職に変えよう」って電話したら、「大丈夫、造花っていうのは留美子先生が作ったものじゃないから」って言われたり(笑)。

──些細なことでも気になってしまうんですね。

もうあのときは「謝りにいかなあかん!」と思いました……。「あかん、造花パクってしもた」って(笑)。

福井のデスク。作画には主にミリペンを使用しているとのこと。

──ところで先生が「マコトの王者」で一番描きたいことって、ズバリ言うと何ですか?

(しばらく考えて)「世の中に悪人はいない」ということですかね。入れ替わりモノだったらそれをキチッと伝えられるんじゃないかな。中身が入れ替わる前では気が付かない別の顔を見せることができる。天堂のトレーナーである町村は、天堂誠を慕っていることを「青」で敵意やなく嫌悪で本人に暴露します。嫌悪の裏側には誰かに対する愛情がある、っていうのを描ければ「世の中に悪人はいない」ってことになるんやないかと。

──2つの側面を描く同時連載だからこそできることですね。

「2つの視点からアプローチできるから1人のキャラクターの2つの側面を見せられる」っていうところを最大限活かしていくつもりです。あと僕はキャラクターが成長していくドラマが大好きなんです。イジメられっ子が強くなったり、冷酷なヤツの心が溶けて優しくなれる瞬間っていうのが、もうたまんないんです。師匠の雷句誠先生や、大師匠にあたる藤田和日郎先生もキャラクターが成長する人間ドラマを熱く描いているので、なんとかその流れを受け継ぎたいと思っています。

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福井あしび『マコトの王者(赤)』(1) / 2010年1月12日発売 / 460円(税込) / 小学館 / ゲッサン少年サンデーコミックス / ISBN:978-4-09-122097-4

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福井あしび『マコトの王者(青)』(1) / 2010年1月12日発売 / 460円(税込) / 小学館 / ゲッサン少年サンデーコミックス / ISBN:978-4-09-122097-4

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あらすじ

無敗の絶対王者、天堂誠。名門の家系に生まれながら、拳一つの道を選んだ男。豪腕の野性児、大地真。幼い妹たちを養いながら、極貧の生活から這い上がった男。
2人のマコトが生き残りと運命をかけた世界タイトルマッチ。死闘の果てに、立ち上がったのは大地真。しかし、両者はその中身が入れ替わってしまい……!?
「マコトの王者」の称号を懸けた宿命の対決、ボクサーズ・クロスロード開幕!!

福井あしび(ふくいあしび)

プロフィール写真

8月22日生まれ。血液型A型。男。2005年、小学館新人コミック大賞で入選。翌2006年、週刊少年サンデー8号(小学館)に、「護って騎士」が掲載。以降も次々と読切を発表してきた。2009年、ゲッサン創刊号より「マコトの王者」にて連載デビュー。