WORLD ~Change The Sky~|不条理に満ちた世界を演劇で変える

話せば話すほど熱い演出家・菅野臣太朗に寄せる信頼

──4人の中で唯一、田中さんは「WORLD」に出演経験がありますが、前作のカンパニーはどんな雰囲気だったんですか?

田中稔彦

田中 みんなで座長を支えながら共に作り上げていった良いカンパニーでした。一番記憶に残っているエピソードが、(菅野)臣太朗さんからの長いダメ出しで。2時間の通し稽古のあと、1時間を超えるダメ出しがあったんですが、ほぼ僕に対してのダメ出しだったんですよ(笑)。前回に続いて、今回もキャストには“お茶目で芝居に対して熱いおじさん”が多いので、良い現場になると思います。

校條 僕はけっこう人見知りで、相手が年上の役者さんだと特に恐縮してしまうんですが、どうすればいいですかね?

田中 芝居が好きな気の良い人ばかりだから、恐縮せずとも大丈夫だと思うよ!

小笠原健

小笠原 今はコロナ禍で飲みに行けないのは大きいよね。飲み会で先輩たちから演劇の話を聞くということができないのはさみしい。

校條 貴重なコミュニケーションの場ですもんね。

杉江 稽古するたび、1人ひとりに「どう思いましたか?」って聞いて回ろうかな(笑)。

小笠原 あははは! 感染対策は徹底しつつ、できるだけ稽古場でコミュニケーションを取っていくしかないよね。

田中 臣太朗さんは積極的にコミュニケーションを取る方なので、とても信頼できる演出家です。ただ、顔合わせにはサングラスをかけてくるかもしれない(笑)。

校條 攻めてますね(笑)。この間、菅野さんに初めてお会いしたとき、僕の雰囲気を見て「脚本を少し変えるかも」とおっしゃっていて、脚本を大切にしつつ、役者のことをすごく見てくださる方だなと思いました。

杉江 臣太朗さんは話せば話すほど熱くて、演劇が本当に好きなんだなと感じます。「WORLD」は、特に思い入れが強い作品だと思うので、稽古場でたくさん対話していきたいですね。

田中 正解が明確に見えている演出家なので、僕たち役者で臣太朗さんの想像を超えていけたら、よりクリエイティブな稽古になると思います。

それぞれが“Change(変化)”させたいことは?

──今作の副題が「~Change The Sky~」ということで、皆さんが今“Change(変化)”させたいことがあれば教えてください

田中 僕は食生活を変えたいですね。パンが大好きなんですけど、いつも食べ過ぎてしまうので……小麦をカットするグルテンフリー生活を始めて今日で2日目なんですよ。

小笠原 2日目かい!(笑)

田中 (杉江の手元に置いてあったパンを見ながら)だからこれは目に毒なんです(笑)。

杉江 (パンを手に持ちチラつかせる)

小笠原 ソイプロテインを食事の前に飲むと食事量も減るし、健康にも良いよ。

田中 なるほどね。

校條拳太朗

校條 僕もたまたまなんですけど、食生活を変えたいと思っています。

杉江小笠原 おー!

田中 奇遇だね。

校條 いつもUber Eatsを使ってしまったり、自炊をほとんどしてこなかったんですが、健康について調べているうちに「身体に気を遣わないとな」という意識になってきまして。玄米や身体に良いものを食べて自衛していかないとなと……2日前に決意しました。

小笠原 2日前かい!(笑)

杉江 僕は最近ずっと思ってるんですが、“印象”を変えたいですね。

一同 (笑)。

杉江大志

杉江 今までは「ヤンチャだけど、芝居には一生懸命」みたいな、“プラマイ、ギリギリ0”でやってきたけど、そろそろ「落ち着いてきたね」とか「芝居が磨かれてきたね」とか、そういう大人な印象に“Change”させていくのが目標です。

小笠原 大志、期待してるよ。僕は健康体ではあるんですが、ケガをしやすいんですね。昨年は右膝靭帯を痛めてしまい、今年は左足の甲にヒビが入りまして、自分でも「どんなポンコツやねん!」と思っています。

杉江 変えなきゃならないのは“意識”じゃないですか?

小笠原 そうなんだよね。注意力が足りなくてさ……俺、前しか見てないから。

杉江 カッコ良くまとめた(笑)。

小笠原 あとはやっぱりコロナ禍でみんなが苦しんでいる世の中を、1日でも早くいつも通りの日常に“Change”させたいですよね。

不条理に満ちた世界を演劇で変える

──本作の公式サイトには「舞台芸術葛藤の時期。こんなだからこそ、ご観劇いただき何かを感じて欲しい」というメッセージが記されています。コロナ禍は舞台業界にも大きな影響を及ぼしていますが、皆さんは今回、改めてどのような思いで舞台に立たれるのでしょう?

左から田中稔彦、校條拳太朗、杉江大志、小笠原健。

小笠原 舞台ってそもそもチケット代が高いじゃないですか? それでも一生懸命がんばって働いて「観たい」と言って来てくださるお客さんがいっぱいいて、もしかしたらその方たちも今コロナ禍で仕事を失っていたりするかもしれない。そうやって考え出すと負のスパイラルが止まらないんですが、僕らは舞台芸術家として、誰に観せても恥ずかしくないものを作らなければならない。お客さんに「良いものを観たな」と言ってもらえる作品にしたいです。

田中 そうだね。「舞台を観たい」と思ってくださるお客さんには、今まで通り良い作品を届けたいですし、コロナ禍で舞台から離れてしまったお客さんにも、再び劇場に戻って来ていただけるよう、プロとして誠心誠意仕事をしなきゃいけないなと思います。

杉江 僕も昨年から悔しい思いはたくさんありましたが、表に立つ仕事だからこそ、常に前向きでありたいなと考えてきました。こんな状況だからこそ、お客さんの人生を切り開けるような作品を届けたい。「WORLD」は、ヘビーな内容だからこそ覚悟を持って演じたいですし、お客さんと共に作り上げ、感謝と恩返しをしたいです。

校條 コロナ禍の影響で多くの公演が中止・延期になりましたし、稽古をしてきて、いざ本番という段階になってから、お客さんを入れられなくなるということがあって、いろいろなことが当たり前ではなくなりました。今回もまずは全員無事で幕を開けて、カーテンコールでお客さんの姿を見られたらいいなと思います。こんな時期だからこそ、不条理にあふれた世界を変えようと奮闘する人たちの姿を見届けてほしいです。

金山一彦&菅野臣太朗が語る「WORLD ~Change The Sky~」

ここでは、2013年に初演された「WORLD」、2016年の「WORLD ~beyond the destiny~」に続き、「WORLD ~Change The Sky~」で3度目の国立周蔵役を演じる金山一彦、そして「WORLD」の生みの親であり、育ての親でもある菅野臣太朗が今作を語る。

金山一彦扮する国立周蔵。

国立周蔵役 金山一彦

Q1. 「WORLD」シリーズとして3度目の上演となる「~Change The Sky~」への意気込みは?

まだ稽古が始まっていないのでどうなるかわかりませんが、一新したキャストの皆さんと新しい「WORLD」を作り上げていくことを楽しみにしています。

Q2. 3度目の国立周蔵役に挑まれるお気持ちは?

僕が国立周蔵と出会ったのは、2013年の暑くなり始めた季節だったと記憶しています。
その後2016年。そして今年2021年。
光も見えない暗いトンネル中を、ただただ強い信念を持って突き進んで行く国立周蔵。
僕はそういう生き方に一種の“憧れ”を感じます。
5年ぶり3度目、国立周蔵に再会し、一体となります。

Q3. 今、“Change(変化)”させたいことは?

昨年より世界中でコロナが蔓延しており世界は一変しました。
マスクは常着、店に入るときには手の消毒など。
以前と同じように戻れないのでは……と思っております。
これからも新しいウイルスがやってくるかもしれません。
だから“意識の変化(Change)”でしょうね。
人間や動物、この世に生きているすべての生物は状況に応じて変化します。
そういう大きな意味でも“Change”のときだと思っています。

金山一彦(カナヤマカズヒコ)
1967年、大阪府生まれ。映画「シャコタン☆ブギ」「稲村ジェーン」や、テレビドラマ「おヒマなら来てよネ!」、特撮ドラマ「仮面ライダーキバ」、NHK大河ドラマ「翔ぶが如く」「琉球の風」「龍馬伝」「江〜姫たちの戦国〜」といった映像作品に多数出演。映画「無頼平野」「新・悲しきヒットマン」の演技で第17回ヨコハマ映画祭 助演男優賞を受賞。近年の出演作に映画「Fukushima 50」、映画「BOLT」、映画「空蝉の森」などがある。
菅野臣太朗

脚本・演出 菅野臣太朗

Q1. 「WORLD」シリーズとして3度目の上演となる「~Change The Sky~」。2021年版ならではの魅力は?

2020年初頭から世界の価値観が大きく変わったうえで、
「日本とはどんな国なのか?」
「日本人とはどんな民族なのか?」
ということを改めて調べ、感じたことを踏まえて、頭からすべてを書き直しました。
今作の最大の魅力は、
【我が国・日本をもっと知りたくなる作品】
であることです。

Q2. 「目を背けてはいけない、我々日本人の物語」を、約5年ぶりとなる今回、どのような気持ちで立ち上げますか?

2021年を生きているすべての日本人に伝えたいこと、共有したいことを書きました。
そして、
「個人」として生きるのか?
「日本人」として生きるのか?
それをお客さんに問うような想いで創作しようと思います。

Q3. 今、“Change(変化)”させたいことは?

日本人の“愛国心”です。

菅野臣太朗(スガノシンタロウ)
1974年、長野県生まれ。1999年にエンゲキユニット ヰタ・マキニカリスを旗揚げ。13作品を上演し、2003年の「パルテノン多摩演劇フェスティバル」では準優勝を果たす。同ユニットを2004年に活動休止し、以降、ミュージカル「忍たま乱太郎」シリーズ、舞台「アンフェアな月」シリーズなど、脚本・演出家として数多くの作品を手がける。また「東京ゲームショー」(SEGAブース、バンダイナムコブース)、「次世代ワールドホビーフェア」(SEGAブース)などの企業展示会、「THE IDOLM@STER SHINY COLORS LIVE」ほかアイドルグループのホールコンサート、東京・池袋サンシャイン水族館のアシカショーといったイベントショーの演出も担当。2020年4月にオンラインで演劇を配信する劇団Focus(前身は劇団Zooooom!)を結成した。