節目ごと上演されてきた「マドモアゼル・モーツァルト」を、今
──2026年は「マドモアゼル・モーツァルト」の上演が予定されています。本作は福山庸治のマンガを原作としたミュージカルで、1991年に初演。女性が作曲家になれなかった18世紀のヨーロッパを舞台に、人並み外れた才能を持つエリーザが、男性作曲家モーツァルトとして生きることになり、葛藤する様が描かれます。音楽座ミュージカルで本作が上演されるのは、2008年以来18年ぶりとなります。今回の上演では、町田市民ホールから始まって、大阪は梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、愛知はNiterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール、広島はJMSアステールプラザ 大ホール、最後は東京のIMM THEATERと、各地をツアーします。
相川 「マドモアゼル・モーツァルト」は、先代の相川レイ子が好きな作品だったんじゃないかなと思っていて。台本を読んでも先代を感じる瞬間が一番多いし、生き様や選ぶ言葉がリアルに“レイ子”なんですよ。うちも解散や復活などいろいろなことがありましたが、その中で「マドモアゼル・モーツァルト」の位置付けは重要なところがあって、オープニングベルではありませんが、何か新しいフェーズに入るとき、無意識にこの作品を選んできたところがあります。なので、先代のオーナーが亡くなって10年、音楽座ミュージカルが再来年で40周年というこのタイミングで「マドモアゼル・モーツァルト」をやるのは、私たちのある種の区切りと、新しい音楽座ミュージカルの始まりというメッセージにもなるのかなとは思います。
──お二人は「マドモアゼル・モーツァルト」に対してどんな印象がありますか?
森 私は、孤独な作品だなと思いました。人や世界は、どこまで行ってもすべてをわかり合えることはなく、1人ひとりがものすごい孤独の中にあるんだけれども、それでもこの世界に生きることを選んでいる……そんな強さを感じさせる作品だなと思っています。
小林 僕はこの作品には関わったことがまだないのですが、台本や映像を見させていただいて、「めちゃめちゃ音楽座ミュージカルだな!」と思いました。劇中では、手を取り合いながら必死に物作りをする登場人物たちが描かれますが、その強さが音楽座ミュージカルが持つ強さとそのまま重なるなと思いますし、周囲からは天才と言われつつも、普通の人たちと同じように葛藤を抱えるモーツァルトの生き方や、それを支える人たちの姿に音楽座ミュージカルらしさを感じました。先ほどお話にもありましたが、音楽座は再来年が40周年で、僕もちょうど40歳で、音楽座と同い年なんですけど(笑)、今のこの音楽座ミュージカルのメンバーでやるのに「マドモアゼル・モーツァルト」はふさわしいんじゃないかなと思います。
──モーツァルトの楽曲のほか、小室哲哉さんの楽曲や、音楽座ミュージカルに欠かせない高田浩さんの音楽などが使用されることも人気の本作。今回の上演では音楽監督を高田さん、振付を「リトルプリンス」に続きKAORIaliveさんが手がけられます。
相川 1991年初演ですから作品としては古い作品で、当時“世の中に出てきた新しい存在”として小室哲哉さんが楽曲を手がけ、注目されました。そこから35年経ち、2026年の今、同じ楽曲で上演する意味は何かということは、今回重要なポイントになってくるんじゃないかなとは思っています。その点については、稽古がまだ始まっていないのでこれから深められれば。KAORIaliveさんは、自分にはすごく相性が良くて、さらけ出し、考えを擦り合わせながらやりとりできるというか。「マドモアゼル・モーツァルト」で、KAORIaliveさんと今度はどんな化学変化が起きるのか、すごく楽しみです。
──最後に、皆さんが2026年をどんな1年にしたいと思っていらっしゃるか、教えてください。
森 私はゴリゴリに挑戦していく年にしたいなと思っています! 「音楽座として、私たちはこうありたい」ということに自信を持って、胸を張って表に出ていきたいなと思っていて、「音楽座のこと、知らないんじゃないかな」とか「オリジナルミュージカルってよくわからないんじゃないかな」と臆さず、自信を持って挑戦していきたいと思います。
小林 僕は、音楽座ミュージカルが大好きなんです。なので、もっと強いカンパニーにしていきたいなと思っています。いろいろな意味で、本当にたくましく、厳しく、強いカンパニーにしたいなって。それは1人ではできないことかもしれないし、でもそれぞれにも強さが必要だし。上演する劇場もこれまでより大きくなりますし、若いメンバーも入ってきますし、昔からいるメンバーも大事にしつつ、強固な音楽座ミュージカルをより発信していきたいなと思っています。
相川 2人が言ってくれた通りですが、本当に40年劇団を続けるのって、なかなか大変なことだなと実感しています。続けるには仲間も必要だし、オリジナルミュージカルということを強く発信していくことも大事だし……。2026年は新作も控えているので、まずは「マドモアゼル・モーツァルト」にしっかり向き合いたいと思っています。
プロフィール
相川タロー(アイカワタロー)
音楽座ミュージカル代表。1973年、東京都生まれ。脚本・演出家。大手ゲーム会社でゲームデザイナーとして活動後、2016年に音楽座ミュージカル代表に就任。2026年春に「マドモアゼル・モーツァルト」、秋に新作を予定している。
森彩香(モリサヤカ)
広島県生まれ。大阪芸術大学卒業後の2016年に音楽座に入団。すぐに「リトルプリンス」の王子役に抜擢され、その後「グッバイマイダーリン★」「とってもゴースト」「ホーム」「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」「SUNDAY(サンデイ)」「7dolls」「ラブ・レター」などに出演。声優としても活動している。
小林啓也(コバヤシケイヤ)
東京都生まれ。劇団青年座研究所卒業後、2009年から音楽座に参加し、2010年に入団。「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」「とってもゴースト」「リトルプリンス」「7dolls」「SUNDAY(サンデイ)」「ホーム」などに出演している。




