“未知の山南敬助”と出会う新作、輝馬・樋口裕太・星元裕月が語る「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」

「ミュージカル『薄桜鬼』」(以下薄ミュ)といえば、桜舞い散る中で、主軸となるキャラクターが刀を構えるキービジュアルを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。しかし、最新作「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」のキービジュアルは少々趣向が異なり、しとしとと雨が降る中、輝馬扮する山南敬助が静かに微笑みながら佇んでいる。

「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」のタイトルロールを務める輝馬、薄ミュの元気印として作品を支える藤堂平助役の樋口裕太、薄ミュシリーズ初出演となる南雲薫役の星元裕月は、「山南敬助 篇」をどのように捉えているのか? 普段から親交が深く仲の良い3人に、作品に対する思いをざっくばらんに語ってもらった。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 川野結李歌ヘアメイク / 城本麻紀スタイリスト / [輝馬、樋口裕太]MASAYA

今までと同じ気持ちで舞台に立ちたい

──輝馬さんは「ミュージカル『薄桜鬼』黎明録」(2015年)から薄ミュシリーズに参加され、このたび「山南敬助 篇」でタイトルロールを務めます。演出・脚本・作詞を手がける西田大輔さんも山南敬助がお気に入りのキャラクターだそうで、薄ミュ10周年インタビューで山南敬助への思いを語っていました(参照:ミュージカル『薄桜鬼 真改』斎藤一 篇 2022年4月より東京・関西にて上演決定)。

輝馬 そうなんですね! ありがとうございます。昨年行われた「ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE 3」(参照:いいか逃げるなよ、盛り上がらねぇ奴らは斬る!「HAKU-MYU LIVE 3」スタート)の千秋楽で「山南敬助 篇」上演決定について発表させていただいたんですけど、会場でお客様の生の反応を感じることができて率直にうれしかったですね。今まで薄ミュの主演を務めてきた方々の名に恥じぬよう、がんばっていきたいなと思っています。

──これまでは物語を支えるポジションとして山南を演じてこられましたが、今回は主演として舞台の真ん中に立ちます。ポジションが変わると、役との対峙の仕方も変わるものなのでしょうか?

輝馬 「山南敬助 篇」というタイトルを付けていただいたので、もちろん責任を持って臨みますが、座長だから、主演だからという取り組み方はせず、今までと同じ気持ちで舞台に立ちたいと思います。今まで舞台では描かれてこなかった、僕が知らない山南敬助に出会えると思うので、そこを1つひとつ丁寧に表現していきたいですね。

輝馬

輝馬

──樋口さんは「ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇」(2018年)(参照:「薄ミュ」名称が「薄桜鬼 志譚」に、和田雅成&中河内雅貴のキービジュアル公開)から藤堂平助役を務めています。

樋口裕太 薄ミュに参加したばかりの頃は、先輩方が積み上げてきたものを壊さずに作品を作っていかなければと、とにかく必死でしたね。平助は自分が決めたことを曲げずに、真っすぐ突き進むキャラクター。人間としてカッコいいし、すごく憧れます。あとは、男心をくすぐるような中二病っぽいところも持ち合わせているなって(笑)。

輝馬 中二病!(笑) 平助は「薄桜鬼」の登場人物の中でも感情豊かなキャラクターだよね。

樋口 そうですね。平助は喜怒哀楽を相手にわかりやすく伝えるタイプなので、演じていて楽しいし、やりがいがあります。

──南雲薫役の星元さんは今回が薄ミュ初参加となります。以前インタビューで、演劇業界に足を踏み入れたきっかけが薄ミュだったとおっしゃっていましたね。

星元裕月 そうですね。あのとき薄ミュを観ていなかったら、演劇に触れることがないまま過ごしていたかもしれません。原作の「薄桜鬼」が大好きだという気持ちや、ずっと憧れていた薄ミュに出演できる喜びはもちろんあるのですが、それ以上に今は、1人の表現者として南雲薫という役をどういうふうに成立させるか、ということに気持ちが向いていて。

輝馬 ……しっかりしてるよ、ゆづ(星元)は。

星元 本当? ありがとうございます(笑)。

樋口 しっかり者になったなあ……。

星元 そんな感慨深い顔しないで! 恥ずかしい!

──皆さん、とても仲良しで微笑ましいです。

星元 2人共、本当に良いお兄ちゃんなんです。普段から仲良くさせてもらっているんですけど、3人で共演するのは今回が初めてなのですごく楽しみですね。

星元裕月

星元裕月

樋口 ゆづ、稽古に入ったら一緒に筋トレしような!

星元 筋トレはいいや(笑)。

樋口 じゃあ輝馬くん、今回こそ一緒に筋トレしましょう!

輝馬 いやだよ!

樋口 いつも(筋トレをやっている)俺の横を素通りして行くじゃないですか。今回は絶対参加してもらいますからね!

輝馬 いやだ!(笑) ゆづ、俺と一緒にストレッチしような。

星元 うん(笑)。

俳優をやる気にさせる西田マジック

──星元さんが演じる南雲薫は、本公演では「ミュージカル『薄桜鬼』沖田総司 篇」(2013年)以来、ライブ公演を含めると「ミュージカル『薄桜鬼』HAKU-MYU LIVE」(2014年)以来、ひさびさの登場となります。今回、どのようなことを意識して役を立ち上げていきたいと考えていますか?

星元 たぶん、お客様1人ひとりにとっての“薫像”があると思うんです。ファンの方全員に対して正解を出すことは難しいかもしれないけれど、ほかの誰篇でもなく、「山南敬助 篇」における唯一無二の薫を、今回ご一緒するキャストの方々と作り上げられたら良いなって。自分がこれまでやってきたやり方で、フラットかつアグレッシブに、役と向き合っていきたいなと思います。

──今、キャラクターに関する解釈のお話が出ましたが、原作ものの舞台に出演するうえで、役作りの指針はどのように決めているのでしょうか?

樋口 僕が一番大事にしているのは、原作をリスペクトしつつ、舞台でやる意味について考えることですね。お客さんが思い描いているものに、「このキャラクターってこういうこともするんだ!」という驚きを加えることによって、作品自体をもっともっと楽しんでもらえたら良いなと思いながら役作りをしています。

樋口裕太

樋口裕太

輝馬 作品によっても臨み方が変わるよね。大人の話になりますけど、権利元の判断もありますし……。

樋口 輝馬くん、大人の話すぎるって!(笑)

一同 ははは!

輝馬 それで言うと、西田さんは本当に自由にやらせてくれる方。「人が舞台に立っている理由は、人それぞれで良いじゃないか」という考えを持っているので、「カッコよければ良いよ!」と言ってくださるんです。

──樋口さんは薄ミュをはじめ、そのほかの作品でも西田さんとご一緒されています。樋口さんから見て西田さんはどのような演出家ですか?

樋口 西田さんは自然とついて行きたくなる方ですね。自信がない人を勇気付けてくれますし、僕たち俳優をやる気にさせる魔法をかけてくれるんですよ。

──以前、斎藤一役の橋本祥平さんが「西田さんは海賊の船長みたいな方」とおっしゃっていたのですが(参照:祝!薄ミュ10周年、同級生の橋本祥平&北村健人コンビが決意語る)、新たに魔法使いが追加されましたね(笑)。また星元さんは、西田さんが演出した舞台「Sin of Sleeping Snow」(2016年)でデビューし、その後西田さんとプライベートでも親交が深いと伺いました。

星元 西田さんは「自分が責任を持つからついて来て」というふうに、みんなを引っ張って行ってくれる人。それって誰しもができることではないですからね。そのパワーがみんなを惹き付けてやまないんじゃないかと思います。