「TRUMPシリーズ」が新境地!音楽と物語が“快楽”へといざなうミュージカル「キルバーン」、和田俊輔が語る (2/2)

和田俊輔が語るミュージカル「キルバーン」の音楽

長年、「TRUMPシリーズ」の楽曲を手がける作曲家の和田俊輔が、自身の視点から「TRUMPシリーズ」の楽曲について、そしてミュージカル「キルバーン」での創作を振り返る。

和田俊輔

和田俊輔

ミュージカル「キルバーン」における作曲は“爆音大喜利”

──“ヒャッハーミュージカル”と銘打たれたミュージカル「キルバーン」の楽曲制作では、どのようなことを意識して創作されましたか?

ミュージカルのジャンルに“ヒャッハー”と銘打たれたこと。最初にそれを知ったときは心底感動しました。末満さん、天才すぎます!

この“ヒャッハー”という言葉の響きから、これでもかというほどのパワーをもらい、全27曲が生まれました。これまでの「TRUMPシリーズ」ではあり得なかったことなので、それだけでも全く新しい音楽制作の体験となりました。

では“ヒャッハー”とは何なのか、どういう意図や意味があるのか。

……実は、わかっていません(笑)。いや、あえて言葉に言い換える必要はない、そう思っていました。

料理に例えるなら、未知のスパイスをいただいたようなものです。レシピへの使い方や匙加減はわからないけれど、とにかくあらゆる要素を“ヒャッハー味”に染め上げていく。そんな未知のキーワードを起点に音楽を書き進めたのが、今回の制作だったと思います。

ミュージカル「キルバーン」より。

ミュージカル「キルバーン」より。

──ミュージカル「キルバーン」でご自身が気に特に入っている楽曲は何ですか?

「血の花嫁」です。
自分の中からこのメロディが溢れてきたときはゾッとし、同時に静かに興奮しました。

「キルバーン」における作曲は、語弊を恐れずに言えば“爆音大喜利”でした。いかに楽しく、飽きさせず、TRUMPの世界に身を委ねながら“爆音”のバリエーションを提示し続けられるか。そんな闘いでもありました。

「血の花嫁」は、その道中の15曲目に書いた曲です。「もうこれ以上は爆音曲を書けない……!」と限界を感じていたところに、“まだおれがいるよ……?”と顔を覗かせてきたのがこの曲でした。15年もの間、「TRUMPシリーズ」を書き続けてきた中で蓄積された“呪い”のようなものが、この歪で激しく、そして愛らしいメロディを生んだのかもしれません。

──「TRUMPシリーズ」では初演より、末満健一(作・演出)さんの美学が貫かれていますが、音楽面でこのシリーズの大きな特徴(個性)となっているものは何だと思いますか?

あくまで僕個人の視点ですが、「TRUMPシリーズ」における心象や事象のすべては、末満健一さんの“心の深淵”そのものだと捉えています。

末満さんが見て、感じているもの。それを音に昇華すること自体が、このシリーズにおける音楽の美学であり矜持です。とはいえ、15年以上書き続けていてもいまだに深淵の底は見えません。「まだ辿り着けない、いや、少しは近づけたかな?」という自問自答を繰り返す中で、今も新しい音楽が生まれています。

ミュージカル「キルバーン」より。

ミュージカル「キルバーン」より。

──和田さんは、長年「TRUMPシリーズ」に関わられていますが、ご自身にとって、音楽面で「TRUMPシリーズ」の転機となった作品はありますか?

2015年に再演された「TRUMP」です。(編集注:2015年、NAPPOS UNITED企画・製作公演)
この公演で、それまでの「TRUMP」に代わる新しいメインテーマを書くことになり、そうして生まれた曲が「輪廻夜想」でした。

嘘のような本当の話ですが、これは夢の中で書いた曲なんです。朝目覚めて、覚えている限りのメロディをピアノで書き起こし、そのままの勢いで一気にアレンジまで仕上げました。サビの高揚感と歪さが入り混じったメロディラインも、特徴的な変拍子も、すべて夢の中で鳴っていたものでした。

後にも先にもこんな体験はありませんが、この曲が生まれたことで、「TRUMPシリーズ」特有の“幻想と現実の間に位置する音楽”の輪郭を、ようやく掴めた気がしています。

──ミュージカル「キルバーン」が改めて、パッケージ版としてファンに届けられます。また、音楽配信もされるということで楽曲を含め、作品をどのように楽しんでほしいですか?

ほとんどの曲を“一筆書き”で書き上げました。最初の一音が頭に鳴った瞬間から、最高速度で突っ走って生まれた曲たちです。

こんなやんちゃな楽曲たちを、じっと座ったまま聴くのは少しもったいないかもしれません。パッケージでも配信でも、ぜひ家の中でノリノリになって、この最高な喧騒を楽しんでもらえたら嬉しいです!

ミュージカル「キルバーン」より。

ミュージカル「キルバーン」より。

プロフィール

和田俊輔(ワダシュンスケ)

1978年、愛媛県生まれ。作曲家・編曲家・キーボーディスト。近畿大学在学中に独学で作曲を学び、音楽活動を開始。舞台のみならず、ドラマ・映像作品・アーティストへの楽曲提供など、活動は多岐に渡る。手がけた主な作品に、「ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」」「舞台『鬼滅の刃』」「僕のヒーローアカデミア The Ultra Stage」「ミュージカル『刀剣乱舞』」「ミュージカル『黒執事』」「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」、舞台「賭ケグルイ」など。2021年にOTO.LIKOを立ち上げ、ボーカルレッスンスクールの運営を開始。新良エツ子の音楽ユニット、妄想ミュージカル楽団・てらりすとのコンポーザーを務めるほか、2024年に末満健一と繭期幻想樂団、2026年にウォーリー木下Studio Wを結成。5月にStudio W vol.1 リーディングミュージカル「時計のこども Child of Time」、5・6月に「ミュージカル『忍たま乱太郎』第16弾 タソガレドキで忍者修行!」、7月にミュージカル「町田くんの世界」が上演される。