“つながる演劇祭”から“ひろがる演劇祭”へ、板尾創路・3時のヒロイン福田麻貴が語る「関西演劇祭2024」 (2/2)

演劇に呼ばれ、引っ張られる感覚

──板尾さんは「関西演劇祭」のフェスティバル・ディレクターを務める傍ら、俳優としても活動中で、現在は京都の人気劇団・ヨーロッパ企画の「来てけつかるべき新世界」(参照:人間とテクノロジーの摩擦と融和の果てがここに、「来てけつかるべき新世界」スタート)に出演されています。フェスティバル・ディレクターを務めたことで、演劇に対する見方や取り組み方が変わったと感じる点はありますか?

板尾 「関西演劇祭」だけがきっかけということもないんですけれども、フェスティバル・ディレクターをやるようになってから、なんとなく“演劇のほうに呼ばれ、引っ張られている感覚”がありますね。今まであまり考えることはなかったんですけど、最近、「なんで人はみんな、お芝居が好きなんやろ?」ということを考えるようになって。演劇って、ほかのメディアと違って、その空間にいないと“つかまえることができない”。なんだか、景色と似ているなと思って。映像や写真を通して景色を見ても感動するのかもしれませんが、実際にその場所へ行って体感しないとわからないことがある。その日の天候や気温、自分のメンタルの在り方によっても受け取り方が変わるし、演じる側もその日のコンディションによってパフォーマンスが変わる。よく“演劇はなまもの“と言いますが、自然と同じで、その都度その都度変わっていくものなんじゃないかな。演劇の面白さを知るには、とにかく観に来ていただくしかない。その第一歩として、これからも長く「関西演劇祭」を続けていくことが大事やと思うんです。

板尾創路

板尾創路

──一方の福田さんも、2024年に放送されたテレビドラマ「婚活1000本ノック」でドラマ初主演を務め、婚活に励む小説家・南綾子役を自然体な演技で立ち上げました。福田さんは普段から演技することやお芝居を観ることに興味はありますか?

福田 好きですね! お芝居はよく観に行きますよ。また、自分がドラマに出させていただくようになってから、「ああ、自分って実は演じることが好きやったんやな」と思うようになりました。二十代の頃は演技というものがどういうものなのかよくわかっていなかったんですけど、三十代に入ってから、少し違う見え方をしてきたところがあります。もともとネタを書いて演出する側でしたが、ドラマでお芝居の経験をさせていただいてからは、「コントでの演技はこう見せたいから、こういうふうに演じてもらいたい」というような欲求が出てきました。

福田麻貴(3時のヒロイン)

福田麻貴(3時のヒロイン)

──板尾さんはいかがでしょう?

板尾 おそらく好きやと思います。自分の本名というのはいわゆる芸名のようなもので、人間は親に名前を付けてもらったときから、自然と“自分”を演じるようになっているんじゃないかなと。子供も親に対して演技することがあるし、皆さんも学校や職場に行ったら、素の自分とは違う自分を演じていますよね。みんな、立場によって異なる演技をしながら生きている。人間は本能的に“演技をしたい”という欲求があるんだと思います。だから演劇という文化は、古代から続いていて、今でもずっと残っているんでしょうね。改めて考えてみると、お芝居は好きでも嫌いでもなくて、身近なものという表現が正しいのかもしれません。

たとえば、公園でお芝居ごっこをしていたら、その辺りを通りかかった人が観てくれるじゃないですか。その規模がだんだん大きくなって、小屋を借りるようになり、入場料を取るようになる。ただ単にステージが変わるというだけで、みんなたぶん、いつでも、どこにいても何かを演じていたいんじゃないかと思います。

「関西演劇祭」、たぶん癖になりますよ

──つぼみ大革命に加え、暁月-AKATSUKI-、EVKK/エレベーター企画、エンニュイ、劇団☆kocho、劇団さいおうば、The Stone Age ヘンドリックス、teamキーチェーン、fukui劇、WAO!エンターテイメントといった個性豊かな10劇団が参加する「関西演劇祭2024」が11月16日にスタートします。「関西演劇祭2024」を盛り上げるために、今回注力したいと思っていることを教えてください。

板尾 毎年、「『関西演劇祭』って何ですか?」と必ず聞かれるんですよ。そのたびにお答えしているんですが、まず、通常の演劇と鑑賞の仕方が違います。皆さん、いつもは大体1つの団体が上演する、2時間くらいの公演をご覧になっていると思うんですけど、「関西演劇祭」ではそれぞれの団体が45分のお芝居を上演して、公演直後にお客さんを含めたティーチインの時間があります。45分という尺も、お客さんの集中力が途切れないちょうど良い上演時間になっていると思います。ここ5年「関西演劇祭」をやってきて、新しい演劇の見方を提示できてきた感触があるので、このシステムをぜひ体感していただきたいという思いが強いですね。たぶん癖になりますよ。フェスティバル・ディレクターという立場としては、「関西演劇祭2024」が円滑に進むよう、参加団体がプレイしやすい環境を作って、観客の皆さんに少しでも楽しんでもらえるように努力したいと思っています。

福田 私は「関西演劇祭2024」にエントリーしている側なので、「本気でやります!」ということしか言えません。真摯に演劇に向き合ってきた方々が参加しているので、面白くないわけはないやろうなと思いますし、そんな皆さんの熱いパワーが集結した空間にぜひ来ていただきたいです!

左から板尾創路、福田麻貴(3時のヒロイン)。

左から板尾創路、福田麻貴(3時のヒロイン)。

プロフィール

板尾創路(イタオイツジ)

1963年、大阪府生まれ。1987年、ほんこんと共にお笑いコンビ蔵野・板尾(現在は130R)を結成。お笑い芸人としてテレビ番組に出演する傍ら、俳優として映画やドラマ、舞台にも多数出演。映画監督としてはこれまでに「板尾創路の脱獄王」「月光ノ仮面」「火花」を手がけている。8月から11月にかけて上演されている、ヨーロッパ企画「来てけつかるべき新世界」に出演中。

福田麻貴(フクダマキ)

1988年、大阪府生まれ。アイドルグループつぼみ(現在はつぼみ大革命)の元メンバー。2017年、ゆめっち、かなでと共にお笑いトリオ3時のヒロインを結成。2019年、「女芸人No.1決定戦 THE W 2019」で優勝。俳優としても活動しており、2024年1月から3月にかけて放送されたテレビドラマ「婚活1000本ノック」で主演を務めた。