セットから小道具まで、こだわり抜いた舞台

──稽古の時点で手応えがあったんですね。一方で、本番に入ってから意識的に演技を変えた部分や、新たにチャレンジしたことはありますか？

大友　ゾルディック家からキルアを連れ出すときに、ゴトーさんと話すところです。コインゲームを持ちかけてきたゴトーさんが「正直なところ……キルア様を奪おうとしているお前らが憎い」「オレがオレのやり方でお前らを判断する 文句は言わせねェ」と言うんですけど、「ゴトーさんはなんで『文句は言わせねェ』と言ったんだろう？」と思って。ゴンが前のめりになって何かを話そうとすれば、「文句は言わせねェ」というゴトーさんのセリフが生きるんじゃないかなと考えて、本番ではそこを意識してみました。

「『HUNTER×HUNTER』THE STAGE」より、田鶴翔吾演じるゴトー（中央）。

阿久津　なるほど。自分が芝居を変えると周りのキャストの皆さんが反応してくれるから、公演ごとに新たな化学反応が生まれるのも面白かったよね。僕が特に意識したのは、キルアのカッコいい部分と可愛い部分の差をつけたところ。稽古場から劇場に移って、照明や映像が加わったとき、“舞台上にキルアが存在している姿”がより想像しやすくなって、演技の幅が広がったと思います。

──脚本・演出を手がけた山崎彬さんが初日会見で「僕自身が『HUNTER×HUNTER』を読んだときに感じたワクワクを、皆さんにも客席で味わってもらいたいと思い、一生懸命作ってまいりました」とおっしゃっていました（参照：「HUNTER×HUNTER」開幕！山崎彬が大友至恩に太鼓判「ゴンと同じ目をしている」）。皆さんも山崎さんと同じ思いを胸に、それぞれのキャラクターと向き合っていたんですね。

阿久津　山崎さんにはすごく助けていただいて、そのおかげで、稽古に入った瞬間から自分が演じるキャラクターの気持ちに近づくことができたんじゃないかなと思います。山崎さんは誰よりも原作へのリスペクトがある方なので、演出はもちろん、セットの立て方や小道具にとてもこだわっていたんですよ。稽古場に初めてセットが組まれた日、「うわあ、『HUNTER×HUNTER』の壮大な世界観をこうやって表現するんだ！」と感動したのを覚えています。至恩も、小道具の精巧な作りにめっちゃ感動してたよね？

大友　そうそう！ 例えば、ハンター試験の“多数決の道”のシーンで使う○×ボタンには凹凸があって、ちゃんとボタンを押す感覚がある作りになっているんですよ。

大友至恩

阿久津　後ろの席のお客さんには見えなかったかもしれないけど、本当に細かいところまでこだわってるよね。

大友　そうだね。これも同じくハンター試験のシーンなんですけど、釣り竿を使ってヒソカからナンバープレートを奪う仕組みもすごく凝っていて、何度か観ているお客さんじゃないと、どうやって奪ったのかわからないんじゃないかなあ。

阿久津　僕も通し稽古で観たとき全然わからなかったもん！

大友　しかも、ナンバープレートを取られたときのヒソカのリアクションもすごく良いんです。

映像で観てほしいシーンは…

──「HUNTER×HUNTER」の世界を立ち上げるためにスタッフ・キャストの皆さんがこだわったポイントを、Blu-ray / DVDで改めて確認してもらいたいですね。Blu-ray / DVDを鑑賞する際、お二人が特に注目してほしいのはどのシーンですか？

阿久津　せっかく寄りで見られるから、やっぱりビジュアルに着目してほしいですね。ウィッグも衣裳もメイクも本当に完成度が高いので！

阿久津仁愛

大友　映像で観たときに一番感動したのは、一次試験のときにみんなで走るシーンかな。みんなの動きが綺麗にそろっていて、「ああ、これは全員で作り上げたパフォーマンスなんだ」って実感しました。

阿久津　確かに！ あれは斬新な演出だよね。僕は、ハンゾーと戦ってるときのゴンの表情も観てもらいたい。至恩がすごく良い顔してるんだよ。舞台裏にいてちょうど観られなかったけど、ゴンがイルミに対して「キルアに謝れ！」って叫ぶシーンも大好き。

大友　キルアのシーンでいうと、イルミに洗脳されていくところを観てほしい！ すごく感情を揺さぶられるし、本当に良い場面だなと思います。このシーンでにっちゃんが上裸になってるんですけど、このために筋トレしたり、お弁当を食べ過ぎないように我慢したりしてたよね（笑）。

「『HUNTER×HUNTER』THE STAGE」より、左から阿久津仁愛演じるキルア、上田堪大演じるイルミ。

阿久津　ははは！ あとは、（イルミ役の上田）堪大さんが歌うところも好きだな。聴き惚れちゃう。

──イルミ役の上田さんやヒソカ役の丘山晴己さんをはじめ、キャストの皆さんがそれぞれのキャラクターを深く理解し、ダンスや歌唱を通して登場人物の特徴を表現していたのが印象的でした。そのほかにも、お気に入りのシーンがあれば教えてください。

阿久津　僕、即答できます！ クラピカのソロ。勇輝くんはテニミュの大先輩ということもあって、出演作品をずっと観てきたんです。舞台上ではキルアでいないといけないんですけど、阿久津仁愛本人としては「大好きな勇輝くんのお芝居や歌声をこんなに近くで堪能していいの!?」ってすごく感動しちゃって……。

大友　良い話だね。クラピカとマジタニのシーンを観ていて、僕もマジタニになりたいなと思った。クラピカにやられる側になって、あのとき勇輝くんがどういう表情をしていたのか見てみたい。

阿久津　わかる。勇輝くんのクラピカは本当に素晴らしいんですよ……。

大友　ほかに印象的だったのは、ヒソカのダンスかな。敵の首を斬って踊るところが最高で、いつも袖から観てました。死体になった敵をバンジーガムで操る仕草も本当にカッコよくて、毎回ゾクゾクする！ 丘山さんのアドリブも面白くて大好きでした（笑）。

「『HUNTER×HUNTER』THE STAGE」より、丘山晴己演じるヒソカ（左）。

阿久津　丘山さん、僕たちの日替わりシーンにもネタを提供してくれたよね。「『あっち向いてゴン』なんてどう？」とか（笑）。丘山さんをはじめ、本当に素敵な人たちばかりだったから、今回は東京公演だけでしたけど、できることなら地方公演も回りたかったなと思うぐらい。そんな皆さんと一緒に作った「『HUNTER×HUNTER』THE STAGE」を、Blu-ray / DVDを通して何度も観てもらって、視聴者の皆さんに元気や勇気を与えられたら良いなと思います。

大友　そうだね。劇場へ観に来てくださった方にも、観に来られなかった方にも、ぜひ観てもらいたいです。「『HUNTER×HUNTER』THE STAGE」の観劇チケットは1万1000円でしたけど、Blu-rayだと1万780円、DVDだと9680円なので……あれ、お金の話になっちゃった（笑）。とにかく、Blu-ray / DVDを買ってもらえたら何回でも観られてお得です！

阿久津　なんだかテレビショッピングみたいだな！（笑）

大友　ははは！

阿久津　特典ディスクにバックステージ映像も収録されているので、そちらも楽しんでくださいねー！

左から大友至恩、阿久津仁愛。