さき原作の小説「アルバート家の令嬢は没落をご所望です」(KADOKAWA・角川ビーンズ文庫刊)が中屋敷法仁の演出で、READPIAの朗読劇として立ち上がる。主人公は、始業式中にはたと、自分が乙女ゲーム「ドキドキラブ学園~恋する乙女と思い出の王子~」の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気が付いたメアリ・アルバート。「ならば」とヒロインの恋路を邪魔し、そのしっぺ返しで堂々と没落街道を進もうとするメアリと、そんな彼女の一挙一動をサポートする、美形だが口の悪い従者・アディの奮闘が笑いを誘うラブコメディだ。
本作で2度目の朗読劇共演となるメアリ役の太田夢莉、アディ役の陳内将が、小説だけでなくコミックスやボイスコミックでも展開している原作の世界観、朗読劇の面白さについてたっぷりと語った。
取材・文 / 大滝知里撮影 / 祭貴義道
いつだって2人は主従関係
──本日は扮装姿で撮影に臨んでいただきました。お互いの令嬢・従者としての姿をご覧になって、いかがでしたか?
太田夢莉 陳内さんのアディ姿を見て一番に思ったことが、「手袋で朗読劇の台本捲れるんですか?」でした(笑)。何よりもそこに目が行ってしまって……。
陳内将 いや、本当だよね。
太田 あと、以前ご一緒したときは椅子に座っての朗読劇だったので、「身長、高いんだ」ってアホみたいなことを思いました。
陳内 あのときは僕、猫の役だったしね。
──昨年9月に共演された、方南ぐみ企画公演 朗読劇「青空」(参照:方南ぐみが朗読劇3作を上演、日替わりで中村歌昇・凰稀かなめ・陳内将・納谷健らが出演)ですね。
陳内 太田さんに勝手に懐いた野良猫みたいな役で。
太田 その印象が強かったので、燕尾服姿がカッコいいです。あの猫と……全然違う。
陳内 あははは! だから昨年も今年も、僕は太田さんに飼われているんですよ。まだまだ上には立てないっす(笑)。
──太田さんの衣裳は、令嬢メアリが通う貴族の学校・カレリア学園の制服姿でしょうか。
太田 (インタビュー中も1人だけ扮装姿だったため)恥ずかしいですね。
陳内 メアリのドリドリ(縦ロールの髪型)ってけっこう大事で、話の中でもネタとして出てくるんですけど、ちゃんとドリドリしていますね。今回、演出が中屋敷法仁さんなので、朗読劇とはいえ動きが付くんじゃないかと思うんですが、椅子に座って朗読するときに「お嬢……」ってスカートの裾とかを気にかけなきゃいけないなと、従者としては思いました。
太田 お優しい!
──朗読劇でこれほど作り込まれた衣裳を着るのは珍しいのでは?
陳内 そうですね。世界観という意味では衣裳に助けられる部分もあるのかな。
太田 ええー! 私は緊張します。原作があるときは、原作のファンの方がいらっしゃるので、扮装だと外見も“観られている”という意識をきちんと持っておかなければいけないなって。扮装がなければ主に声を意識すれば良いと思うんですが。
陳内 中屋敷さんがどうくるかっていうのもあるよね。演出家さんによっては、読むことだけに集中してほしいから、読んでいるとき以外に芝居をしてほしくないという人もいて。でもこの衣裳だと、きっと動く芝居もするだろうから、ずっと気が抜けない。朗読劇のほうが変な緊張感あるよね?
太田 あります! 以前、ちょっと調子に乗って台本から目を離した隙に、セリフをかんでしまったことがあって、「台本を見ているのに間違えられない」と焦りました。あと、最前列のお客様に私の台本の書き込みが見えていて、それを指摘されて恥ずかしい思いをしました。陳内さんは驚くことに、台本に何も書かれなくて、すごく綺麗なんですよ。
陳内 ああ、書かないですね。最初にその役をどう演じたいかをメモすることはあるけど、自分の役名に丸付けて終わりです。あははは!
太田 私、言われたことは書かないと、忘れちゃったりするから。でも、そんなスタイリッシュな役者になりたい。
陳内 人それぞれのやり方があるので!
ギャップと裏切り、それがコメディ“基本の基”!
──原作小説では、悪役令嬢・メアリと従者・アディのテンポの良い掛け合いが笑いを誘いますが、お二人は彼らのどのような姿に面白みを感じていますか?
太田 メアリはものすごく強気で真っすぐな面があるんですが、一方で令嬢なのにコロッケが好きだったり、ドジっ子な部分があったり、そういうギャップかな。
陳内 令嬢なのに庶民的とか、従者なのに生意気なことを言うとか、そのあんばいですよね。でも原作にヒントがあると思うので、そこを忠実にやれば、この2人だからこその“見え方”が生まれてくるんじゃないかなと。僕はアディとして物事を見ることができたときに、そこに自分のオリジナリティを挟んでいけたら良いなと思っています。いかんせん、今はまだ台本もない状態なので。朗読劇にアンサンブルがいるというのも、ね?
太田 未知ですよね。
──其原有沙さんがゲームのヒロインであるアリシア、高橋健介さんがアリシアの相手役・パトリックを演じます。さらに、金久保芽衣さんと田中廉さんのお名前がありますね。
陳内 アンサンブルとなる金久保さんと田中さんのお二人がどういう絡み方をしてくださるのか、楽しみです。
太田 お話の登場人物が少ないので、どういう形になるのかなって思っています。
──コメディは難しいとおっしゃられる方が多いですが、お二人はいかがですか?
陳内 僕、コメディばっかりやってますからね(笑)。夏組(「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズ、参照:胸にストレート!エーステACT2!「SUMMER 2022」開幕)もコメディですし、カミシモ(テレビドラマ・舞台「あいつが上手で下手が僕で」、参照:陳内将&梅津瑞樹コンビがぴょーん、ドラマ「あいつが上手で下手が僕で」ビジュアル解禁)もお笑いですし。コメディを連続でやってるなあ。
太田 私は反応が露骨にわかるコメディはちょっと怖いです。コメディって間を空けすぎても面白くないし、空けなさすぎても面白くない。舞台でコメディを観て「あ、面白い」と思ったことも、いざ自分がやるとド滑りしたりして、思い通りにいかなくて。
陳内 間に関しては今回、僕がツッコミになるから。太田さんが思うメアリ像でいてくれれば、稽古中から僕も好きにツッコむので、そういうところが楽しく見えてくるんじゃないかな。綺麗な身なりをしているのに、ちょっと庶民的すぎる部分もある2人なので、そういった意味での裏切りを入れていければ。お客様に観られている扮装が、もう十分フリになってるから、王道のコメディの要素はそろってると思います。
──裏切りが大切なんですね。
陳内 お客様のことを良い意味で裏切り続けたいですよね。「没落しようと思うの!」とメアリが言ったときに、「なんでそういう結論になりますかね!?」ってアディが返す場面が原作にあるのですが、メアリのほうを向いてツッコむのが真っ当だけど、椅子から転げ落ちて、全然違う方向にそのセリフを言っても良いじゃないですか(笑)。でも椅子に戻ったら役からは逸脱しない、みたいに、いろいろなラインを探っていきたいなと。そうしたら中屋敷さん、笑ってくれるかな……って(笑)。
太田 お客様にも“ただ笑いに来る”くらいの感覚で観に来ていただきたいですよね。私もメアリの好きなセリフがいくつかあって、スマホに書き留めているんですが、それが台本に入ってくると良いなと思っています。