お笑いナタリー PowerPush - ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

劇団ひとりの場合

バイトでコントのキャラクターを発見

──ここまで聞いただけでもいろいろなバイトを経験されていますが、その中でコントのキャラクターになった人ってますか?

これは芸人としてのバイトだったんですけど、ねるとん的な企画で泊まり込みのバイトをしたことがあって。若い独身の男女が会場で出会ってカップル成立なるか、という。僕は天使の格好をして、自分から率先して動けない男の子をアシストする役だったんですね。そしたらそこに本当にダッサいトレーナーをジーンズの中にインしてる男の子が来て。たぶん歳で言うと22、3だと思うんですけど、「今日は恋人を探しにきたの?」って尋ねたら、「今日はなんか、偶然来ちゃって……」。

──あはははは!

「え!? 偶然来たの?」「いや、なんか全然こういうの知らなくて……」(笑)。僕その子気に入っちゃって。僕の代表作でジャニーズのオーディションのネタがあるんです、ちょっとオタクっぽい男の子の。そのキャラクターのモチーフはこの子でしたね。

──そうだったんですね(笑)。そういう人を見つけたときにメモしたりとか、ネタ帳に書いたりするんですか?

劇団ひとり

しますね。僕はメモ魔なので、なんでも思いついたことは書きます。1日何回もメモ取ってますね。メモなんか、100個取って1個役に立つか立たないかだと僕は思ってるんです。でもやっぱり、ひょっとしたら将来役に立ったかもしれないけど、メモを取らなかったおかげで何にもならなかったアイデアって山ほどあると思いますよ。こういう商売柄なるべく取るようにしてますけどね。

──それはお笑いを始めた16歳の頃からずっと?

そうですね。昔はノートのネタ帳だったんですけど。パソコン買ってからはずっとパソコンです。

バイトは“恋活”するのに適した場所

──コントのキャラを見つけられたり、いろいろなアルバイトをしていると仕事に生きますね。

そうですね。ただ、あんまり「これを経験にしてネタにしてやろう、歌の歌詞にしてやろう」っていう下心をずーっと持ってると、あんまりいいもの出会えないです。これも不思議なもので、ネタ探ししようと思うと意外とネタって見つからなくて。穿った目で見ちゃうから。だからバイトをやるときは単純にピュアな気持ちでやったほうがいい。

──バイトでの恋愛ってありました?

なかったですね。一度もなかったかもしれない。いたんですよ、正直。ガソリンスタンドのアルバイトで1人、やらせてくれる子が。僕の友達は給油してましたが(笑)、童貞だったので僕はできなかったですね。

──でもそういうのに憧れてアルバイトを始める人もいますよね。出会いというか。

劇団ひとり

バイトほど恋愛をするのに楽な場所ないと思いますよ。僕は本当に女性に対して奥手な時期だったので、何一つモーションを掛けられなかったんですけど、今思えばあんなにヌルいところないぞって思います(笑)。だって毎日顔合わせますからね。しかもそこでうまくいかなかったら別のバイトに行けばいいわけでしょ? あんな“恋活”するのに適した場所ないと思いますけどね。短いバイトだったら1日3時間とか4時間の間だけ気張っとけばいいし(笑)。シフトとかも合わせちゃえば帰り道一緒になったりするわけでしょ? で、お給料日に何かプレゼントを渡すとしたら、同じ時給だからこのプレゼントを買うのがどれだけ大変かわかるわけじゃないですか。「この人は約12日間分のシフトを棒にして、私にこのプレゼントを買ってくれた」って思ってもらえれば、こんなにわかりやすいものないですよね。……そう思うと学校なんかむちゃくちゃですよね。あんな楽しい場所ないですよ! 若い男女が集まってるわけだから。恋なんかし放題。

──でもひとりさんはバイトでの恋愛はなかったんですね。

本当にだから、後悔と無念でいっぱいですよ。なんて真面目に生きてきちゃったんだろうって。それはやっぱり灯台もと暗しで、ちゃんと自分の現状を考えてほしいです。いかに恵まれた環境なのか。やれ「コンパしたい」「彼女ほしい」とかって言ってるけど、「いや、見渡してごらんよ」と。「周りにいませんか?」っていう話ですよね。なぜか知らないけど「いや、ここのバイト先はそうじゃないから。俺たち仲間だし」みたいなそういう変なプライド殴り捨てて、やっぱりどんどんと、手を出して……(笑)。

ナタリー×an 教えて!センパイ~あの頃のバイト生活~

「an」特設サイトではナタリーとの連動企画として、一般ユーザーから寄せられたバイトに関する悩みや相談にゲストが答えるコーナーを掲載。劇団ひとりにはインタビューとあわせて、さまざまな質問に答えてもらった。

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劇団ひとり(ゲキダンヒトリ)

劇団ひとり

1977年2月2日生まれ、千葉県出身。1993年デビュー。2000年にコンビ解散後、劇団ひとりとしてピン芸人に。2006年には「陰日向に咲く」で小説家デビュー。現在は「ゴッドタン」(テレビ東京系)、「OV監督」(フジテレビ系)、「幸せ!ボンビーガール」(日本テレビ系)、「中居正広のミになる図書館」(テレビ朝日系)などにレギュラー出演中。2014年5月に自身の小説を原作とした初監督映画「青天の霹靂」が全国公開された。太田プロダクション所属。


2014年12月26日更新