マヂカルラブリーがGoogle Gemini使ってみた。AIの進化と芸人への影響、お笑いファンにオススメの活用法

GoogleのAIアシスタント・Gemini(ジェミニ)は、ユーザーとおしゃべり=チャットしながら質問・疑問に答えてくれる。文章を書いたり、要約したり、アイデアを出したりするのが得意で、ビジネスから日常生活まで幅広いタスクを効率化。いわば“頼りになる相棒”だ。そんなGeminiの魅力を伝えるべく、マヂカルラブリーが出演する動画「マヂラブGemini教室」がYouTubeで公開に。これに先がけて、お笑いナタリーでは“Geminiマスター”こと野田クリスタルと、最新機器に苦手意識を持つ村上に、Geminiを使ってみた感想を聞いた。

取材・文 / 狩野有理写真 / 葛川栄蔵

マヂラブGemini教室

GoogleのAI・Geminiでどんなことができるのか、マヂラブの2人が実際に使って体験。ビジネスシーンの面倒な作業からプライベートの遊びまで、なんでもサポートしてくれるGeminiの機能に驚き!

Geminiマスター野田

野田クリスタルがGeminiマスター(Geminiを使いこなす人)を目指して新たなゲーム「ペットカードジェネレーター」作りに挑戦。ゲームの構想を打ち込み、指示を出していくだけでどんどん形にしてくれるGeminiに「ヤバヤバヤバ」と衝撃を受ける。

野田クリスタル考案「ペットカードジェネレーター」とは

自分の撮ったお気に入りのペットの写真をアップロードすると、ペットの表情や写真の構図、シチュエーションの珍しさなどを数値化。「攻撃力」「体力」などのステータスで評価しつつ、「レア」「スーパーレア」「ウルトラレア」などレア度にあわせてデザインしたトレーディングカードを作ってくれる。一般公開されるやいなや、SNSで話題沸騰。盛り上がりすぎたため一時停止となり、このたびアップデートして復活した。作ったカードは「#ペットカードジェネレーター」を付けて自慢しよう!

おもしろも覚えてきているAIの進化スピード

──今回、Geminiマスター候補に野田さんが選ばれました。

野田 芸人界では適任と言っていいんじゃないでしょうか。もともとプログラミングを独学でやっていましたし、相性はいいと思います。ただ、“本当の”Geminiマスターには会わないようにしたいです。本物とはあまり比べられないように、こっそりと名乗っていきたい。

村上 いやいや、ご謙遜を。僕から見れば完全にマスターでしたよ。僕みたいな者に教えてくださいよ。なんで質問を打ち込んだら返ってくるのか。

マヂカルラブリー

マヂカルラブリー

野田 それはマジで知らないです。

村上 まあ、もっと探せば芸人界にももっと適任な人がいそうですけど。

野田 それを言い出したらキリがないから。

──ではよしもとの中では、適任。

野田 よしもとの、アラフォーで、賞レースで結果を残している枠で言うと、適任だと思います。

──村上さんは1から教わる側として動画に出演されていますね。

村上 本当に何もわかってない状態でした。Gemini=質問したら返ってくる、ということしか知らないです。

野田 こんなんじゃお笑い界やばいですよ。AI意識が低すぎて。

村上 おじさんってこうなんだよって僕が旗を振って見せられたらなと思います。「恥ずかしくないよ! スタートラインはみんな一緒だよ、勉強していこう!」って。

──生成AIにはどんなイメージを持っていましたか?

野田 「有吉の壁」(日本テレビ)で、インポッシブルのえいじと生成AIが作ったネタをやったのが最初かな。そのときは、「まだまだAIには負けないな」と思ったんですよ。それがつい最近の企画だったと思うんですけど、今はもう俺らの背中がとらえられだしている。進化スピードが恐ろしいです。このスピードだと、来年あたり、「M-1グランプリ」にAIで挑む奴が登場しますよ。最終的には電脳戦になるかもしれないです。決勝の舞台にパソコンだけが並ぶっていう。で、審査員席も全部パソコン。

村上 AIのほうが正確な審査ができるかもしれないですよね(笑)。私情を省いて、過去に似たネタがなかったかとかも調べてくれそう。

──村上さんは苦手意識があったということですが。

村上 そうですね。新しいものを拒絶するところがあるので。将棋やチェスでAIに人間が勝てなくなっているって聞くじゃないですか。だから怖いなと思っていたんですけど、ロケで初めてAIというものに触れたときに、「マヂカルラブリーの村上が絶対にウケるギャグを作れ」と指示を出したら差別発言を含んだ2行ぐらいの文章になっちゃって。使えないし、ギャグでもないし。だから「全然まだまだなんだな」と思っていたんです。それが最近は、ついにAIがおもしろも覚えてきていると聞いて、本当にすぐそこまで来ている気がしますね。まあそうなったらネタ作りが楽になるんじゃないですかね。喫茶店に集まって「次の新ネタどうする?」から始まる無言の時間がなくなるかもしれない。「両者、出ず」の謎の時間が(笑)。そこは使い方次第だと思います。

AIを使うのは“醤油を育てる”のに似ている

──使ってみてイメージは変わりましたか?

村上 最先端のものってだいたい難しいじゃないですか。難しいから拒絶という反応になるんですけど、想像以上にわかりやすかったです。Geminiにたどり着くまでがまず簡単でした。ハードディスクレコーダーとかが出てきたとき、どれで何をやったら録画できるのか、どこに録画がされるのか、そのへんがまったくわからなくて、僕はレコーダーとかを持ったことがないんですよ。Geminiはやることが単純で、Geminiと検索してクリックすればもうやれるので、それがすごくいいところだなと思いました。画面もシンプルですしね。

マヂカルラブリー

マヂカルラブリー

──苦手意識は薄れましたか。

村上 はい。「使ってみよう」という気にさえなれば誰でも使えると思います。音声入力も進化していて、実際に使ってみる前は、すっごい丁寧に「次の、M-1チャンピオンは、誰?」みたいな聞き方をしないといけないイメージだったんですけど、「次のM-1チャンピオン誰なの?」って普通に友達との会話みたいなしゃべり方でも聞き取って答えてくれるのがびっくりしました。知能もそうだし、マイクとかの性能の進歩も感じて、総合的にすごいなと思いました。

野田 AIって「醤油を育てる」のに似ている気がしていて。材料を追加していくと味がよくなって、昆布とかを入れてどんどん自分好みにしていく。AIも、使っていくうちに学習してちょっとずつ自分寄りになってくるんですよ。どんどん継ぎ足していく作業が好きなので、それができるのがいいなと。

──野田さんは独学でプログラミングを習得してゲーム制作を行ってきましたが、動画ではGeminiでゲームが作れてしまいましたね。

野田 その悔しさも少しあるんですけど、逆に言うと、僕のプログラミング学習は止まっていたので、ちょうどよかったと言えばちょうどよかった。ここで潔くプログラミングを止められます(笑)。しかも僕、「Python」というGeminiと同じプログラミング言語を使っていたんですよ。ちゃんとやってきた人だったら「俺の仕事が取られる……」とか思うかもしれないですけど、まったく思わないです。

村上 AIが人間の仕事を奪っていく、みたいなことをよく聞きますけど、あなたがいち早く奪われましたね(笑)。

野田 一瞬で奪われました。バグが検出されようものなら、解決方法まで書いてくれる。で、ボタンを押すと解決している。……なんで?っていう。じゃあ俺いらないじゃん!

村上 野田ゲー、今年出したらよかったじゃん。みんなでデバッグやるの、いらなかったんじゃない?

野田 全部がGeminiで解決する。

──でも、バグが発見されてユーザーがBBSで報告していくのも野田ゲーらしさではありますけどね。

村上 「野田ゲーのようなかわいいバグは残して」ってGeminiに言えばやってくれるんじゃないですか?

野田 学習させたらやってくれるでしょうね。恐ろしい。

マヂカルラブリー

マヂカルラブリー

サボってきたネタの台本化を丸投げ

──仕事ではどんな場面にGeminiを使えそうですか?

野田 ネタに関してはまだ生成させられないかなと思っているんですが、テレビ番組のネタチェックがあるときに使っています。ネタの台本を書き起こすのが本当に手間がかかるので、やってもらえるとすごく楽ですね。

──お二人はもともと台本にしないでネタを作っているんですね。

野田 そうです。番組チェック用に台本に起こしていると、急激に「あれ、つまんねえな?」ってなるんですよ(笑)。そうなるともう書きたくなくなる。その作業を全部Geminiに任せられるのでありがたいです。台本にしなかった弊害はほかにもあって。「フェニックスライブ」という、昔“死んだ”(ウケなかった)ネタを呼び起こすライブをやっていたんですが、なにせメモっていないので、死んだネタの情報が残っていないんですよ。

──記憶のみ?

村上 記憶のみです。タイトルをメモしているだけ、とか。

野田 でも「マヂカルラブリーの全ネタリスト出して」と言ったら、「あったっけ、こんなの?」って思うようなネタがめっちゃ出てきて。「勝った!」と思いましたね。AIが登場したことにより、これまでネタの記録を残してこなかったという怠惰が裏返った(笑)。

村上 何もせずして、ネタをちゃんと書き残してきたみんなと同じラインに立てました(笑)。

野田 YouTubeに上がっているネタも台本化してくれるので、僕も知らない、というか忘れていた情報も発掘できる。

──村上さんはどんな場面でGeminiを使いたいですか?

村上 僕は領収書の管理がものすごい楽で早くなると知って、これは使えるぞと。領収書を動画で撮るだけで全部計算してくれるので、芸人のみならず誰しもが使えるし、月末はみんな助かると思います。

野田 中学の頃からずっと、わからないことはネットで検索するという文化が染み付いていたんですけど、最近はもうググらなくなってきましたね。最初に開くのがGeminiになってます。ブラウザ開いて、検索ワードを打ち込んで、出てきた大量のサイトから選んで、クリックして、という作業が省けるので、超速いです。昔はしゃべっていて「そんなのネットで調べたらいいじゃん」って思うことがよくあったんですけど、それがどんどん「Geminiに聞けばいいじゃん」になってくるんじゃないでしょうか。

──気づいたらネットサーフィンしてしまっている、みたいな無駄な時間がなくなりそうです。動画で紹介していた、自分の写真を撮ってやってみたい髪型や服装を試せるのも面白いなと思いました。

村上 後戻りできなくなる前に試せるのはいいですよね。

野田 “if”の世界を楽しめる。

「マヂラブGemini教室 #2」より、大学生になった自分の画像を生成する野田クリスタル

「マヂラブGemini教室 #2」より、大学生になった自分の画像を生成する野田クリスタル

──野田さんはパンクロッカーになったり、キャンパスライフを送る爽やか大学生になったりしていましたね。