現役大学生の「ABCお笑いグランプリ」ファイナリスト・友田オレ（後編）

取材・文 / 塚越嵩大

「きっしょ！」って言ってくれる人がいて羨ましかった

──友田さんは先月7月に「第44回ABCお笑いグランプリ」の決勝に出場しました。決勝の12組まで残ったときはどんな心境でしたか？

最終予選（45組）に残れた時点で信じられない気持ちで、ずっとフワフワしていたので、決勝が決まったときは1周して感情の起伏がありませんでした。そのあとの会見もテレビを観ている感覚で参加しちゃって。その3日後くらいにサークルのライブがあったんですけど順位が6位で、そっちのほうがドキドキしました（笑）。

──大学の友達の反応はどうでしたか？

「おめでとう」のLINEはくるんですけど、みんなそこまで騒ぎ立てるような奴じゃないんです。祝ってはくれるけど、煽りはしてこないというか。いい距離感で見守ってくれて、それがありがたかったです。

──決勝の1stラウンドでは令和ロマン、ダウ90000、ハイツ友の会と戦って敗退となってしまいましたが、大会を振り返っていかがですか？

やっぱり漫才は強いなと思いました。優勝したダブルヒガシさんのネタにも歌うくだりがあったんですけど、歌い終わりに「きっしょ！」っていうツッコミがあるんですよ。それが羨ましかったです（笑）。僕も歌ネタですけど、ピンなので歌いっぱなしじゃないですか。歌ったあとに「きっしょ！」って言ってくれる人が僕にも欲しいなって。

──なるほど。自身のネタの出来栄えは？

よくできたと思いますし、笑っていただけたので満足はしてるんですけど、ネタ終わりの4組そろってのトークで、もう少し食らいついたほうがよかったのかな……と少し後悔しました。ちょうど僕の前だったハイツの友の会さんに話を聞いたところで、点数集計が終わってしまって、しゃべるチャンスがなかったんです。

──生放送だし、番組の流れもあるし、それを止めるのは難しいですよね。

迷いました。（MCの南海キャンディーズ）山里さんが「さあ！」って次にいこうとしたところで、「いやいやいや！」って割り込んでもよかったのか、でも割り込めないよなあ……と。

音楽理論はわからない

──テレビ番組や賞レースでは歌ネタを披露していますが、YouTubeチャンネルにはそれ以外のネタもアップされていますよね。

歌ネタが8割、そのほかが2割くらいです。漫才もリズムネタが主です。

──普段はどのようにネタのアイデアを収集していますか？

日常の身近なところから着想を得ることが多いです。最近は歯医者に通っているので、歯医者さんのネタを作りました。歯医者さん関連でもう1つ作りたいネタがあって……今通ってるのが夫婦と受付の女性の3人でやってる個人経営の歯医者なんですけど、主治医の方が棚とか器具にめっちゃぶつかるんですよ。狭いからかもしれないですけど、個人経営なのでモノの配置なんてどうにでもできるじゃないですか。なんでこんなにぶつかるんだろうって……。そのまま「個人経営なのにめっちゃ棚にぶつかる歯医者」というネタを作りたいと思っています（笑）。

──完成するのが楽しみです（笑）。歌ネタはどのように作っているんですか？

最初に好きな言葉を思いついて、そこから考えることが多いです。

─そのときのこだわりは？

「聴いていて心地いい」というのは大事にしています。その上で聴けば聴くほど面白いというか、噛めば噛むほど味が出るスルメみたいな内容にしたいと思っています。人間にとってのスルメ、犬にとっての骨（笑）。

──キャッチーなメロディを生み出すには、音楽の素養もそれなりに必要だと思うのですが、作曲も学んできたんですか？

いえ、音楽は好きですけど、広く浅く聴く感じで、音楽理論のことも全然わかってないです。ネタ中の音楽は友人が作ってくれています。高校のときにコピーバンドをやっていて、そのときのギターの子が今、音楽を勉強しているんです。「ABCお笑いグランプリ」でやったネタも「どうにかできたはずさ どうにかできたはずさ」というサビのメロディを思い付いた時点で、その友人に相談しました。「こんな感じにしたい」と提示すると、それに合わせて作ってくれるんです。なので音楽に関してはその子に頼りきりなところはありますね。

──ネタ中の楽曲以外にも、友田オレ名義で「散歩の時代」という曲が配信リリースされているのを聴いて、個人的にすごくいい歌だなと思いまして。

ありがとうございます！

──あの曲はどういう流れで？

あれもネタ中の楽曲を作ってくれている友人に一緒に曲を作ろうと誘われたんです。「俺が作曲でやりたいのがあるから歌詞に専念してくれ」と言われて分担して作りました。いろんな人に聴いてもらいたいので、もっと宣伝したいです（笑）。

──ご自身では今、どういう音楽を聴くことが多いですか？

パッと出てこないくらい広く浅く聴いてるんですよ……。最近は海外のFoalsというバンドはよく聴いてます。邦楽だと吉田美奈子さん。最近イヤホンをなくして、スマホを直接耳に近付けて音楽を聴きながら歩いてるんですけど（笑）。高校生のときは米米CLUBのコピーをしていました。

コント番組も、音楽番組も、大食い番組も

──直近の目標は？

「M-1グランプリ」で3回戦までいきたいです。

──今後はコンビにも力を入れていきたい？

コンビをメインにということはないんですけど、ピンと並行してやっていけたらいいなと思っています。相方が就職を決めているので、むしろ活動頻度は下がるかもしれないですけど、ピンをやって時々漫才をやるのが一番楽しくてちょうどいいです。

──賞レースでいうと25歳以下限定の「UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP」の準決勝にも進出していますよね。

はい。決勝にいかないとなかなか注目してもらえないので、ここからが勝負ですね。トーナメント形式なので準決勝で2回勝たないといけないのでがんばりたいです。昨日、「UNDER 25」の対策ライブがあったんですけど、僕と同じブロックの人が2組出ていて、手の内明かすことになっちゃうので、やるつもりのないネタをやるという本末転倒なことがありました（笑）。

──そういった駆け引きもあるんですね（笑）。芸人として出てみたい番組は？

ネタ番組や音楽番組に出たいですけど、「LIFE!」（NHK総合）のような日常系のシチュエーションコント番組に1回でも出られたらうれしいです。間とかもたっぷり使う感じの。

──確かに友田さんの空気感は「LIFE!」に合いそうです。

本当ですか？ これからは「LIFE!」に照準を合わせていきたいです（笑）。あとは大食い番組も出てみたいです。

──大食いが得意なんですか？

どちらかというと早食いです。ずっと自分は大食いだと思ってたんですけど、ジャンルでいうと早食いだということに最近気づきまして（笑）。量的には、普通の人よりもちょっと食べられるくらいでした。なので早食いを見せつけたいです。

──最近は早食いで競う番組はなかなかないですよね。

なので、早食いだけど大食いのフリをして、大食い番組に出たいです。まず最初に早食いのさまを見せつけて、視聴者にはその光景を脳裏に焼き付けてもらって、自分は徐々にフェードアウトしていくみたいな。衣装もあずき色でシミが目立たないので、汚い感じにもならないと思います。

──最後に、目指す芸人象を教えてください。

これまで長期の夢を設定せずに生きてしまったので、将来の目標を立てられない体になっちゃってるんですよね……。先の人生を考えた瞬間、気持ち悪くなっちゃうんですよ（笑）。

──なるほど（笑）。では代わりに、現時点での自分の強みはなんだと思いますか？

うーん……。ネタでいうと、キャッチーだけど中身が詰まってるところでしょうか。とにかく瞬間的に消費されないようにがんばります（笑）。

友田オレ

2001年生まれ、福岡県出身。お笑いサークル「早稲田大学お笑い工房LUDO」に所属する現役大学生のピン芸人。YouTubeチャンネルにアップされた動画がお笑いファンの注目を集め、「あらびき団」（TBS系）や「ぴったり にちようチャップリン」（テレビ東京）といったネタ番組に出演する。2023年7月には「第44回ABCお笑いグランプリ」の決勝に進出した。

お知らせ

「UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP」 準決勝 グループJ

日時：2023年8月27日（日）16:45開場 17:00開演
会場：東京・シアターマーキュリー新宿
料金：前売1800円
チケット：チケットぴあで販売中。
＜出演者＞
MC：真空ジェシカ
第1試合：ノコノコみさき / ガールズナイト
第2試合：赤にしん / 美魔女
第3試合：清水駿平 / 友田オレ