「ノーセンスユニークボケ王決定戦」の様子。

名場面で振り返る「ノーセンスユニークボケ王決定戦」

「生命線を食べて死のうとするかねきよ」が生まれた場所、その混沌の歴史

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2013年3月21日、「ノーセンスユニークボケ王決定戦」と題したライブが誕生した。お笑いに必要不可欠とされるセンスの要素を排し、「おしゃれな笑いができない」「前に出たいときに出る」「ボケたいときにひたすらボケる」という芸人だけを集めて“ノーセンス”ぶりを競わせる前代未聞の大会だ。過去15回にわたり実施されてきたこのイベントは、やりたい放題のボケ合戦が会場全体を"トリップ"させることも多々あり、一部のお笑いファンから熱狂的な支持を得てきた。

そんな「ノーセンスユニークボケ王決定戦」とお笑いナタリーがタッグを組んだ「ノーセンスユニークボケ王 マツリー杯」が1月30日(土)に開催される。このコラムでは大会の歴史を「生命線を食べて死のうとする新宿カウボーイかねきよ」「PPAP地獄」「ノーセンスロボ」といったカオスな名場面と共に振り返る。ぜひチェックして、30日の戦いをより一層楽しんでほしい。

「ノーセンスユニークボケ王 マツリー杯」の概要およびチケット販売ページはこちらから。

初回の開始5分で「地獄だ」

第1回大会優勝者・オジンオズボーン篠宮の「シェー」。

第1回大会優勝者・オジンオズボーン篠宮の「シェー」。

「ノーセンスユニークボケ王決定戦」が誕生したきっかけは、オジンオズボーン篠宮と永野がとあるライブで共演した際、往年のギャグ「シェー」を繰り出し合って意気投合したこと。永野は飲みの席で篠宮をしきりに「ユニークだね!」と絶賛し、「ユニークライブとかしようよ」と提案。永野と篠宮のまとまらない話を、篠宮の後輩・みなみかわが整理する形でイベントが実現した。

そんな「ノーセンス」は初回から異様だった。まだ幕が開いていないにもかかわらず、謎の雄叫びが会場に響き渡り、芸人たちは明転を待たずにボケまくる。ライブがスタートした時点で、すでに場が荒れすぎて収拾がつかない状態になっていた。MCのみなみかわはルール説明さえもスムーズに進められず、開始5分で「地獄だ」と愕然。そんな彼にお構いなく、出場者たちは「キャイ~ン!」「なんて日だ!」とギャグを放ち続けた。他人のギャグをためらいもなく借用するのは、現在も受け継がれている「ノーセンス」の伝統。初回では「シェー」のポーズとEXILEのダンスを融合させた「シェーザイル」「シェーシェートレイン」も誕生した。

【レポート記事】破壊力抜群、お笑い界に新ジャンル「ノーセンス芸人」誕生(2013.3.21)

「犬がいる!」声を殺しながら笑う観客に一同が大騒ぎ

出場者たちは時に舞台上と客席の垣根を軽やかに飛び越える。

出場者たちは時に舞台上と客席の垣根を軽やかに飛び越える。

客席を含めた会場全体が異様な空気に包まれていくのも「ノーセンス」の醍醐味。第5回のオープニングでは、芸人たちが舞台から降りて思い思いに暴走。座席の間を歩き回る者、取材用カメラに詰め寄ってアピールする者、あえて舞台上に残って瞑想する者など、360°どこを見ても誰かがボケている笑いのパノラマ状態となった。恒例企画「シェー位争奪戦」では、声を殺しながら笑う観客を発見した出場者たちが「犬がいる!」と大騒ぎ。さらに永野は最前列の女性に「一緒にシェーをしてほしい」と懇願し、不倫ドラマ仕立てのコントを演じた。永野曰く「ノーセンス」はライブではなく「参加型ワークショップ」。観客は時に「何を他人事のように見てるんだ」と説教されることもある。

【レポート記事】「ノーセンスユニークボケ王決定戦」流れ星ちゅうえいが初優勝(2015.4.19)

かもめんたる槙尾が壊れた夜

ピエロに疲れた男の即興芝居を行うかもめんたる槙尾。

ピエロに疲れた男の即興芝居を行うかもめんたる槙尾。

「ノーセンス入れ替わり王」の最中、突如イワイガワ岩井を突き飛ばそうとするかもめんたる槙尾。

「ノーセンス入れ替わり王」の最中、突如イワイガワ岩井を突き飛ばそうとするかもめんたる槙尾。

ノーセンスなイメージのない芸人が参戦し、公演中に徐々に壊れていくことがある。その代表的な例が、かもめんたる槙尾が参戦した第6回だ。彼がなかなかボケずにいると、周囲からは「本物のノーセンスじゃん!」「俺たちがいかにわざとボケを演じてたのかがわかった! 恥ずかしい!」「概念を覆すほどのノーセンス!」とガヤの集中攻撃が。その対象は彼が実施している即興コントライブにも及び、「こいつの即興ライブは詐欺ライブですよ。即興詐欺師」「お笑い好きの若い人を騙してるんですよ」「詐欺めんたる」と言いたい放題。詐欺師キャラに仕立て上げられた槙尾は次第に「ほかの演者をいきなり突き飛ばそうとする」「延々と一人言をつぶやく」といった奇行を連発し、周囲を「本当に頭おかしくなっちゃったんじゃないの?」とザワつかせた。最終的に槙尾は見事優勝。「単純にうれしいです」と涙を流した。

【レポート記事】“即興詐欺師”かもめんたる槙尾、ノーセンスユニークボケ王決定戦で涙の優勝(2015.10.14)

40分以上のPPAP地獄がもたらした陶酔感「もうちょっとで飛べる。飛びたい」

客席の壁に向かってPPAPを踊るみなみかわと、それを静かに見守る出場者たち。ノーセンス芸人はムチャぶりをしておいてリアクションはしないことが多い。

客席の壁に向かってPPAPを踊るみなみかわと、それを静かに見守る出場者たち。ノーセンス芸人はムチャぶりをしておいてリアクションはしないことが多い。

気に入ったギャグは何度でもしつこくやるのが「ノーセンス」の基本だが、中でも常軌を逸していたのが第8回の“PPAP地獄”だろう。ピコ太郎の「PPAP」をノーセンスにアレンジするコーナー「ノーセンスPPAP」で、デモンストレーション役のみなみかわが「ちゃんとやってない」「声が小さい」といちゃもんを付けられ、繰り返しPPAPをやらされるハメに。「客席の壁に向かってやってほしい」という意味不明な要望も飛び出し、気付けばPPAPのくだりだけで40分が経過していた。みなみかわは「PPAPは40分も引っ張るものじゃない!」と軌道修正しようとするが、永野は「これをもっと続けたら脳が新しいところいけると思う。ナチュラルなドラッグ。もうちょっとで飛べる。飛びたい」と熱弁。これを受け南川はPPAPをラスト1回として踊り始めたが、この時点で出演者たちは場を盛り上げる気力を失っており、ただただ黙り込むだけだった。なお半年後の第9回でも出場者たちはみなみかわに「PPAPやって」と注文している。

【レポート記事】40分にわたるPPAP地獄、「ノーセンスユニークボケ王」ジョニ男が連覇(2017.2.8)

奇声と悲鳴

耳を塞いで奇声を上げるキック。

耳を塞いで奇声を上げるキック。

歴代参加者の中でも屈指のクレイジーぶりを発揮したのが“サイキック芸人”のキックだ。一同が着席しなければいけない場面で断固として座らず、周囲から「早く座れ」と言われても無言で微笑するだけ。芸人たちが「怖い怖い」とザワつく中、急に両耳を塞いで「ヒャー!」と奇声を発し、観客の悲鳴を誘った。あまりにも生々しい狂気に永野は「狂った! 本当に気が狂った! リアルに人が狂うところ初めて見た!」と大騒ぎ。ようやくイスに座ったキックが客席に向かって両手でピースすると、客席からは再び悲鳴が上がった。なお、この第9回ではサンシャイン池崎が後ろにのけぞりすぎて頭を床に打ち付ける事件が起こり、ここでも悲鳴が発生。永野は池崎の死も覚悟したそうで、「事故の瞬間の映像がワイドショーで何度も流れることまで頭をよぎった」と話していた。

【レポート記事】ザコシが「ノーセンス」優勝!池崎の事故やキックの狂気に観客悲鳴(2017.8.17)

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ノーセンスロボ誕生!

読者の反応

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いち・もく・さん くぼた隆政 @kubotatakamasa

30日(土)はぜひこちらの記事を読んで、予習・復習してご視聴ください!この上ないバカな時間をともに楽しみましょう!https://t.co/Mwb0kEapEG

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