ぜんぶ君のせいだ。|新しくなったぜん君。はもう眠らない

最初、ぜん君。には入りたくなかった

──如月さんはこれまでと同じく新メンバーオーディションの選考に携わっていたと思いますが、3人のどこに惹かれたんでしょうか?

如月 私が真っ先に入れたいと思ったのは喑ですね。そのときはまだ襲もふふもいなかったんですけど、集まってくれた子の中で「入れたい!」と思ったのは喑しかいなかった。でも最初、喑は「ぜん君。には入りたくない」と言っていて……。

甘福氐喑

 すごく失礼な話ですけど、コドモメンタルのオーディションを受けてはいたんですが、ぜん君。には入りたくないと伝えていたんです。決して嫌いなわけではなくて、ぜん君。のことはずっと前から知ってたし、すごく好きでライブにも足を運んでいて、好きすぎるからこそ今の自分がぜん君。に入るのは許せなくて。でもめーちゃんや社長とすごくいろんな話をする中で、好きなグループに入れるなんて人生そうあることじゃないなと思うようになって、ぜん君。に入れていただくことになりました。

如月 喑は本当に努力の人で、誰かに支えられなくても自分で努力できる人だと思うんです。それでいて負けず嫌い。そういう芯の通った強さがオーディションのときに出てた。オーディションで私が真っ先に入れたいと思ったのが喑で、社長がすごく推していたのが襲。襲はめっちゃ人に愛される人間だと思っていて。

 うれしい。ありがとう。

如月 それと、普通に歌やダンスのセンスがすでに備わっていて、おそらくぜん君。ではなくてもステージに立つ人だなと思いました。どのような形にしろ、いつか脚光を浴びる人だって。だったらほかで輝く前にぜん君。に入ってほしいなと(笑)。ふふはオーディションの面談で会ったとき「あ、この子はぜん君。だ」と思ったんです。ふふは最後に加入が決まったメンバーで、早く慣れてほしいから1週間私の家に泊まってもらったんです。とにかく時間を共にして、ぜん君。のことを少しでも教えていこうと思って。ただ、いきなり知らない人の家に「1週間泊まってください」って、すごくハードルが高いとも思っていて。もしかしたら来ないかもしれない、と思っていたら、ふふは普通に現れて、私より先に私のベッドにスッと入って寝ようとしてたんですよ(笑)。「なんかすごい人だけど、今の私たちにはそれぐらいのスピード感が必要だ!」と思って。しかも1週間泊まりに来るのに、荷物がめちゃくちゃ少なかったのも面白かった。

ふふ 「なんでも貸すよ」と言ってくれたから、その言葉に甘えて全部借りちゃいました(笑)。

如月 気を遣わないのも才能みたいなものなんですよね。ふふが気を遣わないから、周りがふふに対しても気を遣わない。それってすごいことで、すぐに距離が詰められるし、建前じゃなくて本音でちゃんと語り合えるようになるのも早いんですよね。もしかしたらほかのグループだったら、ふふはこの個性を発揮できなかったかもしれない。だからぜん君。に入ってくれて本当によかったですね。

ふふ オーディションを受けたときは、まさか自分がステージに立つ人間になれるとは思っていなかったんです。ステージに立つ人は自信満々で、完璧じゃないといけないと思っていたから、自分はそういう存在とはほど遠いなって。でも愛海が「ぜん君。はそうじゃないよ」「自分たちも弱虫だし、あなたも弱虫で大丈夫だよ」と教えてくれたんです。そんなふうに言ってもらえたことなかったからぜん君。に入りたいと思って、つい愛海には甘えすぎちゃいました。

ツアー中の楽しみ

──活動再開初日に47都道府県ツアーが始まり、今は慌ただしく全国を回っているところだと思います。新メンバーの皆さんは、ぜんぶ君のせいだ。としての活動、いかがですか?

もとちか襲

 Zeppでのライブが終わったときはまだ実感がわいてなかったんですよ。ライブ中のことも、いい意味で記憶がないというか。楽しかった思い出しかなくて、あっと言う間に本番は終わってしまったから、今は1つずつもっとちゃんとライブを楽しもうと思ってツアーを回っています。私、移動中の車の窓から外を見てるだけで楽しいんですよ。

 襲はなんでも楽しんでるよね。

 うん。忙しくても楽しい。楽しいからなのか、ぜん君。への加入が決まってから今までの体感時間がすごく短いんだよね。

 甘福氐はこれまで遠征とかしたことなかったし、なんなら家からもあまり出ない生活を送っていたから、遠くに行くこと自体が新鮮なんです。移動中、地図アプリを開いて現在地を確認するのが密かな楽しみになってます。「うわ、今こんなところにいるんだ」みたいな感動があるんですよ。

 地味な楽しみ方だな(笑)。

 楽しみもう1つ! 地方のサービスエリアでガチャガチャを回すこと……。

ふふ トイレ休憩のたびに楽しみにしてるよね。

 この間は財布を忘れてガチャガチャを回せなかったから、ちゃんと持ち歩くようにします。

如月 ふふは車の中で、すごく個性的な寝方をするんよ。座席の上でくの字に寝転んで、猫みたいに丸くなって寝てる。

雫ふふ

ふふ いやだって、どうしても疲れちゃって……ちゃんと寝なきゃいけないし……。

十五時 ビックリしたよね。あんなふうに車で寝る人、見たことなかった。

如月 座席の上に寝転がるから、それなりにスペースも取るんですよ。そこがなんかふふらしいなと思って(笑)。

 あと、ふふちゃんって笑い方が「デュフフ」なんですよ。

ふふ そんなに変かなあ?

如月 笑い方にクセがある女の子にひさしぶりに会ったかもしれない(笑)。車での寝方もそうですけど、クセはあるけど憎めないというか、ちゃんと「かわいい」って思わせるキャラクターなんですよね。そこがふふの魅力だと思う。

新しいぜん君。のスタート地点

──十五時さんが加入して最初にリリースしたシングル「AntiIyours」のインタビューで「ぼのさんと十五時さんが入ったからポップな曲が歌えるようになった」という発言があったんです(参照:ぜんぶ君のせいだ。「AntiIyours」インタビュー)。今回、新たなメンバーを3人迎えたことにより、ぜん君。の音楽はどう変わったんでしょうか?

如月 ぼのと十五時が入ったときの変化とはちょっと違って、今回のシングルはちゃんと前回のシングル「ぜんぶ僕のせいだ。」と地続きのものが歌えた手応えがあります。新メンバー3人は人に寄り添える人だと思っていて。苦しいとか、切ないとか、悲しいとか、そういう感情に対して3人共すごく敏感で、敏感だからこそ、声を合わせるのがすごく上手なんです。

征之丞十五時

十五時 今回のシングル「インソムニア」は大人っぽくて、すごく表現力が求められる曲だと思うんです。ただ声を張り上げればいいような曲ではないから、ちゃんと聴いてくれる人に寄り添う歌声を出さなきゃいけない。

如月 新人3人は早くもそのハードルをクリアしてくれたと思っています。最初の曲、みんなにとってはどんな曲になった?

ふふ 「インソムニア」は私たち3人にとって最初の曲だし、すごく悩み苦しんでいるけど前に進もうという意思が込められた曲なんです。ふふにとってはスタート地点の曲。

如月 うれしい(笑)。実際にそうだからね。ぜん君。が新しく進むための曲だから。

 いろんな曲を練習してきたけど「インソムニア」は自分の声が入った初めての曲なので特別ですね。誰かの歌じゃなくて、私が歌う曲だから、歌詞の意味をすごく考えたし、きっとこれから先ずっと大事に歌っていく曲なんだろうなと思っています。

 これまでのぜん君。を見てきたからこそ、歌詞に込められたぜん君。の足跡をすごく感じたんです。長い年月をかけて紡がれてきたぜん君。の物語を、今度は自分が紡いでいかなきゃいけないというプレッシャーをすごく感じました。この曲の中で「痛み苦しみ悲しみ全てに 愛しさを込めてKISSを贈るよ」という歌詞があるんですけど、ここをめーちゃんが歌うと知ったとき、今までのメンバーの思いとか、患いさんへの思いとか、めーちゃんが如月愛海であり続けて、すべてを受けとめてくれているすごさとか、いろんなものを感じたんです。「インソムニア」ではここの歌詞が一番好きですね。

如月 3人共これまでのぜん君。をちゃんと見てきてくれた人たちなので、歌詞に書かれている一節がどういう意味なのか、説明しなくてもちゃんと理解してくれているんですよね。私や十五時の感情も汲み取ってくれているし、そういう思いをちゃんと自分の表現として落とし込んでくれている。寄り添える人たちだからなのか声を合わせるのもうまくて、レコーディングで5人のユニゾンを初めて聴いたとき「めちゃくちゃ合う!」ってビックリしました。

眠れなくても朝は来る

──「インソムニア」の振り付けはハイキックが取り入れられていたり、すごくアグレッシブな印象でした。

十五時 拳を突き出す振り付けもあって「ここから戦っていくぞ」という強い意志を表す振り付けになっていると思います。それと、注目してほしいのは曲の冒頭で、心臓の鼓動を表現する振り付けをしているところです。

如月 すごく大げさなことを言いますけど、聴いた人に「生きる」という選択をしてほしいと思って、この振り付けを付けました。いろんなことがありすぎて、生きていても何も感じない瞬間もあると思うんです。家でずっとテレビを眺めているだけで1日が過ぎてしまった、みたいな。人生の中でそういう虚しい瞬間があったとしても、人間はどこかで誰かと絶対につながっているものだと思うから。

──「インソムニア」は「不眠症」という意味ですが、ぜん君。が歌う「インソムニア」は少し意味が違いますよね。

如月愛海

如月 ぜん君。の曲においての「インソムニア」は、自分たちで眠らない選択をしている状態だと思っています。私たちはずっと夢を追いかけている途中なんですけど、その「夢」というのは目覚めているときに見ている夢なんです。夢への道を進んでいる状態だから、眠って止めてしまいたくない。どちらかと言うと、不眠であることを大事にしているんです。

 襲は「インソムニア」という曲は「約束の曲」だと思っているんです。振り付けは激しいし、歌い方も力強くて、覚悟を込めて歌う部分が多いんだけど、「約束は小指でしようよ。」という一節をすごく優しく歌うんですよ。夢に向かって突き進む覚悟もあるし、患いさんたちを引っ張らなきゃいけない使命感もあるけど、約束をするときは優しくなる。そういうところがすごく好きで……すみません、話していてちょっと涙が。

如月 メンバーみんな泣き虫になっちゃって、誰か1人が泣き始めるとみんな泣いちゃうんですよ(笑)。「約束の曲」というのは本当にその通りで、その約束を今の5人はもちろん、これまでぜん君。に携わってくれた人全員で紡いできた自覚があって。ちょっと私も泣けてきちゃった。

十五時 こんなに泣くグループある?(笑)

如月 泣いてばかりもいられないんですよね。「月は欠けて朝が来る」と歌詞に書かれている通り、どんなに眠れなくても、どんなにつらいことがあっても、必ず朝は来るんです。これは私たちだけじゃなくて、もしかしたらいろんなことがあって苦しんでいるみんなも同じ。苦しくても悩みが尽きなくても必ず朝は来るから、それを希望として持って、生き続けてほしいですね。

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思い出すのは泣き顔