ナタリー PowerPush - YUKI

私の歌を待っていてくれる人のために 2013年第1弾シングル「STARMANN」

「STARMANN」とカップリング曲の2つで1つになる

──カップリング曲「君を束縛したいのです」は、もともと昨年行われた全国ツアー「BEATS OF TEN」で披露された未発表曲でしたが(参照:「死ぬまでドキドキしよう」YUKI笑顔で10周年ツアー完走)、あのときとはテンポもアレンジも違うニューバージョンになりました。

ライブでやっていたときは、1980年代のロックなイメージでアレンジしていて、テンポも速かったので、もう少しクレイジーな感じでしたね。「STARMANN」ができてから、何をカップリング曲にしようかと考えたときに、「君を束縛したいのです」もラブソングだし、この2曲で1つになるというか、1枚のCDに入っても、2つで1つに感じられるような相性のよさを感じられたので、「君を束縛したいのです」を選びました。

──2曲とも強力な恋に落ちちゃった女の子が主人公ですしね。

「STARMANN」の主人公は、いつか彼が自分のもとから離れてしまうかもしれないという儚さや、あなたのことを嫌いになりたくないという不安感を自分の中で抱きしめているんです。でも「君を束縛したいのです」の主人公は、どうしてあなたは、私のこの思いをわかってくれないの?って、好きになった相手を自分の中に取り込みたくてしょうがないし、恋に落ちたときの支離滅裂な感じを表に出している女の子なので、「STARMANN」の主人公と比べると、幼い感じがするかもしれないですね。でも、そこがとてもかわいらしいんですけど。

自分の美意識を持って粋に生きたい

──以前、YUKIさんは子供の頃に聴いていた歌謡曲が、自分の書く歌詞に大きな影響を与えてくれていると言っていましたけど、「STARMANN」や「君を束縛したいのです」の歌詞にも、その影響は出ていますか?

子供の頃の私は、音楽番組で歌っているジュリー(沢田研二)や松田聖子さんの歌の中から大人っぽい匂いを感じ取って、知ってはいけないものがそこにはあるような気がして、ドキドキしていたんです。例えば、松田聖子さんの「秘密の花園」を聴いて、秘密の花園はどんな花園なんだろう、どこにあるんだろうって、あれこれ想像を膨らませていた。1980年代にテレビやラジオから流れていた歌謡曲は、歌い手のプライベートな感情が出てこないし、個人的な日記のような歌詞ではなかったからこそ、聴き手を今いる場所からどこかへ連れ出してくれたんです。そんなふうに、私は、YUKIの歌を聴いた人をどこかへ連れ出したい。私は、歌の中にいる主人公を演じる最高の歌い手になりたいし、歌の世界を追求したい。そんな職人技を身に付けたいと思うのも、私が歌謡曲を聴いて育ったからかもしれないですね。

──では、最後に。YUKIさんの近況を教えてください。

私は、誰かと直接会ったときの衝撃、誰かの話を聞いたときに感じることができた情熱、何かに触れたときの温度……そういうところからインスピレーションが湧いてくることが多いんです。先日もイタリアから帰ってきた友人とひさしぶりに会って話をしたんですけど、彼は人と会うときに、前もってその人の情報を調べるのをやめたと言っていました。前情報を知らないほうが新鮮だし、直接会って話をしたことでわかることのほうがたくさんあるんですよね。若い頃は、知らないと言うことが恥ずかしいことだと思っているから、知ったかぶりをしてしまうんですよね。でも、知らないことは決して恥ずかしいことではないし、知らないことは聞けばいい。彼の話を聞いて、知らないことは知らないと、ちゃんと言えるのが大人なんだと改めて思いました。

──確かにそうですね。

あと、これも先日のことなんですが、用事があって電車に乗ったんですけど、車内を見ると、ほとんどの人がスマートフォンをいじっていたんです。何も欲しい情報がそこになくても、クセのように、無意識のうちに見てしまっていることがあると思うんですよね。確かに、もてあました時間を埋めてくれるし、とても便利なものだけど、誰かが発信した情報を簡単に手にすることが普通になってしまって、苦労して、時間をかけて自分が探したいものを手にしたときの喜びを知らない人たちって、どういう感覚になっていくんだろうと、ふと思ってしまったんです。

──そのとき、YUKIさんは電車の中で何をしていたんですか?

私は本を読んでいました。その本は家で、電車の中でどの本を読もうかな、と前もってじっくり選んだ本だったんです。私は、何をするにしても粋に、やっぱりカッコよく生きたいと思っていて。何かをするときに、みんながやっているから私もやろうとか、こっちのほうが便利だからとか、そういう選び方をすることをやめました。自分が気持ちいいこと、私が楽しいと思うこと、夢中になれることを、ちゃんと自分の中で意識して生きたい。私はそんなにいい子で生きてきたわけではないけれど、残りの人生をどうやって満足のいくように生きていくかを思ったときに、私は自分の美意識を持って、きちんと粋に生きたいなと思いました。

ニューシングル「STARMANN」/ 2013年8月21日発売 / EPICレコード
初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / ESCL-4092~3
通常盤 [CD] 1020円 /ESCL-4094
CD収録曲
  1. STARMANN
  2. 君を束縛したいのです
初回限定盤DVD収録内容
  • STARMANN -Music Video-

YUKI(ゆき)
YUKI

1972年生まれ、北海道出身の女性シンガー。1993年にJUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。2001年の解散までに、数々のヒット曲・名アルバムを発表する。2002年にシングル「the end of shite」で本格的なソロ活動をスタート。先鋭的なサウンドと前衛的なビジュアルで唯一無二の世界観を確立した。2007年10月には、ソロ活動5周年を記念したシングルコレクション「five-star」をリリース。2012年2月には10周年を記念したシングルコレクションアルバム「POWERS OF TEN」を、同年11月にはカップリング曲を集めた「BETWEEN THE TEN」を発表した。また2012年には日本武道館2DAYSを含む全国ツアー「YUKI TOUR“BEATS OF TEN”」を行ったほか、東京ドームでワンマンライブを開催した。2013年8月21日に26枚目のシングル「STARMANN」をリリース。