ユアネス|古閑翔平へのソロインタビューで紐解くバンドの新境地

ユアネスが新作音源「ES」(エス)を11月20日にリリースした。

前作「Shift」から1年ぶりの新作となる「ES」は、“死生観”“人は花のよう”といったコンセプトをもとに制作された6曲入りの音源。音楽ナタリーではバンドの作詞作曲を手がける古閑翔平(G)へのソロインタビューを行い、アートワークやミュージックビデオなどを含めてコンセプチュアルかつ繊細に編み上げられた新作の制作背景をじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 田山雄士 撮影 / 吉場正和

バンドの地力を付ける1年

古閑翔平(G)
古閑翔平(G)

──前作「Shift」の発売からちょうど1年ぶりの新作がリリースされました。まずこの1年を振り返ってみて、どんなことが印象に残っていますか?

自分たちがあまり足を運べていなかった都道府県に行く機会が増えました。それに今年は大先輩のmol-74とツーマンツアーを2回やらせていただいたんですけど、ツーマンで各地を回るのも初めてで。mol-74のお客さんの感じを知ることができたし、ユアネスのお客さんにmol-74を知ってもらうことができたのが新鮮で、すごくいい経験ができたと思います。

──確かにライブが多い1年でしたね。

はい。音源だけではわからない部分をライブで観てほしいという思いもあったし、バンドの活動をリリースありきのものにしたくなくて。リリースがあるからライブをするのではなくて、まずは2018年に発表した「Ctrl+Z」と「Shift」の2作品を1年かけてライブでじっくり届けることに集中して、バンドの地力を付けることを課題にしていたんです。それと、新作の「ES」は自分の中で“死生観”がテーマになりそうだったので、それに合う季節、秋の終わりや冬のリリースを見据えて、そこまではライブをどんどんやろうと思っていました。

──mol-74とツーマンツアーをやりたかった理由というのは?

ユアネスと同じく、mol-74もサウンドがとても儚い感じで。ボーカルの武市(和希)さんの消え入りそうな声や、バンド全体のサウンド感に共通するものがあるんですよね。mol-74と一緒にツアーを組めたらきっと得られるものが多いと思っていましたし、聴く側を楽曲の中に連れて行ってくれる、映画を観てるような気持ちになれるmol-74の魅力をユアネスのファンにも味わってほしかったんです。僕らは自分たちの音楽の世界観を大切にしたいバンドなので、同じようにお客さんを自分たちの世界観に引き込むことができるバンドでなければいけないと思っていました。自分たちの地元福岡にライブで帰れたとき、アマチュア時代からずっと切磋琢磨してきた神はサイコロを振らないも誘って、スリーマンで競演できたのもうれしかったです。

「25歳になったら君に音楽を届ける」

──「ES」のテーマとして“死生観”という言葉が出てきましたが、そのテーマに向かったきっかけなどをもう少し詳しく聞かせてください。

左から古閑翔平(G)、黒川侑司(Vo, G)、小野貴寛(Dr)、田中雄大(B)。

言葉にするのが難しいんですけど、「人間が根本的に思ってることはなんだろう?」みたいなことを考えちゃうタイプなんです。誰しも死に対して少しネガティブな感情が芽生えたり、実は心の奥底に隠してることがあったりするんじゃないかって。でも、どういう状態だろうと生きていかなきゃいけないじゃないですか。そんな中で“人は花のようである”というコンセプトが浮かび、だんだんと死生観へ向かっていったんだと思います。

──古閑さんは死に対して、ほかの人よりも敏感ということでしょうか。

ちょっと重たい話になってしまいますが、高校生のとき、ギターの練習を一緒にしていた友達が若くして亡くなってしまったんです。それは自分の経験として大きくて、身近で早い時期にそういう経験をしたからこそ、命や人の死について考えることは多いと思います。僕は18歳くらいから手書きの日記を残していて、その友達に向けて言葉を書いてたんですよ。

──どういう言葉を書いていたんですか?

「僕が25歳になったら、自分の理想とする音楽を君に届けられるようにしたいと思ってます」と書いてあって。残してきた日記をたまにパラパラと見返す中で、自分が25歳になったらちゃんとこの日記に向き合った作品を形にしなくてはいけない、と思っていたんです。「ES」はこの言葉に導かれて完成した作品かもしれないですね。

──手書きの日記は現在も書き続けているんですか?

はい。例えば誕生日には「来年の自分へ」みたいな手紙を書くようにしてるんです。「今は○○を聴いてる」とか「○○が流行ってる」とか、「今こんなことが起きてますよ」ということを書いておいて、それを改めて次の誕生日に読むとけっこう面白いもので。昔から文字を書くのが好きで、習字も習っていたし、日記はずっと手書きで続けていますね。