音楽ナタリー Power Push - YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)
異色セッションで生まれた「my town」
円都で一人暮らしを始めた流れ者
──制作はどのように進んでいったんですか?
Kj 最初にCharaちゃんの仮歌が入ったデモ音源が送られてきて。この「my town」は東京メトロのキャンペーン「Find my Tokyo.」のCM曲だけど、そのときにはメトロの雰囲気とか一切入ってなかったんだよ。それに俺が自分で歌詞乗っけて送り返して、本チャンになったらメトロの雰囲気のある歌詞が入ってきたから、俺もその場で変えてって感じですね。
Chara この曲は小林さんが作詞作曲してるんだけど、きっと小林さん、地下鉄なんて今乗んないじゃん? 歌詞にさ「夕日を見てた」って書いてあるもんだから「メトロから夕日なんて見えるの?」とか突っ込んで(笑)。
Kj レコーディングのとき言ってたね。「そもそもさ、乗らないでしょ!?」って(笑)。
Chara あはは(笑)。でも銀座線のとある場所で、本当に外に出るところがあるらしくて。それ聞いて「夕日を見てた」っていう歌詞をすごく気に入ったの。
──Kjさんはこの曲に歌詞を付けるときに、どんなことを意識しましたか?
Kj 俺は客演だからYEN TOWN BANDっていうのも意識してるし、Charaちゃんの世界観に寄ったというか。円都(イェンタウン / 映画の中で一攫千金を求めて日本にやってきた外国人による日本の呼び名であり、彼らが住みついた地域)で一人暮らしを始めた流れ者みたいなイメージで書いたかな。街の匂いに吸い寄せられて、数カ月ここに住んでみようかな、みたいな。でも別に俺がこの歌詞を乗っけなくても、「my town」はどうやっても成立すると思うんだよね。何を歌おうが、Charaちゃんが歌ったらもうCharaちゃんの曲だから。ここまで強いフロントウーマンがいたらね。だから自分っぽく、小林武史さんが使わないような言葉で同じことをなるべく言えるようにっていうのも意識したかな。目指す山の頂上は同じなんだけど、小林さんはあっちから来てるから俺は別のルートで登ろう。上で会いましょうって。
Chara ふふふ(笑)。この曲わりとテンポも遅いし、けんちゃんのイメージの中ではちょっと雰囲気違うかもしれないけど。でもなんかこう、お日さまが昇ってくるような感じって彼似合うじゃん。だから円都のある日のお日さま……夕日かもしれないけど、けんちゃんがそんな感じの存在になってくれたかなって。
YEN TOWN BANDは進化してる
──先ほどKjさんが「YEN TOWN BANDが今何を鳴らすんだ」とおっしゃってましたけど、Charaさんとしては再始動についてどのような思いがありますか?
Chara うーん、そんなに昔と今っていうのは意識はしてないかな。でもね、私と小林さんの融合ってけっこう面白いと思うのよ。同じ鍵盤弾きだけど、全然違うし。小林さんも私が作る曲やサウンドプロデュースについて面白いって思ってくれてる部分があって、私も小林さんに対して「いいな」っていう部分があるから。あと私、人の歌詞って歌う機会が少ないからそこも面白いなって思う。なかなか普段自分で書いてると他人が書いた曲を歌う機会ってなくて。
Kj 俺もないね。
Chara でしょ? でも小林さんの歌詞は「よかったら歌ってみたいな」と思うんだよね。自分のやったことのないことをやるって、なかなか年取ると減ってきちゃうし、人の歌詞を自分がどんなフィルターを通して歌っていくかっていうのはすごくやりがいがあって。
──再始動してみて、何か変化はありましたか?
Chara それはあるわね。YEN TOWN BANDの歌も20年間ずっと歌ってなかったわけじゃないから進化してるし、私も小林さんも進化してきてると思うし。当時聴いてた人たちも進化してて「あのときの自分を思い出すー」みたいな感じで聴いてくれたりするでしょ? 音楽ってそういう不思議な力があって、だから面白いなって。
──再始動後のライブには新たなメンバーも加わりましたね。
Chara そうなの。若手のミュージャンを混ぜたいなあと思って。ドラムはTHE NOVEMBERSの吉木(諒祐)くんなんだけど、小学生のときに通ってたドラムスクールで最初に叩いたのが「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」だったんだって。タッタッタタタ!っていうフィルが難しかったらしいよ。
Kj へー、そうなんだ! Metallicaとか叩きそうなのにね。チョイスが変わってるなあ。
Chara そうそう。面白いよね。再始動後のYEN TOWN BANDがこれからどういう活動をしていくかまだ曖昧な部分もあるけど、そういうミクスチャーな感じが出せるかもしれないですね。
- ニューシングル「my town」 / 2016年6月22日発売 / UNIVERSAL SIGMA
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / UMCK-9840
- 通常盤 [CD] 1080円 / UMCK-5601
- アナログ盤 [アナログ] 2016年7月20日発売 1620円 / UMJK-9061
CD収録曲
- my town
- my town(MURO'S LOVERS MIX)
- my town(The Orb Remix)
- my town(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- 「アイノネ」ミュージックビデオ
アナログ盤収録曲
SIDE A
- my town(MURO'S LOVERS MIX)
- my town
SIDE B
- my town(The Orb Remix)
- my town(Instrumental)
YEN TOWN BAND(イェンタウンバンド)
1996年に公開された岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」に登場した劇中のバンド。本作の主人公・グリコを演じたCharaがボーカルを、小林武史がプロデュースを担当し、同年にリリースされたシングル「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」とアルバム「MONTAGE」はオリコン週間ランキングでそれぞれ1位を獲得した。2015年9月に新潟・越後妻有で行われた芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」内でおよそ12年ぶりにライブを開催。YEN TOWN BANDがライブを行うのは、2003年10月のイベント出演以来となった。また10月には約19年ぶりの新曲「アイノネ」を、FM NORTH WAVE、J-WAVE、ZIP-FM、FM802、cross fmの5つのラジオ局によるキャンペーン「JFL presents FOR THE NEXT supported by ELECOM」のテーマソングとして発表。同キャンペーンのライブツアー「JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM」に参加し、全国5カ所を回る。12月にはシングル「アイノネ」を発売。2016年6月にはKjとのコラボ曲「my town」を表題曲としたシングルをYEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)名義でリリースする。
- YEN TOWN BAND
- YEN TOWN BAND - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
- YEN TOWN BAND (@YEN_TOWN_BAND) | Twitter
- YEN TOWN BAND | Facebook
- Charaの記事まとめ
Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)
Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKÜZÖNE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」がヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングの1つに選出された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKÜZÖNEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月にはキャリア初となる東京・日本武道館ワンマンライブを成功させた。2015年3月にはKjが降谷建志名義でソロ活動をスタートし、6月に初のソロアルバム「Everything Becomes The Music」をリリースした。2016年4月から5月にかけてはDragon Ashとして約2年ぶりの全国ツアーを実施した。
2016年7月19日更新