音楽ナタリー Power Push - YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)

異色セッションで生まれた「my town」

Charaちゃんは“Charaちゃん”っていう生き物

──Kjさんは映画「スワロウテイル」はご覧になったことはありますか?

Kj はい。世代なのでもちろん観てます。俺1997年デビューなんですけど、そのちょっと前の16歳ぐらいのときだと思いますね。

Chara えー、すごい。今のうちの息子と同じぐらいだ。

Kj(Dragon Ash)

Kj 地元の「ビデオポテト」っていうレンタルビデオ屋で中学生のときにバイトするぐらい映画好きだったんで、いろいろ漁ってましたね。俺、ガス・ヴァン・サント監督の映画が一番好きなんですけど、「スワロウテイル」はガスに似た雰囲気を感じる数少ない日本の映画だと思うんですよね。「スワロウテイル」はあんまりマスに露出しない人たちが映画に出るっていう作品の走りだし、物作りしてる感覚が伝わってくるというか。

──映画が公開された1996年当時、YEN TOWN BANDがリリースしたシングル「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」とアルバム「MONTAGE」は共にオリコン週間ランキングで1位を獲得しています。そういった映画の外での活躍については、どんなことを思っていましたか?

Kj うーん、そこには当時何も感じてなかったかな。バンドやってロック聴いてる16歳の自分には、小林武史さんの才能とか、よさっていうのがよくわからなかったんですよね。「なんだよ、ロックじゃねえじゃん」みたいな感覚でしかないというか。でも年齢を重ねて、自分もバンドマンとして生きていくうちに「お、すげえことやってんだな」ってわかってきたんです。ロジカルな部分もそうだし、イノセントな部分もそうだし「この魔法がかかってるから、こういう作品ができるんだな」って。

──そんなプロデューサーと一緒に物作りをしているCharaさんについてはどんなイメージを抱いていましたか?

Kj Charaちゃんはアーティストっていうか、シンガーだと思ってて。誰かが作ったプールで泳ぐことにハンパじゃなく長けてる人だからさ。Charaちゃんって、「どうしよう」とか考えてプランニングするタイプのアーティストじゃなくて、そもそも“Charaちゃん”っていう生き物なんだよね。だから周りのプール作る人たちが、こういう生き物がいかに生きるようにって考えて映画を作ったりしてるんだろうなって。

Chara ふふふ!(笑)

Kj 当時のYEN TOWN BANDに関しても、すごいエキセントリックなディーヴァを周りが楽しんで作り上げていくっていう感じだったんだと思う。特に1990年代とかはすごくそういう理解があったというか、リスナー側が知らないものを観て、いいと思ったものにペイしてくっていう感覚が今よりいっぱいあったし。いろんなアートとか、いろんな観たことないものが世に出てくる可能性がもっとあったんだよね。

けんちゃんは小林武史っていうプールの中で大きく演技できる

──今回のYEN TOWN BANDとKjさんのコラボはどのような流れで決まったんですか?

Chara 小林さんに「コラボするなら誰がいい?」って聞かれて、すぐにKjを推したの。

──Charaさんからの推薦だったんですね。

Chara

Chara そう。「私は絶対にKj!」って。だってもうKjしかいないでしょ、やっぱり。

Kj ははは(笑)。

Chara 例えば「小林武史っていうプールの中を自由に演技してください」って言ったときに、大きく演技できるじゃん、この人は。小林さんの前でビビって、なんでも言うことを聞いちゃう人だときっとダメだなって思って。

Kj 俺は客演とかはいっぱいしてるけど、プロデューサーと仕事をしたことはほとんどないんだよね。逆に人のことをプロデュースすることはたくさんあるけど、人にプロデュースされるっていうのがあんまりピンと来なくて。でも小林さんはすごく理解があって、こっちを尊重してくれる人でやりやすかったですね。Charaちゃんも事前に「すごく話せる大人だから、けんちゃんの好きな感じできたらいいよ」って言ってくれて、実際にやってみて本当にそうだなと思いました。

──曲はコラボが決まる前からあったんですか?

Kj 最初は何もなかったよね。デモもなかったし、何をするのかっていうのもなかった。「一緒にやろう」って言われて、「俺は何をすればいいんすか?」みたいな。どんなコラボになるか全然イメージが湧かなくて。YEN TOWN BANDが今何を鳴らすんだっていうのもわからなかったから。すごい楽しみでしかなかったけど、未知な感じでしたね。

ニューシングル「my town」 / 2016年6月22日発売 / UNIVERSAL SIGMA
初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / UMCK-9840
通常盤 [CD] 1080円 / UMCK-5601
アナログ盤 [アナログ] 2016年7月20日発売 1620円 / UMJK-9061
CD収録曲
  1. my town
  2. my town(MURO'S LOVERS MIX)
  3. my town(The Orb Remix)
  4. my town(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「アイノネ」ミュージックビデオ
アナログ盤収録曲

SIDE A

  1. my town(MURO'S LOVERS MIX)
  2. my town

SIDE B

  1. my town(The Orb Remix)
  2. my town(Instrumental)
YEN TOWN BAND(イェンタウンバンド)
YEN TOWN BAND

1996年に公開された岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」に登場した劇中のバンド。本作の主人公・グリコを演じたCharaがボーカルを、小林武史がプロデュースを担当し、同年にリリースされたシングル「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」とアルバム「MONTAGE」はオリコン週間ランキングでそれぞれ1位を獲得した。2015年9月に新潟・越後妻有で行われた芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」内でおよそ12年ぶりにライブを開催。YEN TOWN BANDがライブを行うのは、2003年10月のイベント出演以来となった。また10月には約19年ぶりの新曲「アイノネ」を、FM NORTH WAVE、J-WAVE、ZIP-FM、FM802、cross fmの5つのラジオ局によるキャンペーン「JFL presents FOR THE NEXT supported by ELECOM」のテーマソングとして発表。同キャンペーンのライブツアー「JFL presents LIVE FOR THE NEXT supported by ELECOM」に参加し、全国5カ所を回る。12月にはシングル「アイノネ」を発売。2016年6月にはKjとのコラボ曲「my town」を表題曲としたシングルをYEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)名義でリリースする。

Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)
Dragon Ash

Kj(Vo, G)、桜井誠(Dr)、IKÜZÖNE(B)の3人で結成されたミクスチャーロックバンド。1997年2月にメジャーデビューを果たす。1999年に発表したシングル「Let yourself go, Let myself go」がヒットを記録し、一躍有名に。2002年にはシングル「Fantasista」がサッカーワールドカップのFIFA公式テーマソングの1つに選出された。その後もオルタナティブロックやヒップホップ、ラテンなどさまざまなジャンルを取り入れたミクスチャーサウンドで独自の活動を続けるが、2012年4月にIKÜZÖNEが急逝。以降はKj、桜井、BOTS(DJ)、HIROKI(G)、DRI-V(Dancer)、ATSUSHI(Dancer)の6人にサポートベーシストを加えた編成で活動している。2014年1月に3年ぶりのオリジナルアルバム「THE FACES」をリリース。同年5月にはキャリア初となる東京・日本武道館ワンマンライブを成功させた。2015年3月にはKjが降谷建志名義でソロ活動をスタートし、6月に初のソロアルバム「Everything Becomes The Music」をリリースした。2016年4月から5月にかけてはDragon Ashとして約2年ぶりの全国ツアーを実施した。


2016年7月19日更新