ナタリー PowerPush - 安田レイ×玉井健二

「Happy Birthday」から始まった7年の軌跡

「Best of my Love」は聴いた瞬間にビビビッと来た

──ソロデビューシングル「Best of my Love」は、玉井さん率いるagehaspringsによるプロデュースです。制作にあたってはどのようなコンセプトを掲げたんでしょうか?

玉井 そこに関しては元気ロケッツと同じ。意識したのは広い意味でグローバルスタンダードのド真ん中であることですね。“ちょうどいい”っていう程よいPOPです。細かく言うと、日本語がわからない人でもグッドミュージックだと言える、例えば万国共通で踊れる4つ打ちのビートであったり、ループでグルーヴが続いていくトラックが基調になっていることから始めましょうって。まあでも、そういうスタイルはいたってシンプルなものではあるので、あとはその中に安田レイという人のスタイルや感情をどう入れていくのかっていうことに重点を置いて創っていった感じですね。

安田レイ

安田 「Best of my Love」は聴いた瞬間にビビビッと来ましたね。「これはいい!」って直感で感じました。私は何にしてもあんまりじっくり考えるのではなく、受け取ったインスピレーションでいい、悪いを決めるところがあるんですよ。その直感は、けっこう信じてますね。

玉井 ほんとに彼女は直感派ですね。だから逆に言うと、直感的に「ない」と思ったらそれはダメってことなので、どこかで怖さを感じながらやってるところもありますよ。「直感に響いてない。ヤバいぞ!」みたいな(笑)。

──曲の中に安田さんの感情を込めるにあたって、事前にディスカッションをしたりということもありました?

玉井 「今どういう気分?」とか「今まで生きてきて一番悲しかったことは?」とか、そういう話をいっぱいしましたね。で、それを歌詞なり音なりに落とし込んでいく作業でした。安田レイのプロジェクトに関しては、僕は本人が発してるものを受け取って形にするキャッチャーですからね(笑)。

──じゃあ安田さんはピッチャーだ。面白い球を投げてくれそうですよね。

安田 ピッチャー? 投げる人? 野球、あまり知らなくて(笑)。

玉井 そうそう。投げる人。こんな感じですからね、上からボールを投げるってことをまず知りませんから。いきなり背面から投げてくる、みたいな。ある種、天真爛漫ですからほんとに面白いんですよ。

ブースに入って直感で出てきたものを曲に乗せた

──見た目にしても歌声にしても、すごく幅広い表情がありますよね。凛とした強さを見せたかと思えば、ものすごくキュートでガーリーな雰囲気がグッと出てきたりっていう。

安田 実はすごいガーリーなんです(笑)。お休みのときは普通に女の子がやってることばっかりですよ。買い物行ったり、友達とランチしたり、映画観に行ったり。あとは寝てたり(笑)。

玉井 ほんとによく寝るよね(笑)。よく寝るし、ほわんとしてる部分もあるから、ほんとに普通の女の子っぽいところはすごくありますよね。本人も「普通の女の子が音楽やってます」的なことを言ったりするし。でも、それはなんとなくやってますってことでは一切なくて。小さい頃から歌手になることを決めていたこともそうだし、長い年月厳しい鍛錬を積んできたこともそうだし、そこに掛け値のない“強い意志”があるんですよ。すべてをちゃんと自分で選んで生きているんですよね。普通の女の子でいるということも自ら選んで大事にしてるんだと思うし。そういう部分も今回の曲の歌詞なんかには反映させたところはありましたね。

安田 シングルに入ってる3曲全部が私の話したそのまんまの内容になっていたので、涙が出そうになっちゃいました。曲を通して、その気持ちをたくさんの人に伝えていきたいなってすごく思いましたね。

──歌に関しても思いが強く乗りそうですよね。

安田 はい。ものすごく気持ちが入りました。自分の経験してきたいろんなことを思い出しながら歌いましたね。あらかじめ歌い方を考えるのではなく、ブースに入ったときの直感で出てきたものを曲に乗せた感じです。

玉井 歌に関しては、「どこで覚えたの?」みたいなフロウやグルーヴがいろんなところにグイグイ入ってくるんですよ。それが面白かったのでそのまんま使いました。元気ロケッツのLumiとはまた違った感性のチャンネルがあるんだなっていうことを改めて感じましたね。長い付き合いだけど、まだまだ発見があるなって。

まずは若い世代の人たちに知ってもらいたい

──では最後に、お2人から一言ずついただければと思います。

安田 はい。まずはデビューシングルで日本の若い世代の人たちに私のことを知ってもらい、「安田レイ、いいよね!」って言ってもらえるような存在になりたいと思います。そしてそこからは日本だけではなく、アジアとかヨーロッパとか、世界中の人たちに聴いてもらえるような魅力のある歌を歌っていきたいです。

玉井 ほんとにこの7年間で、人の前に立つだけで、一声発するだけでいろんな人に得を与えられるような人になってくれたので、あとはもう自信を持って自らの感性を発揮してがんばってほしいですね。もう大人なんですから、少しは寝る時間を削って。

安田 はい。玉井さんは私にとっての、音楽のお父さんみたいな感じですね(笑)。

玉井 そうだよね。僕も、お父さんってこういう気分なんだろうなって今すごく感じてる(笑)。

左から安田レイ、玉井健二。
ニューシングル「Best of my Love」/ 2013年7月3日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD]1300円 / SECL-1355
通常盤 [CD] 1223円 / SECL-1354
収録曲
  1. Best of my Love
  2. styles
  3. フォゲミナ

安田レイ(やすだれい)

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月3日に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たす。同曲はMBS・TBS系テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」のエンディングテーマに起用された。

玉井健二(たまいけんじ)

YUKI、中島美嘉、flumpool、CNBLUEら多数のヒット作を手がける音楽プロデューサー。自身のユニット・元気ロケッツでは音楽と映像のハイブリッドな融合を実現し、世界で高い評価を獲得する。代表を務めるクリエイターズラボ「agehasprings」関連のCD+DVDの総売上枚数は2005年発売以降分のみで3500万枚を突破しており、近年ではFM局のブランディングプロデュースやアプリ開発に携わるなど、その活動は多岐にわたる。