安田レイ「Ray of Light」インタビュー|「君と世界が終わる日に」との再タッグで届ける希望の歌

昨年ソロデビュー10周年を迎えた安田レイが、2024年第1弾作品となるEP「Ray of Light」をリリースした。

表題曲「Ray of Light」は映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の挿入歌として書き下ろされた楽曲。安田にとって過去最大のヒットとなった「Not the End」に続く「君と世界が終わる日に」シリーズとのタイアップソングであり、「どんな暗闇の中でも一筋の光を見つけることができる」という力強いメッセージが胸を打つ。2曲目に収録されている「声のカケラ」は中国の人気アニメ「烈火澆愁」日本語版エンディングテーマで、作品世界に寄り添いながらも「記憶」についての安田のパーソナルな思いがつづられているのが特徴だ。そして、3曲目に据えられた安田作詞作曲の「Turn the Page」は、ソロ活動11年目に突入した彼女の決意表明とも取れるゴスペル調のソウルミュージック。それぞれに独自の魅力を放つこのバラエティに富んだ新曲について、安田本人に詳しく解説してもらった。

取材・文 / 黒田隆憲撮影 / 須田卓馬

「きみセカ」への感謝の気持ちを込めて

──表題曲「Ray of Light」は、「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の挿入歌として書き下ろされた楽曲です。まずは、「君と世界が終わる日に」(以下「きみセカ」)という作品に対する安田さんの思いを聞かせてもらえますか?

「きみセカ」との関わりは、テレビシリーズに挿入歌「Not the End」を書き下ろしたことから始まったのですが、私はもうシンプルにこの作品が大好きなんです。地上波でスタートした「きみセカ」は、Huluでのオリジナルドラマの配信を経て今回、劇場版としてファイナルを迎えるわけですが、いちファンとして「もっと続いてほしい」という気持ちは当然ありつつ、今回の楽曲「Ray of Light」ではキャストやスタッフの皆さん、そして「きみセカ」ファン全員に対して、感謝の気持ちを込めたいと思いました。

安田レイ

──「Not the End」には、「変わり果てた世界も終わりではない、あの日交わした約束は今もまだここにある」という祈りのような思いが込められていると感じました。今回の「Ray of Light」では、どんなメッセージを届けたいと思いましたか?

劇場版を観ていてドラマシリーズと大きく違うと思ったのは、竹内涼真さん演じる主人公・響たちがたくましく成長している姿が描かれていることでした。ゴーレムと呼ばれるゾンビがはびこる終末世界を舞台にしたストーリーは、私たちが直面していたコロナ禍とも当然重なって。何が起きるかわからない不安の中、得体の知れない存在とどう向き合っていくのか、共存する道はあるのか?ということを強く考えさせられました。「Not the End」には「とにかく生きなければ」と必死でもがく響たちに、私なりの思いを込めたつもりです。今回の劇場版は、さまざまな経験をくぐり抜けて強くなった彼らの姿が描かれている。主人公たちにとって何が大切なのかが明確となり、何があってもその大切なものを守り抜こうという強い意志、それを楽曲の中でも表現したいと考えました。

──冒頭のフレーズである「The darkness shows me light(闇は私に光を見せる)」は、「正しいことだけ選んではいられない世界でも、光を信じることはできる」「闇があるからこそ、光を見出せる」という、この曲が持つメッセージを象徴していると思いました。

ありがとうございます。なんの不自由もない世界では決して見ることのできない、暗闇の中にいるからこそ気付ける光ってあると思うんです。自分自身にとって、その人やモノ、場所がどれだけ大切だったのか、失ったり失いそうになったりして初めて気付くような。それでもなおひと筋の光を見つけようともがいて、「もうはい上がれないのでは?」と思うくらいどん底の闇にいても、その光さえ信じられたら人は生きていける。そういうメッセージを込めたこのフレーズは、おっしゃるようにこの曲のテーマを象徴していますね。

──「手応えのない 朝が来ては 小さな未来 蝕まれた」「汚れてしまった この手のひら 夜がくれば 包んでくれる」というふうに、光にあふれた朝や、闇に包まれる夜が持つ本来のイメージを逆転させたような表現も印象的でした。

私たちが生きている世界は、コロナによって当たり前のことも当たり前ではなくなってしまいました。だからこそ、意外性のある真逆の言葉を組み合わせたいと思ったんです。しかも、「未来」というワードはこの曲のキーになっている。作品の中で、響の娘の名前が「未来」なんですよ。「小さな未来が蝕まれた」というフレーズは、映画を観ていただくとダブルミーニングになっているのがわかるはずなので、ぜひとも劇場で確認していただきたいです。

──「正しい事だけ選んではいられなくて」というフレーズも、コロナ禍や戦争、災害に見舞われている私たちの世界を表しているようにも感じますね。

これまで「きみセカ」では、大事な人を守るために誰かを殺めてしまうような、心に深く突き刺さる衝撃的なシーンがシリーズを通して何度か描かれてきました。そのたびに「自分だったらどうするだろう?」と考えましたし、この世に生きるすべての人が平等に幸せであることが、これほどまでに難しいことなのかと改めて思い知らされました。「正しい事だけ選んではいられなくて」というフレーズには、そんな思いを込めていますね。

安田レイ

「Not the End」を超えるくらい届いてほしい

──レコーディングでは、どんなことを心がけて歌いましたか?

やはり「Not the End」からの流れは意識しました。切なさや儚さもこの曲に必要なエッセスンスではあるけど、サビのブレない気持ち、「あなたを守るためなら命だって差し出す覚悟でいるよ」という強さを、歌詞だけでなく歌で表現したかった。「Not the End」は、今もミュージックビデオや「THE FIRST TAKE」の動画にコメントが付くほどたくさんの人に愛してもらっている楽曲なので、「Ray of Light」も同じくらい、否、「Not the End」を超えるくらい多くの人に届いたらうれしいですね。

──今回「Ray of Light」にインスパイアされたジェルネイルが、安田さんのプロデュースで販売されるそうですね。

そうなんです! 私はコロナ禍のステイホーム中、タイダイ染めのオリジナルTシャツを作ることに凝っていた時期があったのですが、たまたまこのジェルネイルの打ち合わせのときにそのTシャツを着て行ったら、esshinoディレクターを務めるネイリストの高野尚子さんが、「それかわいいね!」とおっしゃってくださって。デザインを考えていく中、「タイダイ、いいかもしれない!」という話になり、着ていたTシャツをそのままスキャンしてネイルデザインにしてみました。こういうデザイン、あまりないんじゃないかな。

──色味もとてもかわいいですし、透け感もありますね。

安田レイ

うれしいです。色味を薄くしたり濃くしたり、試行錯誤をしながら並べたときのバランスにもこだわったので。すべての色が乗っていると重たい印象になってしまいがちですが、透明の部分があるといい具合の抜け感になって、指がきれいに見えるかなと。ジェンダーレスなデザインにもなったし、気軽に付けられるし、ジェルネイルなのでぬるま湯に浸ければ簡単に取れますので、普段ネイルをしない方にもぜひチャレンジしてもらいたいです。