ナタリー PowerPush - 安田レイ×玉井健二

「Happy Birthday」から始まった7年の軌跡

安田レイとして世界に行きたい

──ソロデビューのタイミングが今だったのはどうしてですか?

玉井健二

玉井 それはもう単純に、コップから水があふれるように、本人が積み重ねてきたものが十分すぎるものになったっていうことですよね。日々それを体現してる人達と接してる自分の目線で観ても、ずっとアーティストでい続けることができる、世界中から求められる人になれるっていう確信が持てたから、じゃあそろそろやりましょうかっていう。

──そういえば元気ロケッツのLumiには、20歳になったときに地球へ降りてくるという設定がありましたよね。安田さんが20歳でソロデビューすることに重ね合わせて、すごく運命的なものを感じたりもしたんですけど。

玉井 うん。話としては元気ロケッツのそういう設定に合わせたっていうほうが面白いかもしれないんだけど、実際のところは「結果」なんですよ。本人がその場所にもう立ってたという。ただ、狙わずともそういう元気ロケッツが世界に発信した設定と近いことが現実になったのはすごいことだなって思う。あらためて、やっぱりこの子は何か持ってる人なんだろうなって思いますよね。

──先ほど、「世界中から求められる人に」という発言がありましたが、安田さんが目指すところはワールドワイドな活動なんでしょうか?

安田 そうですね。小さい頃はただ歌手になりたいという夢だけでしたけど、Lumiとして英語の詞で歌うことを経験したり、世界中のいろんな人に私の声を聴いてもらうことができたので、安田レイとしても世界に行きたいなって思うようになったんです。世界で愛されるアーティストの、日本におけるロールモデル的な存在になりたいなって。

玉井 日本のアーティストが海外で売れないのには明確な理由があるんですよ。まず英語が変ってこと。もう1個は、いわゆる日本語でいう意味じゃない世界基準のブルースと呼ばれる要素がないから。でもレイちゃんはそもそも英語がネイティヴだし、加えて、たぶん育った環境なんでしょうけど英語圏で言うところのブルースも生まれながらに持っている。だって、13歳のときに歌った「Happy Birthday to You」で大人が泣いたわけですから。

──ああ、なるほど。それは確かにブルースですよね。

玉井 なおかつ、ここまでの7年の間に我々が日々切磋琢磨しているレコーディングスタジオに放り込まれた日からそのレベルの中でここまで育ってきた蓄積と、ほかの子がなんとなく好きだとか感じてるくらいの時期にR&Bからテクノから何から何までプロフェッショナルな環境の中ですごいスピードで吸収し続けて、それに応えるべく持てる素質を技術や感性として磨いてきた。この2つの事実が重なることは、この世界でそんなに例のある話じゃないんです。だからこれから安田レイという存在がどんどん知られていけば、日本以外の人も必ず彼女を好きになるはずなんです。日本から現れる、そういうアーティストの第1号になる“能力”を備えている。可能性っていうレベルじゃなく。

安田レイにとっていい波が来ている

──ご自身ではそのあたり、どう感じていますか?

安田 難しい質問ですね(笑)。でも、日本語も英語もできるっていうのがたぶん自分にとっての武器と言えるんじゃないかなとは思います。あとは歌に対する思いは誰にも負けないっていう気持ちも。要求されることに応えるのはつらかったりしましたけど、小さい頃から「絶対歌手になるんだ」って周りの人に言いふらしてきたので(笑)。

玉井 あとね、率直に実感として最近ヒットしている曲であっても音楽の要素が少なくなっている気もしていて。自分が音楽家なので、どうしてもそういうところに目がいっちゃうんですけど(笑)。で、そういう状況があるから、むしろ質の高い本物の音楽を聴きたくなる人がこの先増えていくと思うんです。音楽好きな人が、いい音楽が現れるのをうずうずして待っている状況というか。だからそういう意味でも安田レイにとっては今、いい波が来ているような気もするんですよね。

──それはつまり、安田さんが本物の歌が歌えるシンガーであるということですよね。

玉井 そう。音楽が持つ力、素敵さをきちんと伝えられる人が少なくなってきているから、それをひっくり返すくらいの存在にはなれると思う。すごいこと言っちゃったね(笑)。

安田 ね(笑)。でもうれしいです。そのスタート地点に立てて、改めて気持ちが引き締まってきましたね。

ニューシングル「Best of my Love」/ 2013年7月3日発売 / SME Records
期間生産限定盤 [CD]1300円 / SECL-1355
通常盤 [CD] 1223円 / SECL-1354
収録曲
  1. Best of my Love
  2. styles
  3. フォゲミナ

安田レイ(やすだれい)

1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月3日に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たす。同曲はMBS・TBS系テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」のエンディングテーマに起用された。

玉井健二(たまいけんじ)

YUKI、中島美嘉、flumpool、CNBLUEら多数のヒット作を手がける音楽プロデューサー。自身のユニット・元気ロケッツでは音楽と映像のハイブリッドな融合を実現し、世界で高い評価を獲得する。代表を務めるクリエイターズラボ「agehasprings」関連のCD+DVDの総売上枚数は2005年発売以降分のみで3500万枚を突破しており、近年ではFM局のブランディングプロデュースやアプリ開発に携わるなど、その活動は多岐にわたる。