安田レイ&Hana Hope|シンパシー、リスペクト、音楽愛あふれる「瑠璃の宝石」テーマソングアーティスト対談

キラキラしたものが大好きな女子高生・谷川瑠璃たにがわるりを主人公としたサイエンスアドベンチャーアニメ「瑠璃の宝石」。今年の7月より放送中のこの作品のオープニンテーマ「光のすみか」を安田レイ、エンディングテーマ「サファイア」をHana Hopeが歌っている。

同じレコード会社に所属するレーベルメイトであるとともに、アメリカにルーツを持ち、ともに東京で育ち、ローティーンから音楽活動を行うなど、多くの共通点を持つ安田とHana。「瑠璃の宝石」テーマソングアーティストという新たな共通項が加わったことを記念して、音楽ナタリーでは2人の対談を企画。和気あいあいとしたガールズトークを通して、「瑠璃の宝石」の魅力やそれぞれの音楽愛に迫った。

取材・文 / もりひでゆき撮影 / 星野耕作

他人とは思えない!安田レイがHana Hopeに感じるシンパシー

安田レイ Hanaちゃんと初めて会ったのは、私がやっているラジオにゲストで来てもらったときなんですけど、そのときからもう私はHanaちゃんのことを他人とは思えなくて。「あ、若い頃の自分がいる!」って感動したんですよね。

Hana Hope うれしいです。レイさんからは温かさがあふれ出ていて、初めてお会いしたのにすごく話しやすかったんです。それがすごくうれしかった。それ以来、私はレイさんの活動をSNSを通じていろいろ拝見させていただいていて。レイさんもハーフだし、長年たくさんのワークスをやられていますよね。

安田 音楽活動をスタートしたタイミングがお互い12、3歳で、ほぼ一緒なんだよね。だから2人とも10代後半の時点でキャリアがけっこう長い。そういう共通点がいっぱいあるんです。

Hana すごい偶然ですよね。そういう意味で私はレイさんをロールモデルにしていきたい気持ちもあるんです。

安田 えー、うれしい! やっぱり他人とは思えない(笑)。出会えたことにミラクルを感じますね。

左から安田レイ、Hana Hope。

左から安田レイ、Hana Hope。

Hana レイさんは活動をスタートさせたときから日本語で歌われてたんですか?

安田 私は最初、英語だったんですよね。徐々に日本語でも歌うようになった感じで。Hanaちゃんは今、日本語と英語で歌っているけど、そこに難しさを感じることってある?

Hana 日本語と英語では言葉の持つニュアンスが全然違うし、声の出し方も変わってくるので、難しさはありますね。私も活動を始めたときは英語でたくさん歌ってたんですよ。

安田 えー、そこも一緒だね。

Hana だから日本語の歌詞を歌うようになったときはけっこう大変でした。

安田 ……やっぱり昔の自分と話してる錯覚に陥る(笑)。私も日本語詞との向き合い方をちゃんと見つけるまでは本当に大変で。英語の発音はなめらかだけど、日本語ってどこかカクカクしているところがあって。でもメロディはなめらかに流れていくから、そこにうまく日本語をはめるにはどうすればいいんだろうって、ものすごく考えた時期があったんです。日本語の発音によって意味合いがうまく伝わらなかったりすることもあるから、本当に難しいよね。

Hana はい。まさにそういう難しさがありますね。いろいろ研究しながら、自分なりのやり方にやっと今、たどり着いた感じで。

鉱石と人間の重なる部分は?

安田 Hanaちゃんの歌声は、本当に唯一無二だよね。声がもう神秘! 今回関わらせていただいた「瑠璃の宝石」におけるさまざまな鉱石のように、Hanaちゃんの声も自然界に存在している神秘だと思う。木々が揺れて、光が射し込む中にHanaちゃんの歌も共存しているというか。

Hana ありがとうございます。私もレイさんの歌声が本当に素敵だと感じています。アニメのオープニングで「光のすみか」を初めて聴いたとき、最初のコーラスからものすごく引き込まれてしまって。はかなさもあれば、力強さもある歌声が描く世界が本当に素晴らしいなって思います。「光のすみか」ではレイさんが作詞をされていますけど、ものすごく魅力的な歌詞ですよね。「風は歌い 雨は語り」っていうpersonification(擬人化)がすごく感動的でした。アニメの主人公である瑠璃ちゃんは自然の世界に没頭しながら歩んでいくことで支えられているじゃないですか。それがすごく素敵に表現されているなと思いました。レイさんはどんなことを思いながら歌詞を書いたんですか?

安田 わー、歌詞を読み込んでくれて、ありがとう! 今回はまず原作のマンガを読んだんですよね。そこで、鉱石が私たちのもとにたどり着くまでには、すごく長いストーリーがあるんだということを知って。もともと私は石が本当に大好きで。今日も天然石のアクセサリーを着けてきたんだけど。

安田レイ

安田レイ

Hana かわいいです!

安田 でね、私がそうやって石に惹かれる意味を、原作を読んで初めて知ったような気がしたの。石っていうのは何百年、何千年と時間をかけて山のてっぺんから川を下って下りてくる。その間には激しい嵐に見舞われる瞬間もきっとあるはずで。要は、さっきパッと誕生して、「わ、キレイ!」っていう存在ではない。そこに神秘的なロマンを感じたというか。

Hana すごくロマンチックですよね。何百年も何千年もかけて作られた石が私たちの手元にたどり着くというのも感動的だし。

安田 うん。で、そんな思いを歌詞に落とし込むうえで私は、人間の姿、「瑠璃の宝石」の主人公の瑠璃ちゃんの姿を重ね合わせて、ちょっとダブルミーニング的な内容にしようと思ったんです。人間もパッと誕生して、すぐに「私、幸せ!」なんてことには絶対ならないでしょ。人生の中で雨が降ったり風が吹いたりして、傷だらけになりながら光り輝いていくものだと思うから。鉱石と人間の重なる部分を感じながら歌詞にしていきました。

Hana 本当に素敵です!

安田 鉱石って、私たちよりもはるかに大先輩じゃない? 地球上のいろいろな変化を石たちは見てきたわけだから。そう考えると、まだ30年ちょっとしか知らない私なんてホント赤ちゃんみたいなもので(笑)。だからこそ私は、いろんなことを経て私のもとまでたどり着いてくれた石をより大事にしたい。そんな気持ちも乗せてレコーディングしました。

Hana 曲の最後に「一つでも欠けていたら きっと出会えてなかったね」っていうフレーズがありますけど、そこで偶然の不思議さが表現されているのも本当に素晴らしくて。石も人間も、たどってきたストーリーには全部に意味があって、それがあるから今があるし、いろんなものに出会うことができるわけですもんね。アニメの中で璃々ちゃんが凪さんをはじめとする仲間たちと出会うことも、まさにそういうことだなって、歌詞を読みながら感じました。

Hana Hope

Hana Hope

大事なことを思い出させてくれる「サファイア」「光のすみか」

安田 Hanaちゃんの「サファイア」もアニメに寄り添いながら、人間の姿が見えてくる曲になっているよね。本当に素敵だなって思いました。

Hana 鉱石、宝石にも種類によっていろいろな輝きがあるように、人間にもまた1人ひとりの輝きがあると思うんです。なので、自分の輝きを誰かと比べることなく、思いきり光を放っていけばいいんだよというメッセージを込めた曲になっています。今の時代って、いろいろとcompare(比較)しちゃいがちだし、それによって自分の光が他者より欠けているのかなって思ってしまう人も多いじゃないですか。でも、そんな必要はなくて、自分の人生の中で作られてきた輝き、美しさはまっすぐ受け止めた方がいいと思うんですよね。鉱石だってそう。雨風に耐えながら何百年、何千年とかけて生まれた鉱石に対して、「これは美しい」「これは美しくない」と簡単にジャッジすることなんて誰にもできないと私は思うので。

安田 素敵。私はけっこう自分と他人を比較しちゃう癖があって。例えばSNSでいろんな人の素晴らしいライフスタイルを見たりすると、「なんで私はこれができないのかな」とかいろいろ考えちゃうんですよね。Hanaちゃんは、そういう瞬間ってない?

Hana もちろん私にもあります。特にこういうアーティスト活動をしていると、ほかの人たちの経験とかとつい比較しちゃうので。

安田 してしまうよね。

Hana でも「サファイア」で歌っているように、私が持って生まれてきた声やクリエイティビティはほかの誰とも違う、自分のものでしかないので、そこはしっかり受け止めるべきだなとすごく思います。

左から安田レイ、Hana Hope。

左から安田レイ、Hana Hope。

安田 うんうん。他人と比べることで悩んでしまっている人にとって、本当に光を与えてくれる1曲だなとすごく思う。「君だけが持てる光を 誰とも比べないでね」というサビのフレーズが、みんなが忘れがちになってしまっていることを思い出させてくれるんじゃないかなって。

Hana リマインダーって大切ですもんね。

安田 そうなんだよね。「誰かと比べてもしょうがないよね」ってわかったつもりでいても、生活している中で忘れてしまう瞬間もあるから。本当に「サファイア」のような曲が存在してくれていると、大きな救いになると思う。

Hana レイさんの「光のすみか」で描かれている、“偶然の大切さ”というメッセージも、私は忘れないでいたいことだなと思いました。

安田 ありがとう。鉱石がそうであるように、人間もまたいろんな偶然の積み重ねで生きているもので。いろんな偶然が重なることで生まれる神秘的な奇跡があったからこそ今、私はここにいる。そこは忘れず、意識的に感謝するべきだなとも思う。「サファイア」も「光のすみか」も、大事なことを思い出させてくれる曲になったね(笑)。

Hana はい、そう思います。